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14.05.01

【Vol.13】その店の色は「赤」~BROZERS' [東京・人形町]

下町風情残る日本橋人形町。
甘酒横丁裏手の奥まった一角に
全国にその名を馳せる名店がある

人形町の路地裏にて

BGM、1曲目はこの曲――Carole King "Brother, Brother"から。


動画共有サイトにリンクするについては少し悩んだ。要は、便利さの陰に「有り難み」というものがすっかり薄れてしまったという話である。前世紀、この一曲を聴くために、どれほどの時間と労力、財力を傾けたことか――それを思うと最近ちょっと便利過ぎる。


とは言え、かく言う私もその便利さを享受する一人に違いないので、他人のことをとやかくは言えない。それが今回リンク付きにした理由である。この店のオーナー北浦さんならどう思うだろう。

5店をめぐる

東雲店。2011年3月オープンのデリバリーとテイクアウトの専門店

ここ10年、都内を中心に目覚ましい発展を遂げた専門店のハンバーガー、世に言う「グルメバーガー」の歴史上、最も重要な店のひとつにして、最も大きな成功を収めた"ビッグネーム"の、ついに登場である。その名は「BROZERS'(ブラザーズ)」。日本橋人形町(にんぎょうちょう)に2000年7月オープン。今や都内4ヶ所に5店を構える勢いだ。


今回その5店を全て回ってみた。メディアへの露出の多いブラザーズだが、このような取材はきっと初めてだろう。上の写真のような道幅狭い路地裏が人形町に多いことも知っていたので、ジムニーで走り抜けてみたかったというのもある。いずれにせよ当「OTSB」ならではということで――。

§ §

新富町店はレストラン。2012年7月オープン。テイクアウトもOK

まずは江東区、東雲(しののめ)――写真上。豊洲・有明・晴海などの所謂「ウォーターフロント」の一大マンション群にハンバーガーを供給する、デリバリーとテイクアウトの専門店である。


次は新富町(しんとみちょう)――写真左。中央区役所向かい、すぐ前を首都高都心環状線が走る立地。店内で食事をすることが目的の、こちらはレストラン。2012年7月、5店中最も新しくできた店だ。

人形町の本店。創業は2000年7月。イートインのみのレストラン

そして人形町店――写真右。本店。こちらもレストラン。今や東京観光の名物・名所のひとつ。全国から大勢の観光客がココを目がけてやって来る。しかしオープン当初は、オフィス街でも繁華街でも無い、駅から離れたこの場所に人を呼ぶこと自体が至難の技だった。


と、この辺で2曲目――Stevie Wonder "Big Brother"を。


その本店から徒歩1分足らず。同じ町内にあるこちらはテイクアウト専門店――写真下。本店に持ち帰りを希望する客が現れると、こちらを案内。食事客と持ち帰り客を振り分けることで、双方、より早く目当ての品を手にすることができるという按配だ。

ホームデリバリー

2010年4月オープンの、こちら「Take Out」。中はひとつながりの大きなキッチン。裏へ回ると「Home Delivery」に

さらにこのテイクアウト店の真裏はデリバリー専門店になっている――写真下。顔は表裏ふたつ。中はひとつながりの大きなキッチン。


デリバリー店はこの界隈特有の狭く細い路地に面している。一方通行がおびただしい場所柄、当初は充電式の自転車2台も活躍した。今は東雲・人形町合わせ、計9台のスクーターで配達。車種は全台ホンダ・ジャイロキャノピー。何でも新宿にジャイロばかりを売る中古車店があるのだそうで(こちら)。


デリバリーエリアは店を中心に半径約2.5km。これは業界標準値。人形町と東雲の2店で、銀座・丸の内・大手町・秋葉原・晴海・お台場など、都内主要部をカバーする。商品合計2,500円から配達可能。持ち帰りと比べ、ハンバーガー1個辺り200円ほど割高だが、代わりに天候によらず何十個でも、自宅や職場まで届けてくれるという便利なサービスだ。

「Home Delivery」は2008年2月オープン。一方通行がおびただしい場所柄、当初は自転車も活躍した

ハンバーガーのデリバリーを始めたのはブラザーズが最初では無い。その以前に広尾「Homework's」、五反田「7025 Franklin Ave.」、本郷「FIRE HOUSE」といった先達が居て、マクドナルドが始める優に10年以上前から、ハンバーガーのデリバリーは都心部で盛んにおこなわれていた。


そろそろ3曲目――David Sanborn "Brother Ray"。


この5店のオーナーが北浦さん。お兄さんと一緒に始めた店なのが店名の由来だ。本店と新富町店の店内、真っ赤な壁に掛かるポスターや写真をよ~く見ると、どれもテーマは「兄弟」。


豪州に渡っていた折、仕事帰りによく寄ったシドニー郊外の「Archie's」という町の食堂でやがて働くようになり、今に至るブラザーズのハンバーガーの原形を学んだ。

バーガー界の金字塔

店内を彩る赤は、高貴な「赤」

帰国した北浦さんは、それまで都内のどこの店もやっていなかった、画期的な試みを"3つ"おこなっている。まず、サンドイッチを置かず、ハンバーガーのみ一本で勝負したこと。次に30数品という錚々たるバーガーメニューをズラリと並べて見せたこと。そしてBBQ・テリヤキ・レッドホットチリ・スイートチリ、計4種類の「ソースがかかる」バーガーを提案したこと。これらのアイデアはその後多くの店に取り入れられ、今やすっかり広まった。


今年で創業15周年。これまで多くの"卒業生"を輩出してきたブラザーズだが、彼ら優秀なるOBの作るバーガーを見ると、その凄さ・強さがあらためてよく解る。


店を離れ、独り立ちした彼らの手になるバーガーは、ブラザーズ同様の質の高さを維持して一向に味が落ちない。コピーをしても"劣化"しないのである。なぜか。その原版が実によく考え尽くされた、極めて商品力の高いものであるからに他ならない。例えばブラザーズの代名詞・ロットバーガー1,500円……の前に4曲目、The Hollies で"He Ain't Heavy, He's My Brother"。

新富町店の前でコンプリートカーTS7、通称「ハンバーガー号」

戻って「ロットバーガー」1,500円。言わば「全部乗せ」な一品だ。ベーコン、チーズ、エッグにパイナップル。そこへドバッとソース、マヨネーズ、さらに黒胡椒がガッツリ。どれも主張の強い、うるさい味ばかりなのに、一個の「ハンバーガー」としてみごとに交通整理され、不思議なくらいの調和を見せる。


のみならず、赤・黄・緑、美しく高く積み重ねられたその堂々たる偉容は、まさにピンスポットを浴びるにふさわしい、ハリウッドスターのような抜きん出た存在感だ。この華やかなビジュアルがあったればこそ、一個千円"もする"専門店のハンバーガーが現在これだけ広く世に認められ、利用されるようになったのである。そのロットバーガーをして、私はバーガー界の「金字塔」と呼んでいる。

§ §


といったところで、今回もそろそろお別れの時間……最後は↓ギャラリーの写真を見ながら、Gino Vannelli "Brother To Brother"で。

< 文と写真:松原好秀 写真:坂上哲也 >

BROZERS' [東京・人形町]

●人形町店
所在地: 東京都中央区日本橋人形町2-28-5 月村マンション1階
アクセス:
 ・東京メトロ日比谷線・都営浅草線 人形町駅歩7分
 ・首都高6号線 浜町出口から1分
駐車場: 店前の浜町緑道沿いの道路は土日駐車可
TEL: 03-3639-5201
URL: http://www.brozers.co.jp/
オープン: 2000年7月3日
営業時間:
 月~木: 11:00~22:00(21:30LO)
 金土/祝前: 11:00~23:00(22:30LO)
 日・祝: 11:00~20:00(19:30LO)
定休日: 不定休(要確認)

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