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ジム知る
VOL.013
ジム知る 第13回:いまさら聞けないターボのこと
ジム知る 第13回:いまさら聞けないターボのこと

ジムニーオーナー、もしくはジムニーの購入を考えている人であれば、「ターボ」とはどんなメカなのかをご存じだと思います。ですが、あまりメカが得意ではないという人もいると思いますので、改めて解説していきたいと思います。

文・山崎友貴

限られた排気量のエンジンを効率よく働かせる過給器

ターボの正式な呼び名は「ターボチャージャー」と言います。ターボチャージャーとは「過給器」の一種で、他に「スーパーチャージャー」という過給器もあります。この2つの違いを簡潔に言うと、ターボチャージャーは排気の力を利用するシステムで、スーパーチャージャーはエンジンの駆動力を使うシステムです。歴史はスーパーチャージャーの方が古いのですが、ターボチャージャーの方が機構がシンプルでメンテがしやすく、さらに部品コストも安いため、より広く使われるようになりました。

当初は船舶用と開発され、戦争中には高高度を飛ぶ戦闘機に採用されましたが、エンジンブロックが丈夫なディーゼルエンジンとの相性がいいため、その後トラックなどに採用されるようになり、さらに後年には動力性能が重要なスポーツカーを中心に使われるようになったのです。

昨今の自動車業界では、「ダウンサイジングターボ」というのがトレンドで、小さい排気量のエンジンにターボを取り付けることで排気量の大きいエンジンなみの出力を得て、しかも燃費を抑えるために使われることがスタンダードとなっています。

APIO x IHI ハイフローターボ

ちなみに、過給器はどんな働きをするのでしょうか。エンジンは通常、自然吸気(NA:ナチュラル・アスピレーテッドの略)がスタンダードですが、これはエンジンが稼動する時に発生する負圧に合わせて、エンジン外部から空気を取り入れます。言うなれば、自然の成り行きのままでしか空気をエンジン内に取り入れることができません。

エンジンは燃焼することで回転力を生むメカニズムですので、一定の燃料に対していかに多くの酸素を混ぜて燃やすかというのが、仕事効率の良さに繋がります。そのために、エアフィルターの透過率を変えたり、空気が流れる経路の抵抗を減らすチューニングも存在します。

過給器は、エンジン内への空気の供給を成り行きに任せるのではなく、風車を使って強制的に送り込む役割をします。ターボの場合は、「カタツムリ」と呼ばれるハウジングケースを開けると、中に軸で繋がれた2つの風車が入っています。ひとつはエンジンから出た排気が当たる「タービンホイール」、そしてもう片方はエンジン内に空気を送る「コンプレッサホイール」です。

まずエキゾーストマニホールドから出た排気の一部が、その流れを使ってタービンホイールを回します。すると、もう一方のコンプレッサーホイールも回り、エアクリーナーから来た空気を風車でエンジン内部に送るという仕組みになっています。これで、NA よりも高出力を得るわけです。

余談ですが、NA車でも空気の導入口を車体前部に設けて、その流入経路をできるだけストレートにすることで、より多くの空気をエンジン内に送り込むという「ラムエアシステム」もあります。

ただ空気の流入量を上げればいいというワケではない

JB64型ジムニー・R06A型エンジン

空気がたくさん入ってパワーが上がるなら、どんどん空気を入れればいいだろうと思うかもしれません。ですが、エンジンは精密機械ですので、そう単純なものではありません。エンジンには空燃比というものがあり、そのバランスが悪くなると調子が悪くなります。

JB64型ジムニーのR06A型660cc直列3気筒エンジンは、電子制御の塊ですので、空気と燃料の割合をECU(クルマのコンピュータ)が制御してくれるのですが、燃費や排ガス性能があまりに悪化すると判断すると、燃料カットという制御を働かせます。つまり燃料噴射量のことも考えなければなりません。その制御範囲もECUに書き込まれたマップデータを基にしているため、そのマップが変わらない限りは、基本性能域をそれほど超えることはないのです。

また過給器の空気圧、いわゆる「ブースト圧」は、エンジンブロックの強度などもあって、かけられる圧力に限界があります。ちなみにJB64型のノーマルターボのブースト圧は約0.6khp(キロヘクトパスカル)。R06A型の場合は、1khp以内のブースト圧が安全圏内と言われています。

では、どのようなターボチューニングを行えばいいのか、順を追って説明していきましょう。

大きな風車のターボに変えて、さらにマフラーとECUも変えてみる

アピオ・ハイフローターボの主要パーツ

まずより空気流入量を増やすには、ターボチャージャー自体の見直しが必要です。アピオがリリースしている「JB64ハイフローターボ」は、至って単純なメカニズムです。ターボチャージャー自体の見た目の大きさは、ノーマル品と同じですが、中を開けてみると、2つの風車の大きさがサイズアップしていることが分かります。

扇風機も風車が小さいものと大きなものでは、大きい方が多くの風を送ってくれるのと一緒で、ターボも風車が大きい方が、より多くの空気をエンジン内に送れるというわけです。このJB64ハイフローターボは、ノーマルターボを造っているのと同じIHI製ですので、性能や信頼性は間違いないと言えます。

このターボチャージャーに交換しただけで、まず走りに大きなフィーリングの差を感じることができます。発進直後のトルクが増大するだけでなく、100km/hの付近での加速感が大幅に向上。高速域でのドライブフィールに不満が残るJB64型が、驚くほど快適かつスムーズに走れるようになります。

アピオ TOTSUGEKI ECU

これにアピオの「トツゲキ」シリーズマフラーを組み合わせることで、そのフィーリングはさらにアップさせることが可能です。ただし、制御するECUに書き込まれたマップデータの範囲内ということですので、ハイフローターボとトツゲキマフラーに交換する効果をさらなるものにしたいという場合は、アピオオリジナルのECUに交換することをお勧めいたします。

実際に、ハイフローターボ+トツゲキマフラー+オリジナルECUが装着された車両をドライブしてみると、「ジムニーのR06A型エンジンはここまでのポテンシャルを発揮することができるのか!」と感動します。中回転域での燃料制御による息つく感じがなくなり、100km/hまで気持ち良く加速してくれるようにななります。ちなみにオリジナルECUは、ハイフローターボのブースト圧が1khpまでアップするように設定されています。

もちろん、これらすべてを交換するにはコストがかかりますが、その対費用効果は抜群。JB74型をも上回る動力性能は、長距離ドライブが多いユーザーにはうってつけなのではないでしょうか。また、気になる燃費もそこまで悪くなることなく、かえってスロットルコントローラーのような疑似信号を送るパーツよりも、実走行燃費ははるかに良好でした。

厳しい排ガス規制に対応するという主旨から、先代JB23型のエンジンよりもフィーリングが悪くなったと表される現行型エンジンですが、このようにターボをはじめ、各部を見直してやることで、エンジンの持つ潜在性能を引き出すことができます。

ちなみに、ターボチャージャーのハウジング内には冷却するためのオイル経路があるのですが、オイルが汚れてくると、この経路に詰まりを生じさせることがあります。ターボ車の場合はNA車よりもエンジンオイルの劣化が早いため、愛車のトラブルを防止するためには、早めのオイル交換も肝要です。