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16.02.02

【Vol.34】 日本の建築技術の粋~Reg-On Diner [東京・渋谷]

日本らしいハンバーガーは? 東京らしいバーガーは? と訊かれたら、
私はこの店を挙げることにしている――。

猿楽橋下でAPIOジムニーコンプリートカーTS7「ハンバーガー号」

街乗りジムニー――APIOジムニーに乗って街へ出よう! 今月は東京・渋谷。


と言っても皆さん想像されるスクランブルな方ではない。原形を留めぬくらい、「どこがどう」と言えないくらい色々変わってしまった渋谷駅の東口を抜けて、青山通りの向こう。渋谷警察署の先の明治通り周辺が今日の舞台。

並木橋

少し行くと並木橋(なみきばし)という名前の橋がある。交差点の名として知る人が多いだろう。橋の下には渋谷川。コンクリートで固められた細川で、流れの全くない時もあるかも知れない。その有っても無くてもいいような細川の上には多くの橋が架かっている。


例えばこちら。「徒歩」の橋と書いて「かちばし(徒歩橋)」。この幅なら橋上の行き違いも可能。だから面白くない。もっと細い金王橋(こんのうばし)という橋もあるが、東横線高架の撤去工事の影響で渡れるんだかはっきりしない……。


と、こんな調子で果たして橋が何本渡れるか、橋めぐりをしてもよかったのだが、それに熱中すると「ジム探」になってしまうので程ほどにして、再度並木橋――。


都民、特に渋谷・目黒辺りにお住まいの皆さんは、その名を聞くと山手線・埼京線の線路上に架かる「陸橋」を思い浮かべるかも知れない。が、それは並木橋ではない。猿楽橋(さるがくばし)という。写真こちら。渡ると代官山・猿楽町。冒頭の一枚はその下で撮ったもの。「なんかカッコイイ橋だな」と思いながら潜(くぐ)っていた人も多いのではないか。


で。本当の並木橋はこれである。陸橋へ至る上り坂に並行して架かる"脇の小橋"がそれだ。交差点の名の由来となった橋が実はこんな目立たぬ橋とは――。さすがに一方通行だが、配送のトラックでも苦もなく渡れる道幅である。だが猿楽橋の下に開くこの横道はさすがに通れまい。

高さ制限2.2メートル……むしろ横幅の方が気になる。だが車幅1475ミリメートルの「ハンバーガー号」がトンネル内でドアを開けられるほどの余裕がなおあった。楽勝である。


これを機に「ここはさすがに通れまい」という都内屈指の狭路・隘路を大募集したい。宛先は"こちら"(ごめんなさい、未設定です)。採用された方には手ぬぐい……は出ないと思うが、ちょっと上の者と相談してみる……(笑)。


§§


さて昨年11月、青山・外苑いちょう並木にNYのハンバーガーショップ「SHAKE SHACK」がオープンしたのを契機にメディア各社がこぞって「高級バーガー」を取り上げ、いま新たなハンバーガーブームが巻き起こりつつある。


昨夏同じくNYから来た「BAREBURGER」、秋葉原に3月オープン予定のカリフォルニアのバーガーチェーン「Carl's Jr.」など、これら新参のバーガー店(※「Carl's Jr.」は1997年に一度撤退して以来の日本再上陸)と、マクドナルド、モスバーガーを始めとする既存のチェーン、およびこの10年で一気に増えた個人経営規模のハンバーガー専門店とが横に並べられ、比較評価される――ハンバーガー業界は今そんな「再評価」の時を迎えようとしている。


米国発祥の諸店に対するは日本を最高レベルの精鋭各店。中から東京・渋谷の「Reg-On Diner(レッグオンダイナー)」を私はその代表格のひとつとして挙げたい。

オレゴンから愛

場所は國學院大學のそば。と言ってわからなければ青学の裏。例の並木橋交差点から少し入ったところ。國學院の学生が絶えず行き来する人通りの多い場所である。が、彼らのうち店に入るのはほんの一部。学生の身に一個千円のハンバーガーはやはり高いかも知れない――君らにはまだ早い


店主は横溝さん。高校卒業後、貯めたバイト代1年分を手に米国放浪3ヶ月半。NYからLAまでグレイハウンドで北米大陸横断の一人旅を敢行した。途中バスに置いてけぼりにされ、バッファロー郊外からシカゴまでヒッチハイクしたことも。窓の外は見渡す限りの大平原。乗せてもらったトレーラーのラジオから「スタンド・バイ・ミー」が流れてきて、思わず涙がこぼれ落ちたそう。


アメリカ行きのきっかけは「オレゴンから愛」。ドラマの舞台となった雄大な大地を一目見たくて。オレゴンには1ヶ月ほど滞在。海沿いの街を点々と2、3泊ずつしながら内陸のベンドという古びた街へ向かい、そこを拠点にロケ地を巡礼した。

窓伝いに続く臙脂色のベンチシートの先、ホールの一番奥にボックス席

帰国後、次兄に連れられて行った東京・自由が丘の「BUTTER FIELD'S」のアメリカンな雰囲気が気に入り勤務。1980年オープン、都内では草分け的存在の老舗アメリカンである。そして6年勤めた後に辿り着いたのが人形町の「BROZERS'」である。ご存知、今日のハンバーガーシーンを確立した重要かつ歴史的な店のひとつ。横溝さんの、そしてレッグオンのハンバーガーはそのブラザーズの影響を強く受けている。


勤務のべ3年弱。辞めた頃より本格的に物件探しを開始。角地のこの場所は道の曲がりに合わせ七角形をした変則的な間取り。全18席。背当たりの低い臙脂色のベンチシートが窓伝いに伸び、ホールの奥にボックス席。大概の店が客に背を向けて調理する造りの中、ホールに向いて造られたグリルがひときわ印象的。


店内そこかしこに飾られた小物・雑貨の数々は錦糸町のアンティーク雑貨店「KEEP LEFT」より委託された売り物。値札が貼られたものは購入可。

日本の建築技術の粋

ハンバーガーは全25品(うちエビ魚2品)。ホットドッグ5品。中から今日はコノ店を東京を代表するハンバーガーショップに挙げた所以、「A.B.C.バーガー」1,450円。豪州牛100%・115gパティに、アボカド「A」ベーコン「B」チーズ「C」のトッピングでA.B.C。


この高さ。にも関わらず串もスキュアーも刺さっていない点に注目。手先の器用な日本人ならでは作れる、これぞまさしく日本の建築技術の粋! 丁寧に几帳面に折り畳まれたレタス――だから上の具材がすべらない。傾かない。


きっちりきれいに積み重ねられたそのそびえる美しさ。トマトの赤、チーズの黄、アボカドの緑、そのいろどりの美しさ。まるで精巧な「おもちゃ」のような、もはやこれは芸術の域。私の知る限り、これだけのハンバーガーの作り手は都内にわずか数人しかいない。その一人が横溝氏。

§§


ハンバーガーもクルマも同じ。ジムニーがアメリカのジープをコンパクトにし、かつウンと高性能に昇華させたものと言われるように、ハンバーガーもまた、豪快で大味だが迫力満点な本場アメリカのソレが、日本人らしい手先の器用さと勤勉実直な研究の積み重ねとにより、精巧・精緻なものへと洗練され進化していったのだ。


そんなことで「日本らしいハンバーガーは?」「東京らしいバーガーは?」と訊かれたら、私はこの店を挙げることにしている。

< 文と写真:松原好秀 写真:GAO NISHIKAWA >

Reg-On Diner [東京・渋谷]

― shop data ―
所在地: 東京都渋谷区東1-8-1K HOUSE 1F
アクセス: 首都高3号渋谷線・渋谷出口より4分
駐車場: 店舗裏手にコインPあり
TEL: 03-3498-5488
URL: http://www.regondiner.com/
オープン: 2008年8月15日
* 営業時間 *
月~土: 11:00~22:00(21:30LO)
日・祝: 11:00~20:00(19:30LO)
定休日: 火曜日(要確認)

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