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17.04.27

ビヨンド・ザ・フィールダー>>vol.11 荒涼たる世界を楽しむ

雑誌「フィールダー」で連載中の『グレートドライブ』。
日本にある、ジムニーでしか観に行けない景色を求めて旅する企画だ。
第2回は、長野県佐久にある板石山を目指す。

<クリックすると画像を拡大できます>

龍岡五稜郭には、日本に2つしかない江戸期の西洋式城郭。田園風景の中にあるのどかな城だ。

佐久市は上田市と並ぶ東信地区の中心地で、長野県5番目の10万人都市だ。江戸時代は三河の本拠を置いた奥殿藩の領地として、松平家が支配した場所だ。

市内には宇宙ファンにお馴染みの臼田宇宙空間観測所がある他、「日本で一番海から遠い場所」が存在する。農業が盛んな場所だが、最近は大手企業の工場も多く進出しており、急激に人口が増加している。

佐久と言えば、全国的に有名なのが「鯉」だ。本来はこの辺の農家が水田で養殖し、刈り入れの時期になると食べるという風習があった。刺身にしてから氷水で急速に冷やす「あらい」の他、味噌汁の具とする「鯉こく」などが食べ方として知られる。

この鯉が僕は大好物なのだが、山岡巨匠に「食べよう」と言っても「まったく興味がないね」と返された。その後、延々とご当地名物を食べることのくだらなさ論について説かれたので、結局昼ご飯はどこでも食べられるパスタになったわけだが、皆さんはぜひ試していただきたい。

さて、佐久にはおもしろいものが残っている。それは「龍岡五稜郭」だ。日本に2つしかない五稜郭のひとつとして、地元では謳われている。これは幕末に奥殿藩の田野口陣屋として造られたものだ。フランスの指導によって設計された西洋式城郭で、代々宗家の家臣だった大給松平家が、混沌とした幕末の情勢に合わせて古い陣屋を作り替えた。

行ってみると函館のものより小ぶりだが、まさしく五稜郭だ。現在は小学校として使われており、なんとものどかな雰囲気だが、やはり戦闘を前提とした城であることは間違いない。綺麗な石垣と堀を見ていると、日本も戦いに備えていた時代があったということを改めて知らされるのである。

さて、この五稜郭からほど近い場所から、今回のダートドライブは始まる。

上信州の絶景が楽しめる東山林道

春が訪れたばかりの東山林道は所々に残雪が。これからは新緑の美しい季節だ。

龍岡五稜郭から15分も走ると、林道東山線の入口がある。とにかく佐久という土地は林道が多く、ジムニーユーザーにはたまらない所だ。まさに林道天国と言っても過言ではない。

東山林道は県道93号から国道254号に抜ける道で、地図を見るかぎりでは相当長い。道はほぼフラットで、2WDでも十分走れそうだ。ただ、路肩に残雪が残っているので、一応4Hに入れておいた。

今年は季節外れの大雪に見舞われたせいか、この季節でも北側には多くの雪が残っていた。場所によってはラッセル状態で、やはり4WDに入れておいて正解である。

道の東側には上州奇景のひとつである荒船山が、ドドーンと見える。鉢形山との饗宴はなかなか見事だ。しかも荒船山は妙義側から見るのとは異なった形をしており、非常に新鮮な感じがする。向こうにはかつてフィールダーの取材で行った、神津牧場も見えている。隣の巨匠は、絶対にあの時食べた激うまのソフトクリームを思い出しているはずだ。

ちなみに山岡巨匠は下戸で、大の甘党。林道を走っている時に、「血糖値が下がった。なんか食べないと仕事できない」と言い出すので、担当編集としては困る。菓子を買っておくと、大抵は一人で食べてしまうというブラックバスみたいな人だ。

林道が北を向くと、向こうに水蒸気を上げた浅間山がおがめる。

そろそろ、血糖値が下がったきたんじゃないかと思いきや、案の定「この林道長いな〜」と言い出した。そろそろランチタイムということらしい。

とは言え、本当にこの林道が長くて、なかなか下らない。ちょっと下ったら、また登り返すの繰り返しで、群馬県と長野県の境目をクネクネと進んでいく。とは言え、路面はほぼフラットだし、向こうには浅間山も見えてきたし、この林道はなかなか楽しめる。

この林道はシカが多いようで、この日も我々の前を跳ぶように走っていった。最近のクロカン4WDはグリルガードを付けることが少なくなったが、走行中にシカなどの大型動物に衝突すると、ラジエターを破損して走行不能になることがあるので注意したい。

結局、林道東山線を走破するのに、1時間ほどかかった。コーヒーやランチでも持って、峠付近でデイキャンプでもしたら、きっと気分がいいはずだ。

石材の産地はダイナミックなオフロードだった

板石山の山頂。この右手にトップの写真のような採石場がある。かつては写真の場所も平らではなかったはず。

雑誌の撮影というのは、皆さんが思っている以上に「出たところ勝負」。もちろん取材に行く前に事前のリサーチはしていく。だが、写真というのは得てしてよく見えるもので、逆に言えばよく見えるように撮っているものだ。だから、実際に行ってる見ると「こんなものか〜」となる場合がしばしばある。

また行ってみたら通行止めだったとか、景色が変わってしまっていたというアクシデントも少なくない。特に最近は、気候変動のせいで大型台風が日本に数多く上陸するため、山中の道などは大変な被害を受けていることが多いのだ。それでも記事は制作しなければならないので、担当編集者とカメラマンには臨機応変さが求められる。

そういう意味では、二本目の林道余地大日向線はいい林道なのだが、景色のハイライトが少なくて困った。板石山に向かうこの林道は、非常に整備されたいい林道だ。フラットで走りやすく、2WDでテールスライドさせながらドライブするにはちょうどいい。

板石山は江戸時代から「鉄平石」と言われる石が採れる山。その名の通り、板のような石で、諏訪地方や佐久あたりでは、屋根の瓦の代わりに使っていたらしい。現在でも墓石や、床材、壁材としてよく使われているのを見る。

つまり山頂に採石場があるため、大型のダンプカーでも通れるように道が整備されているのである。

巨匠は、自分の感性のアンテナがキャッチしないと、あまりシャッターを切らないカメラマンなので、横にいると分かりやすい。いい場所があると「止めて」と言うのだが、この林道では助手席でハイチューを食べている。皆さんが走る分には十分に美しく楽しいと思うのだが、写真はやはり特徴のある景観でないと映えないのだ。

大きな石の転がっている廃道で1カット撮影して(フィールダー誌面参照)、僕らはとりあえず目的の山頂に向かった。事前情報で、平日は採石を行っていることは知っていたのだが、かなりの規模でユンボが動いている。しかも、かつての風景よりも石が削り採られてしまって、なんだか景観の規模が小さい。

幸い採石場のおじさんたちは、胡散臭い僕たちを見ても会釈してくれたので、ここで写真を撮っても問題がなさそうだった。ただユンボがいる場所が撮影にはベストポジションなのだが、さすがに「どいてください」とは言えない。

その辺をウロウロと二人でしながら下見していると、岩の上を見つめている巨匠の眼がキラリと光った。嫌な予感しかしない。「あそこの上にジムニーつけて」マジか。 

上に登ると、切り立った崖。一歩間違えれば、ジムニーは金属の塊。僕は数年間、このコーナーを無料で担当することになる。下から見ている巨匠は「もっと前だって〜」と無責任に言うが、僕は命と生活の両方が懸かっているので、1㎝でも前に行きたくない。で、その結果できた写真がトップの画。撮影が終わった瞬間に、速攻バックギアで逃げたことは言うまでもない。

ちなみにこの辺りは、フラットダートが網の目のように張り巡らされ、とにかく走りたいという向きには天国のような所だ。やがて舗装化される匂いもあるので、行くならいまのうちかもしれない。ただし、あくまでも地元の道なので、採石関係者の邪魔にならないようにだけ留意をお願いしておく。

まあ、板石山は想像よりも若干小規模だったが、周囲の林道とセットで考えれば十分に楽しめた。鯉が食べられなかったのは非常に残念だったが、楽しい旅であった。皆さんには林道を走った後、臼田宇宙空間観測所に立ち寄って、八ヶ岳経由で買えることをオススメしておく。パラボラアンテナが建ち並ぶあの景観もまた、日本らしくなくて見る価値ありだ。


<文/山崎友貴、写真/山岡和正>

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