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ビヨンド・ザ・フィールダー
VOL.006
旬の山城を全身で楽しむ
旬の山城を全身で楽しむ

大河ドラマ「真田丸」の影響で、今年は全国的に真田ブームだ。
とくに真田家の拠点がある上州では、
上田城をはじめ、真田ゆかりの地に多くの人が訪れている。
今回は、そのひとつである「岩櫃城」で、ちょっと変わった城巡りをしてみた。

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岩櫃城は岩櫃山をバックに、その中腹に築城された山城だ。

三谷幸喜の脚本で、キャストもユニークな顔ぶれということで、今年の大河ドラマ「真田丸」は好調のようだ。真田丸は真田繁幸(幸村)の半生を描いたもので、大阪の陣で繁幸が築いた出丸がタイトルになった。

戦国期の真田氏は信州、上州を征した地方大名として知られているが、その出自は実ははっきりしていない。ただ現在の東御市にあった真田庄の土豪であったのは間違いないようだ。一族の中で頭角を現したのは真田幸村の父である昌幸で、その父親の隆幸の時代に使えた武田氏の後ろ盾を得ながら、徐々に力を伸ばしていった。

特に北条方と戦った沼田城の攻防戦や、徳川方と戦った上田城合戦は真田一族の知略を広く知らしめた。武田氏が滅亡すると昌幸と次男の幸村は豊臣家、長男の信幸が徳川氏に使えるなど、家名を残すに後世を見据えた立ち回りは、いかにも真田家らしいものと言える。結果、幕末まで真田家は松代で藩を受け継いでいる。

群馬県には、多くの真田ゆかりの場所があるが、一番大きいのは「上田城」だ。これは、真田家が徳川軍勢を打ち破った“栄光の地”であり、信繁の父である昌幸が築城した名城として、いまも多くのファンが訪れている。

だが、僕が注目したのは「岩櫃城」だ。池波正太郎の「真田太平記」では、信繁がここ岩櫃城で青春時代を謳歌している様が描かれている。築城されたのは鎌倉時代とされるが、戦国期と鎌倉期の城の概念はかなり異なり、築城した吾妻氏から城を奪った山内上杉氏の家臣・斎藤氏が、その縄張りを広げたようである。

さらに斎藤氏から城を奪った武田氏の家臣だった真田が、より強固な山城として改修・増築。現在は、その時代の名残が残っている。

岩櫃城は岩櫃山という岩山を背にし、比較的緩やかな斜面を削って城郭を造っている。岩櫃山は要害であると同時に、物見台としても使われていたようだ。城の出入り口である虎口は、平坦な東側でなく、急峻な岩山がある西側に造られているのは面白い。

フィールダー最新号のテーマは「日本探検」。ただ岩櫃城に行っても城見学に過ぎないので、岩櫃城の西側、つまり険しい岩櫃山を越えて岩櫃城を“攻めて”みようという考えに至った。

岩を登るにはその装備が必要

登山用ヘルメットは、落石から頭を守るためのもの。転落時に頭部を守る効果も多少ある。

岩櫃山には5つの登山ルートがあるが、もっとも人気があるのが「密岩通り」というルートだ。このルートは、鎖場がいくつかある。鎖場とは鎖が付けられたセクションで、アルパインクライミングまではいかないが、それなりに難度の高い上級登山コースに多い。

密岩通りの鎖場は中級レベルになるが、岩場を体験したことのないビギナーが一人で行ける場所ではない。必ず、経験者と一緒に入ってほしい。そして、鎖場に行くにはそれなりの装備をすることが大切だ。

まず必要なのは、登山用ヘルメット。クライミングにしか使わないと思っている人が多いようだが、石や岩が落下してくるような登山道では着用が必要だ。小さな石でも、上から落下して頭に当たるとかなりの衝撃を受ける。それによって、自分も落下してしまうことも珍しくない。

ヘルメットは高価なものでなくても、登山用であれば問題ない。もし自分が滑落・転落した時でも、頭部を守ってくれる。僕の友人も岩から転落したが、ヘルメットのお陰で頭部へのダメージはなかった。

岩には掌にゴムが付いている軍手がグリップする。鎖もこれなら滑らない。

次に必要なのが、ゴムが掌に付いている軍手だ。ホームセンターなどにいくと売っている。安価なので、予備も買っておきたい。

岩は素手でも握ることができるが、夏場は汗ばんで滑ることがある。また鎖やロープも同様だ。滑ると転落することがあるので、こうした軍手をすることが必要だ。また、掌にダメージを受けると、岩や鎖をつかめなくなるので、慣れないうちは素手はやめておいたほうがいいだろう。

人によっては革手袋を着用している人もいるようだが、革は濡れると収縮するため、フィーリングが変わってしまう。その点、軍手なら多少濡れてもフィーリングは変わらないし、絞れば水分を落とすことができる。

中には自分で岩へのグリップを調整するために、軍手の指先を切って使っている人もいる。岩の掴む面積が狭い場合、例えば指先しかかからないようなケースでは、ゴムよりも皮膚のほうがグリップするということもあるからだ。

まず切らずに使ってみて、調子が悪いようだったら切るのがいいだろう。

一見、トレッキングシューズに見えるが、岩登りにも対応しているアプローチシューズ。

シューズも岩の登りやすさを向上させてくれる、大切なアイテムのひとつだ。登山と言えばトレッキングシューズが一般的。もちろんトレッキングシューズでも登れないことはないが、爪先で登ることが多い岩場では、トレッキングシューズでは滑ることがある。

そこでオススメしたいのが「アプローチシューズ」という種類の登山靴だ。アプローチシューズは、クライマーが岩場まで履いていく靴で、トレッキングシューズに岩場も登れるソールを付けたもの、と思っていただければいい。

爪先に、岩との摩擦係数を上げたゴム製ソールが付けられており、岩場でもラクに登れるのだ。大抵はローカットシューズなので、ロングトレールには向かないのだが、ハイカットモデルもあり、これなら縦走登山でも使える。僕はハイカットのアプローチシューズを使っているのだが、これで2000m以上の高山にも登っている。意外と守備範囲が広く、重い装備でなければ大抵の山に使える。

3点支持が岩登りの基本

一般登山道の岩場には大抵、写真のような鎖が付いている。これは言わば「手すり」に過ぎない。 

鎖場はアルパインクライミングやロッククライミングと異なり、一般登山者でも登れる…というのが建て前だ。たが、岩場の登り方を知らない人が危ない登り方をしているのを見ることがあるので、ここで鎖場の登り方をお伝えしておこう。

まず岩場にぶら下がっている鎖は、よほど古いものでなければ強度が十分に保持されている。だが、念のために、一度鎖を持って引いたり揺らしたりしてみよう。場合によっては落ちてくる恐れもあるので、落下に備えておこう。

鎖が安全なことを確認したら、片手で鎖を握る。両手で持つと、不安定になって、場合にとっては身体が回転してしまうことがある。まず片手でしっかりと握り、その手と同じくらいの位置の岩をもう一方の手でつかむ。この状態が、登る時のニュートラルな姿勢になる。

まず片方の脚を、岩のホールド(足や手を置ける位置)に載せる。この時に手はそのまま。載せた脚が安定したら、もう一方の脚も岩に載せる。手と脚の3点が安定した状態で、どこか1点を動かす。これが「3点支持」の動きとなる。

両脚が載ったら、まず鎖を握った手を上にずらす。さらに同じくらいの高さの岩のホールドに、もう一方の手をかける。そして片脚づつ、上に上げていく。これを繰り返して、岩を登っていくのだ。

登る時に急ぎすぎると、3点支持をつい忘れがちになるが、ゆっくりと確実に支持をしながら登れば安全だ。また登る時は絶対鎖を離してはいけない。仮に脚が滑ったとしても、鎖さえ握っていれば片手で身体を支えることができる。

たまに鎖を両手で持ち、鎖に体重を預けて両脚だけで登っている人を見るが、これは手の力がいずれなくなって危険だ。岩はジャングルジムを登るような感じで登るのが基本。降りる時もジャングルジムを降りるような感じが基本だが、場合によっては両手で鎖を持ち、両脚でぺたぺたと降りる場所もある。

ちなみに岩は硬くて安全だという考えは捨てよう。風雨で弱っている岩は、場合によって割れることがある。その場合、手で掴んだ岩だけでバランスを取っていると、転落することになる。手でも脚でも、まずホールドを軽く叩いたり揺らしたりして、動かないかを確認してから手脚を載せるようにしよう。

登山の相棒はやっぱりAPIO・TSジムニー!

オン、オフ問わず、快適&スピーディなドライブが楽しめるTS7。

今回の探検のお伴は、APIO・TS7ジムニー。TSシリーズの中でも、ベーシックで人気の高いコンプリートカーだ。独特なフォルムで、オフロード性能を向上させる前後オリジナルバンパー、オン・オフ性能をバランスさせた約30㎝アップのサスペンションキット、心地良い低音が楽しめる静香御前マフラーなどを装備している。

登山口というのは、かなりの確率でダート上にあることが多い。そんなシーンでも、TS7なら安心して走ることができる。また行き帰りの高速道路でも、ストレスを感じることはない。本格的なオフロードタイヤを装着しているものの、ノイズは最低限に抑えられており、ハンドリングやブレーキ性能も実に安定しているのが、アピオらしいチューニングと言える。

最近登場したオリジナルのECUをインストールすれば、さらにスムーズで快適なドライビングを楽しむことができる。ノーマルコンピューターのマップではラフになっている部分を丁寧に修正し、立ち上がり加速や高速加速を劇的に向上させている。ぜひインストールしていただきたいパーツだ。

多くの山道具をひと呑みにしてくれるジムニーの荷室。システマティックに積めば、使い勝手もアップ!

ジムニーの車内のユーティリティは、いまさら語ることもないと思う。セカンドシートの座面を跳ね上げれば、完全フラットなスペースが完成する。助手席を倒して、安眠できるスペースを作ることもできるので、現地に前入りして車中泊だっけ苦ではない。

一人、もしくは二人乗りと割り切れば、ラゲージスペースは実用性がグッとアップする。山道具は何かと点数が多く、しかも乱雑になりやすい。そこで僕は、車内後部に「つっかえ棒」を渡して使っている。こうすれば、ロープ類やギアを掛けることができる。カラビナや針金ハンガーを使えば、大抵のものをつっかえ棒に吊すことができる。

またクォーターウインドゥに吸盤式のフックを付ければ、そこにも小物などを吊すことができる。こうして整理をしておくと、アイテムがどこにあるか可視化でき、事前に準備をしておかなくても忘れ物がない。その日の天候や状況に合わせてアイテムをチョイスできるのだ。

山城に入る時の心得とは

山城は大抵、整備されていない山の中にある。夢中になって歩いていると、迷うこともあるのだ。

日本には百名城なんて括られてる城があるが、ほとんどが幕末まで残った城だ。つまり、徳川幕府によって「一国一城令」が出された後に残ったものである。戦国期にはひとつの国にたくさんの城があったが、徳川幕府によって廃城の憂き目に遭った。

今回訪れた岩櫃城や支城の柳沢城などもすべて廃城となった城で、決して石垣や天守閣がしっかりと残っているわけではない。そこが魅力なのだが。

こうした山城は、登山道も整備されていないことが多く、城趾には土塁や堀跡、曲輪跡が残っているのみで、時として藪っこきをしないと見つけることができない場合もある。

山城に入る場合は、GPSや地図、コンパス、そして縄張りを確認できる古地図などを用意していきたい。そうでないと、山で遭難することになる。

また400年以上経つ城趾は、文化財としても貴重だ。周辺でキャンプをしたり、火を焚いたりすることは御法度だ。古地図などを見ながら縄張りを確認し、様々な防御設備を目で楽しむ、というのが山城のたしなみ方なのである。

フィールダー最新号は絶賛発売中!

岩櫃城や柳沢城を探検したレポートは、フィールダー最新号をご覧いただければと思う。最新号は「日本探検」と銘打った特集を掲載。身近な場所で、思い切り非日常を楽しむ探検テーマがいっぱいだ。

中でも雑誌「岳人」でお馴染みの、狩猟登山家・服部文祥氏が岩殿山城の絶壁を懸垂下降する探検は、まさに圧巻のひと言。お手に取り、ご笑覧いただきたい。

今回は、岩場の初歩的な知識をお伝えした。ビギナーは、くれぐれも経験者と一緒に登るようにお願いしたい。昨今、岩場での事故が急増しており、岩櫃山でも死亡事故が発生している。しっかりと装備を整え、安全に楽しんで頂きたい。

<文/山崎友貴 写真/山岡和正>


※平成28年5月25日現在、岩櫃山・密岩通りルートは、安全確保のための整備によって一時通行止めとなっています。通行止め解除の予定は未定です。登山道情報については、東吾妻町観光協会(http://www.tohgoku.or.jp/~aysk/)にお問い合わせください。なお、頂上へは他のルートを使っても登ることができます。