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ナローシエラで林道探訪
VOL.005
ナローシエラで林道探訪 Vol.5
ナローシエラで林道探訪 Vol.5


雑誌『ジムニー・スーパースージー』に連載中の『林道パラダイス』との連動企画。
2023年6月の初旬、梅雨入り前の晴れた日に福島県の猪苗代湖周辺の林道をナローシエラで旅してきた。
旅のごく一部ではあるが短い動画も作ったので併せてご覧いただければと思う。

Photo & Text : 赤ぞう

中ノ沢温泉エリア

最初に向かったのは猪苗代湖の北東部にある中ノ沢温泉。明治時代に安達太良山から引き湯して開湯されたというこの温泉は乳白色の硫黄泉で過去に幾度か泊まっている温泉だ。快晴の空の下、赤留川沿いに広がる新緑の森の中を登って行く。すると右方向へ登る泥道を発見。タイヤが滑る感触を楽しんでいると坂の勾配が増してきた。水分をたっぷり含んだ泥でタイヤは空転し登れなくなる。勢いをつけて何度かアタックしたが登り切ることはできなかった。ここは大人しく引き下がって本線に戻り森の奥へと進む。次第に道は細くなり雨水で洗堀された路面となった。あまり車両は走っていないようだ。草を掻き分けるように登って標高900mを超えた辺りで小さな広場に出て行き止まり。地形図上は点線で母成峠まで通じているはずだが、草木に埋もれてしまったのか歩く道すら見当たらなかった。

続いて訪ねたのは達沢不動滝だ。フラットなダートを1キロほど進むと林道は終点。そこから沢伝いに達沢原生林の中を10分ほど歩く。鳥居をくぐると達沢不動尊。滝はその先にあって右手に男滝、左手に女滝を臨む。マイナスイオンと木々のパワーを感じるような場所だった。

吾妻山小倉川支線林道エリア

厳しい登り坂で溝にタイヤを落としてしまい自走では登れない。

次は吾妻連峰の1つである東吾妻山の山麓に伸びる吾妻山小倉川支線林道。この林道は300mおきぐらいに洗堀防止の排水溝が道を横切っていた。蓋などなく深い溝が掘られているだけなので減速しないとナローシエラは飛び跳ねてしまう。それさえなければ快適なダートなのだが林道を守るためには必要なのだろう。その溝越えに疲れてきたころに終点広場に到着。帰り道は往きにチェックしておいた脇道へ入った。右折するとすぐに急勾配。しかも路面は雨水で削られていた。まずは慎重に登ってみると溝に滑り落ちてデフが接地。タイヤは空転して登れない。いったん下がって勢いよくアタックしたが同じように溝に落ちてしまう。ここから先は電動ウインチの出番だ。

左前方10mほど先の立木をウインチアンカーにしてシングルラインでセッティング。ワイヤーを巻き上げていくと溝からは這い上がったがタイヤは滑って登れない。勾配が急過ぎる。再びウインチで登るしかない。次のウインチアンカーは20m以上先の右前方の立木。ウインチワイヤーだけでは届かずストラップを継ぎ足してセッティングした。勾配が緩くなるまでウインチングするとタイヤのグリップは回復。その先も登り勾配の泥道が続き、タイヤが空転するような箇所もあったがブレーキLSDも介入しながら登って行く。ステアリングを左右に切ってソーイングもしつつ、何とか止まることなく登り詰めた先は湿地のように水分が多い森だった。林道はさらに奥へと続いているようだが熊笹が茂って路面は見え辛い。この辺りで引き返そう。大きなスタックをする前に下山することにした。

秋元湖エリア

秋元湖の北岸を通って中津川渓谷へ行こうとしたものの、小野川発電所の少し先に通行止のゲートがあって断念。近くにあった裏磐梯浄化センターから始まる林道へ入ってみた。路面右側の洗堀による溝にタイヤを落とさぬように緩い勾配を登って行くと林道を封鎖するかのような倒木に出くわす。どかすには手に余る太さの倒木だ。GPSで位置を確認するとこの先300mほどで林道を通り抜ける場所まで来ている。何とかして突破したい。道の左側を足で踏んでみると割と締まっていて大丈夫そうだ。目一杯左に寄せたラインでアプローチすると右前輪は簡単に倒木を乗り越えたが、内輪差で内側に入り込む右後輪はタイヤ半径を超える高さで倒木に当たって越えられない。それでもナローシエラを前後に動かして揉んでいるうちに車体が横にスライドし、倒木に対して垂直になったところで乗り越えクリア。林道を踏破できたことに満足しながら、この日の宿である五色沼温泉へと向かったのだ。

桧原湖エリア

五色沼温泉で疲れを癒した翌日も快晴。周囲31キロもの桧原湖を周って林道を探したが、「これより先関係者以外立入禁止」や「サル・熊駆除中につき進入禁止」など訪問者を拒むような看板が目立った。ゲートはないが林道へ入ることは許されないエリアのようだ。せっかく豊かな自然と林道があるのに残念。ほかに走れそうな林道はないものかと改めて地形図を見直す。国道459号線の東側に秋元発電所の方へ下ることができそうな道を見つけて行ってみると、そこには訪問者を拒む看板はなかった。別荘地を抜けた先からは送電線に並走するルートとなり、その管理のためだと思うが50mほどの幅で草木が刈られていて見通しがいい。磐梯山の大噴火で飛んできたであろう噴石が点在しているのも見える。このエリアでは群を抜く眺望の林道ではなかろうか。でも道筋が送電線から離れた途端に草木が生い茂った薄暗い道となり、左手に崖が迫ってきたところで土砂が崩落。路面いっぱいに土砂で覆われていて引き返すしかなかった。

日山源田林道エリア

ラストは猪苗代湖から郡山市へと通じる日山源田林道に猪苗代湖側からアプローチしてみた。この林道はほぼフラットな砂利道だが所々で舗装されている。ピークが分かりにくい峠を過ぎた辺りで地形図に載っていない脇道を発見。左方向へと下って行く細い道だ。微かな轍を辿るように進むと行く手を阻むかのような大きな落石があった。右側の土手に右タイヤを乗せるラインを選択。対角線上のタイヤが浮いてフラフラしながらも下り坂の重力任せにクリアした。その先は草の茂り方が密となり路面状況が把握できないほどだ。何かあっても対処できるよう微速前進。茂みの中の落石に当たって不意にズコッと乗り越えたりしながら進んで行くと、分岐から900mぐらいのところで行き止まりとなった。

左右のタイヤの踏む高さが等高になるように石を積んでルートを造成する。

走り応えのある道に満足しつつ落石まで戻ってきたところ、往きに通ったラインは対角線上のタイヤが空転して登れない。左前方10mほど先の立木を電動ウインチのアンカーにしてワイヤーをセッティング。巻き上げ始めるとハンドルの向きに反してウインチワイヤーの方向へ引っ張られた。これでは路肩から落ちてしまう。ちょうどいい方向にも立木はあったがまだ若木で幹が細い。ダメ元でウインチワイヤーを掛け替えてウインチを巻き上げてみたが、すぐに若木の方が傾き出した。やはりダメだ。時刻は16時過ぎ。どうするか?落石の反対側の方が幅は狭いが倒木などをどかせば通れるかもしれないと、それらを取り除いて乗り入れてみたが車体は大きく傾いて落石の方に滑り寄ってしまう。狭過ぎてダメだ。やはり最初のラインしかない。タイヤさえ浮かなければ空転せずに登れるわけで、左右のタイヤが踏むラインを等高にするべく石を積み上げることにした。

サイドシルが落石ギリギリまで迫ったときに接触してもいい覚悟でアタックできたのはサイドシルガードを装着しているからこそ。

ひとしきり石を並べてからナローシエラを慎重にアプローチさせる。サイドシルは落石ギリギリまで迫ったが、もうぶつけてもいい覚悟でアタックした結果、擦ることなく通り抜けることに成功。暗くなる前に郡山市側へ無事に下山できたのだ。土木作業はちょっと大変だが堅実な脱出手段であることを旅の最後に再認識。さて次はどこの林道へ行こうかな。

ライタープロフィール

赤ぞう
1968年神奈川県生まれ。成城大学卒。日本ジムニークラブ神奈川支部所属。
ブログがきっかけとなり2011年からジムニー・スーパースージーに林道ツーリング記の掲載が始まる。著書は「ジムニー林道アドベンチャー」(SSC出版)。千葉県房総半島の林道沿いの家に暮らしながら、日本中の林道を旅することを楽しみとしている。愛車はナローシエラ。

YouTube赤ぞうチャンネル
https://www.youtube.com/@akazosan

明治21年の磐梯山の大噴火で堰き止められて誕生したという秋元湖。小さな島が点在する美しい湖だ。
桧原湖畔も明治21年の磐梯山の大噴火で堰き止められて誕生した天然の湖。湖畔からは磐梯山を臨むことができた。