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ナローシエラで林道探訪
VOL.017
ナローシエラで林道探訪 Vol.17
ナローシエラで林道探訪 Vol.17


雑誌『ジムニー・スーパースージー』に連載中の『林道パラダイス』との連動企画。
2024年5月の中旬、兵庫県北部の林道をナローシエラで旅してきた。
2日目からは仲間も加わってジムニー4台での林道ツーリングとなる。
旅の一部を動画にしたので併せてご覧いただければと思う。

Photo & Text : 赤ぞう
1968年神奈川県生まれ。成城大学卒。日本ジムニークラブ神奈川支部所属。ブログがきっかけとなり2011年からジムニー・スーパースージーに林道ツーリング記の掲載が始まる。著書は「ジムニー林道アドベンチャー」(SSC出版)。千葉県房総半島の林道沿いの家に暮らしながら、日本中の林道を旅することを楽しみとしている。愛車はナローシエラ。
<YouTube赤ぞうチャンネル>


蘇武岳(そぶがたけ)エリア

この旅1本目は妙見山と蘇武岳が連なる山塊に続く林道妙見・蘇武線。

総延長は54.3kmもある長い林道だが大部分が舗装されているらしい。起点近くの小佐川沿いの脇道に入ると草木が茂っていて路肩も怪しげ。この先には妙見大滝があるはずだが断念する。本線に戻って大イチョウが素晴らしい日光院を参拝し旅の安全を祈願した。
妙見山の登山口まで登ったところで林道大ナル線の方へ左折。舗装路から砂利道に変わり下り坂になると視界が開ける。しばし景色を眺めていたら後方からトラックが迫ってきた。この先の現場で作業しているらしく引き返すことにする。妙見山登山口の方へ行ってみると林道脇はクリンソウが花盛り。少し荒れた道を登り詰めて車道は終点。ここからは登山道となる。

本線に戻り北へ進み名草神社に立ち寄った。ここの三重塔は1665年に出雲大社から移築された塔で重要文化財とのこと。一見の価値があるだろう。その先の本線は標高980m辺りから舗装が途切れ、ごく僅かだが砂利道が残っていた。やはり林道は舗装されてない方がいいと喜んでいると登り方向の脇道を発見。登り始めて間もなく倒木に行く手を阻まれた。ワイヤーを掛け引いて脇へ寄せる。その先にも倒木。人力でどかして進んで行くも草木が茂り始めてきたところで引き返すことにした。
金山峠から北へ分岐する作業道羽尻線は通行禁止で走れない。時間に余裕ができたので蘇武岳へトレッキングすることにした。登山の前に軽く腹ごしらえ。林道脇で湯を沸かしカップ麺を食べる。登山と言っても林道が山頂近くを通っているので歩く距離は短い。10分ほどで標高1074.4mの山頂に立つことができた。この林道を走るなら蘇武岳へも立ち寄るべきであろう。天気が良ければ日本海も臨めるらしい。

本線はまだ北へ続くが荒々しい雰囲気の砂利道に魅かれ国道482号へ下る林道粟ケ尾線へ入ってみる。やたらと曲がりくねった道で真っすぐにしてもいいようなカーブがいくつもあった。よっぽど勾配を緩くしたかったに違いない。

後半は林道脇に淡い桃色のウツギが多く咲く道となった。下山後に立ち寄った道の駅村岡では美方ルビークリーム大福が目に留まり購入。腹が減っていたこともあり疲れた体に染みわたる旨さだった。この日のラストは八井谷峠。黒田笠波池を過ぎると舗装は途切れて砂利道となる。道が狭い割には枝葉が茂ってなくて順調に進んだが、山深く進むにつれて路肩が怪しくなってきた。斜面から崩れた土砂が路面に堆積した場所では埋もれた木片が障害となりタイヤが空転。何度アタックしても登れない。ウインチのアンカーにできる立木はストラップを何本か繋がないと届かないほど遠くにある。スコップを手にして邪魔な木片を掘り出した。これで行けるはずとトライ。やや谷側に滑りながらも何とか突破した。

達成感で意気揚々と進んだものの尾根を越えた先は草木が茂り出し轍痕もなくなる。長らく車両が入り込んでなさそうなのでやめておこう。戻って林道福岡作山線で道の駅ハチ北へ下ることにした。それでも八井谷峠は諦め切れず国道9号の但馬トンネル手前から狭い道に入る。ほどなくして砂利道となって八井谷峠に到着。峠の切り通しには道の真ん中にも木が生えていた。いずれ太く育ったら通れなくなるだろうがまだ大丈夫。木の脇をすり抜けられる。でもその先は草木が茂り路面も荒れ気味。しかも通り抜けられるか分からない下り坂だ。夕刻が迫っていたこともあり引き返すことにした。

氷ノ山(ひょうのせん)エリア

翌日は道の駅ようか但馬蔵でジムニー仲間と待ち合わせ。前の晩から合流していた神奈川から参加のJB64に加え、神戸からJB74が2台やって来て4台でのツーリングとなる。

この日のメインは林道瀞川・氷ノ山線。ここは2011年に残雪に阻まれて踏破できなかった林道なのだ。仲間との挨拶もそこそこに国道9号を北上。北側から目指す林道に入った。県道89号までの区間は舗装されていたが県道を過ぎると砂利道に変わる。ヘアピンカーブにあるはちまき展望台に立ち寄って記念撮影。ここでは前日には見えなかった日本海を眺めることができた。快晴だからこそだ。かつて残雪で引き返した場所をあっさり通り過ぎると名物の氷ノ山ストレート。本州では数少ない1キロを超える直線ダートである。真っすぐなダートは気持ちいいものだ。

野間峠を過ぎると旧ミカタスノーパークへ下る林道野間線に入る。お目当ては天然記念物で絶滅危惧種でもあるイヌワシ。閉鎖されたスキー場の上空を飛び交う姿を観察できるポイントがあるのだ。イヌワシポイントに着くと空を見上げている人達がいた。上空を旋回する姿は見えなかったが林道の湧き水を飲んでいる猛禽類を目撃。あれがイヌワシだったのかもしれない。本線に戻って南下すると道筋はハチ北スキー場のゲレンデを横切る。あまりの美しさに降り立って休憩。爽やかな風が吹く草原で仲間との会話も弾んだ。

道県道87号でハチ高原スキー場の民宿街を抜け下って行くと林道瀞川・氷ノ山線の後半部分の入口がある。氷ノ山国際スキー場までは舗装されていたがその先は砂利道。前半部分よりも道幅が狭くカーブも多い。そのくせ対向車も多いので注意深く進んで行くと林道脇に流れ落ちる滝が目に留まった。上流の方から階段状に流れ落ちている滝で「だんだん滝」と呼ばれているらしい。

標高1100mの大段ケ平(おおだんがなる)まで登ると広い駐車場があったので昼飯を食べることにした。ここは最短時間で氷ノ山に登れる登山口でバイオトイレも設置してある。登山しない我々は登山口から最も遠いスペースを陣取って湯を沸かす。日差しは強いが湿度が低くて爽やかだ。山頂部を眺めていたら登りたくなってきたがそれはまたの機会にしよう。その先は一旦下るが再び高度を上げて標高1250mの林道最高地点に到達する。兵庫県の林道では最も高いそうだ。ここからは林道の雰囲気が変わって木々が茂ったやや薄暗い森の中を国道29号まで下り続ける。舗装路とフラットダートが交互に現れる総延長45kmほどの走り応えのある林道であった。帰り道に立ち寄ったのは砥峰高原。ススキ原が広がる丘陵地帯で映画やドラマのロケ地としても有名らしい。時間の都合で眺めるだけだったが遊歩道を散策するのも気持ち良さそうだ。

さて次回はどこへ行こうかな。

妙見山登山口の方へ行ってみると林道脇には紅色のクリンソウが群生して咲いていた。
林道粟ケ尾線に咲いていたウツギの花。淡い桃色が美しい。
氷ノ山国際スキー場の中を横切る林道瀞川・氷ノ山線の後半部分。舗装されていたのはこの辺りまでだ。
帰り道に立ち寄った砥峰高原。ススキ原が広がる丘陵地帯で映画やドラマのロケ地としても有名らしい。