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ジムニー車中泊・ひとり旅
VOL.036
ジムニー車中泊ひとり旅 VOL.36
ジムニー車中泊ひとり旅 VOL.36


ジムニー車中泊ひとり旅 VOL.36 「静岡・掛川」
Traveling alone with jimny.



季節の狭間に翻弄され
ようやくたどり着いた春の兆し


寒さ厳しい冬を越えてようやく春めいてきたものの、高地や北の地方はまだまだ冬の装い。
目覚めた春を探そうと、粉雪の舞う街を後に南へ向かう



Photo & Text / 山岡和正

雑誌、WEB、カタログなど中心に、対象物を選ばず多方面で活躍するフォトグラファー。
特に車やアウトドア、旅などには定評がある。
ウェブサイト:http://kaz-yamaoka.com/
SNS:Facebook

林道のそこここには、春の気配が溢れていた

桜が開花した話も聞こえてきて、いよいよ春も近い。

次は「春を見つける」をテーマに旅のプランを立てようと、福島県、長野県の知人に現地の様子を聞いてみた。すると例年と比べ雪が多く、未だあたりは雪景色だという。富士山周辺のキャンプ場でも、ここ数日は積雪予報で15㎝ほど積もる見込みのようだ。林道脇に残る雪の隙間から顔を出したフキノトウや、開花した山桜を想像していたのだが、そうはうまくいかないようである。

困ったときの伊豆や房総とは違う場所へ行きたかったので、とりあえず静岡県の向こう側へ行けば何とかなるだろうと、東名高速を南へ向かうことにした。

出発当日も朝から雪がちらついていたのだが、中部地方は晴れる予報だったので楽観的に考え、気持ち的には少し余裕を持っていた。前方の視界を遮っていた雪も御殿場を過ぎる頃には止んで、少しずつ青空が見え始めている。掛川あたりで高速を降り、天竜川沿いに遡上してから林道に入る。この周辺は林道が迷路のように入り組んでいて分かりづらく、車に付いているナビには到底細い林道など載っているはずもない。いつもは国土地理院の地図を参考にしているのだが、今回の場所は地理院地図とも一致しない場所が多く困惑した。

なんとか携帯の電波が入る場所を探して、移動する範囲の地図を登山用のアプリにダウンロードした。もちろんGPSは作動するので、これで自分の位置が明確になり迷子になることはない。

随分と民家から離れて、そろそろダートになってもよさそうなものだが、アスファルトの乾いた道は続く。さらには、舗装直後と思われる真新しい黒い路面に変わってきた。時間はすでに正午を回っていて、このままでは今日中に長いダートを走るのは無理かもしれないと思い始めた矢先、ようやくダートが現れた。外気は20度近くあり風も無く暖かいのだが、日陰はひんやりとしていて山の北斜面には雪が残っていた。

しばらく走って見つけた日当たりの良い広場には、7分咲くらいの桜の木がぽつんと1本だけ立っている。その木の下で昼食を兼ねたコーヒーブレイクを取りながら少しばかりのお花見を楽しんだ。

林道を進んで行くと、土だった路面は岩盤が崩れ落ちたガレ場へと変わってきて、ここの日陰にも微かだが雪が残っている。その残雪もそろそろ終わりのようで、岩に積もった雪から溶けだした水は、滴となり止まることなく降り注いでいた。

天竜川の支流にあるキャンプ場を野営地にする予定だったのだが、まだ日没まで時間があるので川を下り海まで行ってみることにした。
山間部では抜けるような景色が見られなかったので、海岸へ行けば広大な海の風景が見られるだろうと思ったのだ。

天竜川の堤防に作られた道は流れも速く、1時間もかからずに海へ到着した。

海岸は想像以上の強い風が吹いていた。無数の巨大な流木が哀しげに横たわり、海岸線のずっと遠くまで続いている。その流木を避けて、地面をなぞるように流れていく砂の嵐と荒れ狂う波。それらを金色の夕陽が照らし出す様は美しく、地球の息吹を感じる瞬間でもあった。

桜を愛でながら春の日差しを感じる

冬山の景色を最初に色づかせるのは山桜だと思う。色のない山の中で淡紅色の花を纏い、一際目を引く桜の木のそばで、コーヒーブレイク。お花見しながらの一杯は格別である。暖かな日差しとともに、この場所は特に春の匂いがした。

林道走行中に、所々で細めの杉が何本も倒れていた。どうやら雪の重みに耐えられず折れてしまったようだが、それがこの冬の積雪の凄さを感じさせる。通れなくなるほどの大木が道を塞ぐことはなく、幸運だった。

あたりにはいくつもの春があった。ミツマタの花は雪の欠片を背負い、優しい風に吹かれて揺れていた。

海の近くでのキャンプは天候上厳しかったので、川辺のキャンプ場まで戻った。山に囲まれた静かな場所で、深々と夜は更けていった。

お茶は魅力的だがスイーツも美味し

静岡から浜松あたりの名物で、代表的なのはお茶だと思うが、そのままでは面白くないので抹茶のティラミスをいただくことに。写真は日本茶きみくらの「季節の茶菓寄せ」。