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ジムニーで行く林道旅
VOL.045
~静岡県・林道樫ノ木峠線他~ 最終回
~静岡県・林道樫ノ木峠線他~ 最終回

2012年6月から連載が始まったこの林道旅ですが、取りあえず今回が最終回となります。
最終回だからといって特別な旅はしません。
いつもの調子で楽しんだ「知られざるロングダート」を紹介しましょう!

気になる温泉を発見! しかし、近くに林道がない…?

今回の足はアピオとHKS関西がコラボしたスーパーチャージャー仕様のシエラ。5MTだから痛快な走りが楽しめた。勾配のきつい林道ではローレンジの方が走りやすい。

空前の四駆ブームが巻き起こった1980年代は、各出版社から四駆専門誌が発行されていた。バブル経済と重なっていたこともあり、毎月様々な四駆雑誌を購入していた人は少なくない。筆者もその内のひとりで、4×4MAGAZINE、OFFROAD EXPRESS、4WD-EX、4WD FREAK、LET’S GO 4WD、OFF-ROAD SPIRITSなど、各誌を読みあさっていた。

そして四駆雑誌と同じように多くの出版社から発行されていたのが、林道に関する書籍である。筆者も十数冊は購入したが、掲載されている林道はほとんど同じ。それでも現在のようにインターネットなどない時代だから他に情報を仕入り手立てはない。だから新しい林道本を見つけては手に入れていたものだ。

林道本が出なくなってからは昭文社の『ツーリングマップル』を愛用している。ツーリング好きなライダー向けに作られた地図だが、林道も掲載されているから役に立つのだ。メジャーな林道だけでなく、短いピストン林道も載っていたりして、そこそこの情報量がある。

しかし、ここ最近になり、『ツーリングマップル』にも記載されていない林道がまだまだたくさんあることを知った。今回の行き先も『ツーリングマップル』には全く記載されていない林道群である。

「今回は何処へ行こう? 静岡の林道は、ほぼ行き尽くしたしな~」と思いながらも『ツーリングマップル』で 静岡県の地図を確認していた。そして第六感に響いたのが 、新清水I Cの北にある『油山温泉』。小さな温泉で、初めて耳にするのだが、気になったので調べてみたら、評判の高い宿があった。

シートはレカロのラグジュアリーモデルが装着されている。快適性はノーマルの比ではなく、クルマの操作性もUP! 疲労度が大きく低減されるなど良いこと尽くめ。

「この宿イイじゃん!」と思ったが、地図で確認すると一番近い林道が直線距離で15㎞、ダートは3.7㎞しかない。「これじゃダメだな…」。それで非常に気になったのでネットを頼りにあれこれ調べたら、宿の近くに18㎞のダートが続く林道を発見したのだ。

さらに調べると、その北西に10本近くもの舗装されていない林道があることが分かった。これは行くしかないだろう! …っと、勝手に決めるとYカメが「他に行きたい温泉や林道があったのに!」と拗ねそうなので、一応相談することに。

筆者:「静岡で地図に載っていないロングダートを見つけたよ。18㎞あるし、他にも10本のピストンがある」

Yカメ:「ほ〜、よく見つけたね? 18㎞なら距離は問題ないな。風景はどんな感じ? あと温泉は?」

筆者:「風景に関してはまったく分からない。温泉は近くに油山温泉という、小さいけど評判の高い宿がある。取りあえず、それらの情報をメールするから確認してくれ」

Yカメ「分かった。後で連絡する」

約1時間後にYカメから連絡が入った。

Yカメ「なかなか楽しそうな林道じゃん。宿も良い感じだね〜。食事の評判が高いのがイイ! 特別料理の刺身盛り合わせが食いたい!」

筆者:「だろ! 最後の旅だから刺身盛り合わせを頼んじゃおう! それぐらいの贅沢は許されるハズだ !!」

こうして行き先は油山温泉と林道樫ノ木峠線に決まったのであった。

18㎞のダートだが途中で通行止め…?

林道樫ノ木峠線は入り口からしばらくの間針葉樹の中を走る。この景色が18㎞続くかと思っていたが…!

話はそれるが、筆者は林道の場所や入り口に関する詳細を敢えて書いていない。上から目線になるかもしれないが、何らかのトラブルが生じても、全ての責任を自らで負える人にのみ林道を走ってもらいたいからだ。

その心構えがある人であれば、林道の名前さえ分かっていれば自分で調べてたどり着けるハズ。また林道の入り口は分かりづらい所が多いが、それを見つけるのも林道旅の楽しみのひとつだと思っている。ツアー旅行のように「何から何まで人にお任せ!」というスタンスで林道ツーリングに臨んでもらいたくない。

さて、新東名高速道路を走ること約2時間、新清水 ICで下り、県道27号線で北上する。その後県道29号線、県道189号線を走り、『内匠』という地名を目指す。その近辺から左折すると林道の入り口に辿り着く。

今回走る林道は『林道樫ノ木峠線』という東西に走るダートで、その距離は18㎞! これだけのロングダートなのに地図に載っていないのが不思議に思えた。もちろん筆者、Yカメともに初めて知った林道だ。

下調べによると途中に数本の支線があり(ピストンかどうかは不明) 、峠付近から北に延びている支線が完成していたら、10㎞以上のダートが走れるとか!

峠を越えるとロケーションがガラリと変化。近隣の山々が眺められるなど、視界が開けると同時に楽しみが増えた。

さらに、もし完成していたら、3~4㎞クラスのダートが3本、6~7㎞クラスのミドルダートも4本繋いで走れるという。調べて分かった情報はそれだけで、路面状況や景色などは一切分からない。それだけに「撮影しながらだと1日では走りきれないだろうな〜。何本走れるかな?」、「凸凹がきつい所はあるかな?」など、期待は膨らむばかりだ。

Yカメがスマホにダウンロードした山岳地図を頼りに、『林道樫ノ木峠線』の入り口を探す。軽自動車でもすれ違いがキビしい細い道を走りながらも、迷うことなく無事に到着したが、なにやら看板が立っている。もしかして通行止め…。でも入り口は閉鎖されていないし…? そこには『この先8㎞地点で通行止め』と書かれていた。

筆者:「8㎞だと峠付近か?」

Yカメ:「距離的にも多分そうだろうな」

筆者:「まぁ8㎞走れば、ある程度の写真は撮れるだろうし、走りも満足できるな」

Yカメ:「峠からの支線に行けたら助かるんだけどな」

筆者:「まぁ成るように成れとしか言えないし。とにかく行けるとことまで行くしかない!」
  
看板を過ぎると路面がダートになった。急に勾配がきつくなったので4WDにシフトし、路面へのローインパクトを心掛けながら前へと進む。杉や松などの針葉樹に覆われた、一般的な林道の景色が続く。このままだと眺望は期待できないだろうな〜。

休日だから工事も休み!

現在造成中の支線。林業のために造られているので、樹木が伐採された跡が残り、殺伐とした雰囲気が漂っている。

前日までの数日間、雨が降り続いたこともあり路面には多くの水溜まりが残っている。また雨水が流れる溝も深く掘られていて気が抜けない。この状態が16kmも続いたら、かなり疲れそう…。

撮影ポイントを見つけたので、クルマを端に停めて休んでいると、後ろから甲高いエンジン音が聞こえてきた。「この音はバイクだな!」。思っていたとおりオフロードバイクで、軽い会釈を交わす。単独だが怖くないのだろうか?

「バイクは簡単に横転するから、気をつけてくださいね〜」と思っていたら、今度は前から先ほどとは違うオフロードバイクが1台走ってきた。やはり18㎞もロングダートだから、林道好きにはある程度知られているようだ。

それにしても他の人に出くわすなんて珍しいな〜と思ったら、今日は休日だった。いつもは平日だから誰にも遭遇せず「林道を走るバイクや四駆は本当に少なくなったな…」と寂しさを覚えていたが、やはり休日になると走りに来る人はいるんだ。それを知って嬉しくなった。

林業で使われているため、路面はしっかりと整備されている。雨が続いたこともあり、所々に水溜まりはあったが、ほぼ全線に亘りフラットダートが続いていた。

約4㎞走った所で左に延びている支線があったので、何はともあれ走ってみることに。路面は手入れされており凸凹はほとんどないフラットな状態だ。ただし勾配がきつくてハイレンジだと1速しか使えないので(車両はシエラ)、トランスファーをローレンジにシフトし、2速、3速を使い分けて上る。

3kmほど走ったところで下りとなったのだが道幅が狭くなり、勾配も一段ときつくなっている。感覚的に15度以上は確実にありそうだ。そこでロー1速にシフトしてエンブレを利かせながらゆっくりと下る。すると、少し先に軽トラが道路を塞ぐように停車中。さらにその先を見るとユンボが路面を掘り返し、まさに道を開拓している最中であった。Uターンしなきゃ! でもどこで切り返す?

やや広くなっている場所まで急勾配をバックで上り、狭いスペースで苦労しながらUターンして本線へ戻った。3.5㎞のピストンだが、なかなか走り甲斐があった。

遠くの山々を見渡せる林道は意外と少ない。やはり眺望が楽しめる林道はイイもんだ。

樫ノ木峠付近で通行止めだと思っていたのだが、ゲートがなければチェーンやパイロンで塞がれてもいない…?「あっ! 休日だから工事をやっていないんじゃね? それとも実は工事が終わっていたりして?」。どちらが正解か分からないが、崖崩れもなくそのまま完走できたのであった。

林道は樫ノ木峠を境にして、ロケーションが一変。それまでは針葉樹に覆われた薄暗い中を走るのがほとんどだったが、稜線に出たこともあり視界が開けて明るくなったのだ。植生も変わり、シダ植物が生い茂っているかと思えば山一面がススキだったり、豊かな自然を楽しめた。

支線のピストン分を入れて約25㎞のダートを走れて大満足! ただし迂闊だったのは、樫ノ木峠付近から北へ延びている支線の存在を忘れていたこと。通行止めのことばかり気にしていたので、そのまま走れると分かるや前しか見ていなかったのだ。次にまた来る口実にもなるしOKとしよう!

さて、今回宿泊する油山温泉だが、いかにも『山間にあるひなびた温泉宿』といった風情。現在営業している宿は2件のみの小さな温泉地だが、その昔に駿河の守護大名であった今川氏親の亡き後、正室の寿桂尼が遊山保護したと言い伝わる歴史ある古湯なのだ。

ひなびた雰囲気が何ともGOOD!

油山苑の露天風呂。晴れた日の夜は満天の星空を眺められる。適温と相まって、誰もが思わず長湯するだろう。

我々が泊まったのは『油山苑』で、スタッフの心温まるサービスと美味しい料理が評判。料理は品数が多く、特に凝ったメニューではないが、素材の味を活かした調理方法で、その味付けが絶品。また特別料理(要予約)として『猪鍋』と『刺身盛り合わせ』が用意されている。

港から近い土地柄、魚介類の新鮮さや美味しさは言わずもがな。猪鍋は日本全国を回り、『どの肉はどの地域が一番美味しい』を熟知しているプロ中のプロと呼ばれている猟師から仕入れた肉のみを使っている。それを独自に調合した味噌仕立ての鍋だが、さすがにこだわりの料理だけに美味い! ボリュームもたっぷりで、評判の高さも思わず納得である。

プロ中のプロと言われる猟師から仕入れたイノシシの鍋。臭みがなく柔らかで、噛みしめるほどに甘みと香りが口中に広がる。

温泉は内風呂と露天風呂が備わっており、24時間入浴可能。温度は適温で、のんびりと浸かっていられる。そして感動的なのは、晴れた日の夜の露天風呂。都会では決して見ることのできない、とても綺麗な星空を眺められるのだ。

静寂な山間の露天風呂に浸かりながら、満天の星空を眺めていたら心が安らぐこと請け合い。心身共に寛げる温泉宿だ。

約4年半もの間お付き合いくださいまして、誠にありがとうございました。『ビギナーでも楽しめる』をコンセプトに、ジムニーならノーマルでも走れる林道を紹介してきましたが、いかがだったでしょうか? アピオのコンプリートカーであれば、さらに安心&快適なツーリングが楽しめますよ!

ジムニーを選んだのなら、オンロードを走らせるだけじゃもったいない。さぁ、林道へ繰り出しましょう! そこには日常では味わえない素敵な世界が広がっていますよ !!

地図に載っていない林道なので詳細な情報はなかった。それだけに予想外の景色に遭遇すると感動も大きい。ススキの草原が出現した時は思わず「おおっ!」と感嘆の声が口から発せられた。

針葉樹が植生している場所は樹木が高く伸びているため、周囲は薄暗い。安全のため昼間でもライトオンで走行するのが林道走行のルールのひとつ。
造成中の林道だが、少し前に土砂崩れが発生した様子。道を造るのは本当に大変な作業だと実感した。だからこそルールを守って、いつまでも走れることを願う。
いきなり「ちょっと停まって!」と言い、クルマから飛び出したYカメ。なにかと思えばシダの群生。そこだけがまるで南国のようだった。
沢の脇に茂っているコケと水草(?)。のんびり走っていると、このような非日常的な風景に出会えるのだ。
遠くから見たら鏡のようにキラキラと光っていた鉱石(?)。詳細は不明だが、取りあえず記念撮影しておいた。
林道樫ノ木峠線の西側入り口近くには、日帰り入浴施設『湯ノ島温泉浴場』がある。それに隣接する食事処『玄国茶屋』で人気の手打ち蕎麦。素朴な味でGOOD!
油山苑の部屋は昔ながらの純和風。閑寂な山間にあるので、ゆったりと寛げる。
内風呂は露天風呂よりも少し温度が高い。肌に優しい低張性アルカリ性冷鉱泉で、湯上がりはポカポカ&サッパリ。
調理は特別に凝ってはいないが、素材の風味を活かした前菜の品々。料理人の愛情が伝わり、とても美味。
マグロと甘エビ、アジ、鯛昆布締め、生シラス、青海苔の造り。港が近いので新鮮さは言わずもがな。徳川家康に献上されたと伝わる有東木(うつろぎ)の山葵がさらに味を引き立てる。
これは焼き物で、一番上は秋刀魚のアスパラ巻き。初めて食べたが、この組み合わせがこんなに美味いとは思ってもいなかった。
桜えびは旬ではないが、甘みと風味がギッシリと詰まっている。茄子や蓮根の土佐揚げなど、どれも美味しかった。
新東名高速・新清水ICからクルマで10分。アクセスしやすく、それでいて閑静な山間にある油山苑。料理とスタッフのサービスで多くのリピーターから高い評価を得ている。
創業100年の歴史を誇る、郷土菓子のロリエ常盤家のケーキ。我々が訪れたのは静岡松富店で、店内で食べることが可能。100年続くその味は伊達ではない。
カウンターに座れば、店主が目の前でさばいて焼くまでの職人技が見られる。タレは甘からず濃すぎずの味付けで、ウナギはふっくら。思い出しただけでまた食べたくなる。
飲み屋や他の飲食店が並ぶ、やや薄暗いマンションの1階にある『うな治』。人気店だけに昼食時は並ぶ可能性も…!