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17.05.26

アピオTSジムニーのトリセツ[vol.5]サスペンションとチューニング前編

クルマを構成するパーツの中で、大切なのがサスペンションです。
サスペンションがなければ、クルマはまともに走ることができません。
今回はサスペンションの基礎知識と、そのチューニングについてお伝えしましょう。

<写真をクリックすると、拡大とキャプション表示ができます>

快適性と運動性能を生むサスペンション

ジムニーのサスペンションは、前後とも「3リンクリジッドアクスル式コイルスプリング」という形式。オンロードとオフロードでしなやかな動きを発揮し、丈夫なのが特徴です。

ジムニーのサスペンションの構造についてはvol1でもお伝えしましたが、もう一度おさらいしましょう。ジムニーのサスペンションは「3リンクリジッドアクスル式コイルスプリング」という形式です。

左は前後片側ずつのイラストになります。まずリジッドアクスル(車軸)式とは、左右の車輪が1本の車軸(アクスル)で繋がっているタイプのサスペンションを言います。これに対して、左右のタイヤがそれぞれ独立して動くサスペンションを独立懸架(インディペンデント)式と言います。

まず独立懸架式のメリット・デメリットについて説明しましょう。独立懸架式は、1本の車軸で左右輪が繋がっているリジッドアクスル式と異なり、左右のタイヤが独立して動きます。凹凸のある路面を通過する時、左右輪が別々で動くため、衝撃をよく吸収して快適性を発揮します。また路面追従性にも優れていることから、高い運動性能を発揮します。

またサスペンション自体が軽量に造れるため、さらに上記のメリットが高まります。サスペンションの構造物の重さを「バネ下重量」とも言いますが、バネ下重量が重いと動いた時の慣性モーメントが大きくなり、動きにくくなるわけです。軽ければ、モーメントが低くなり、よく動きます。また軽量化で運動性能が向上し、低燃費にもつながります。

一方で、独立懸架式は構造が複雑になりがちです。車輪を上下に動かすための基本パーツであるアーム、それに付随する、コイルスプリング、ダンパー(ショックアブソーバー)、そしてリンクなどいくつものパーツが必要になります。構造が複雑ということは、修理時の手間がかかり、またパーツのそれか1個が破損した場合、きちんと動かなくなるというリスクが高いということです。

またできるだけ軽く造るためにパーツ単体の強度がオンロードでの走行を主体に考えられており、障害物などにぶつけた場合に破損しやすいというデメリットも考えられます。さらに独立懸架式場合、サスペンションが動く量(トラベル量)がアームの長さで決まってしまいます。どんなに長いコイルスプリングとダンパーを装着しても、アームの長さ以上には動かないという特性があります。


独立懸架式サスペンションは乗用車やオンロード走行をメインにしたSUVなどに採用されていることが多いのです。

一方のリジッドアクスル式。アクスル(車軸)は、多くが頑丈な鋼の筒でできています。その中に車軸(ドライブシャフト)やディファレンシャルギアが入っているのです。この頑丈な筒ゆえに岩などにぶつけても、まず壊れるということはありません。丈夫な車軸を持っているので、対荷重性能(重いモノを載せてもそれに耐えられる丈夫さ)にも優れています。

また左右の車輪が1本の軸で繋がっているため、連動して動くというメリットがあります。これはオフロードで有利です。滑りやすい泥などの路面では、タイヤのトラクション(摩擦力)が低下します。リジッド式は片輪が少しでも持ち上がれば、シーソーの原理でもう1輪を下に落ち着けます。その結果、トラクションが高まるのです。オフロードを走るクルマにはうってつけです。

さらに独立懸架式に比べて構造物が少ないため、もし荒野のど真ん中でサスペンションにトラブルがあっても、比較的修理しやすいというメリットもあります。併せてメインテナンスもラクです。

さらにコイルスプリング、ダンパー、リンクの長さを変えれば、トラベル量を多くすることが可能です(これについては後述)。

デメリットはサスペンションの重量が重いことです。頑丈な車軸=重いということで、どうしてサスペンションの動きが緩慢になります。また燃費にも影響がないとは言えません。とは言え、ジムニーの場合はオンロードをスポーツカーのように走るクルマではありませんし、日常生活域では十分にキビキビと走ってくれます。

昨今、このリジッド式を使っているクルマは、非常に少なくなってきました。トラックやバンを除き、国産車ではジムニーとランドクルーザーシリーズくらいになってしまいました。ランドクルーザーも前のサスペンションは独立懸架式です。こうした変化の要因としては、クロスカントリー4WDがSUV化し、高速性能と快適性を重視するようになったからです。またトラクションコントロールなどの電子デバイスが進化して、リジッド式でなくても激しい悪路を走破できるようになったことも考えられます。

そういう観点で見ると、ジムニーのサスペンションは非常に貴重で、実は贅沢だと言えます。

サスペンションの各パーツの役割とは

ジムニーのリアサスペンション。左右輪をつなげるリジッド、スプリング、ダンパー、ラテラルロッド(赤)が見えます。

さて、ジムニーのサスペンションは「3リンクリジッドアクスル式コイルスプリング」だと先ほどお伝えしましたが、具体的にそれがどのようなサスペンションで、どういうパーツ構成なのかを見ていきましょう。

まず左右を繋ぐリジッドアクスル(車軸)があり、これにコイルスプリング(巻きバネ)が付いています。まずコイルの働きを考えてみます。皆さんはお買い物自転車に乗ったことがあると思いますが、MTBを除いて多くの自転車はサスペンションが付いていません。そのため、路肩の段差や凹凸路ではガタガタと大きく揺れて乗り心地が悪いはずです。

そこで考えられたのが、バネをつけて車軸を動かすということでした。当初はリーフスプリング(板バネ)でしたが、より動いてバネレート(反発力)の調整が容易なコイルスプリングが付けられるようになりました。スプリングは路面からの入力を吸収してショックを和らげてれるのです。

ところが、スプリングはある困ったことがあります。一度反発して動き始めると、当分の間伸び縮みを繰り返して、ビヨンビヨンと動き続けてしまうのです。トランポリンで跳ねると、すぐには止まりません。それと同じことです。

そこで考えられたのがダンパー(ショックアブソーバー)です。ダンパーをスプリングの縮む速度と伸びる速度を調整し、サスペンションの動きをより快適なものにしてくれるパーツです。例えば、高速道路を走行中に道路のつなぎ目を越えても、いつまでもボヨンボヨンしないのは、ダンパーがスプリングの動きを適度に抑えてくれているからです。

また同じ高さの段差を、高速で越えた場合と低速で越えた場合では、サスペンションのトラベル量が異なるのですが、これもダンパーの働きのおかげです。こうしたダンパーの働きを「減衰力」と言います。ダンパーをスプリングの動く量と動く速さを調整しているパーツを覚えてください。

さて、では3リンクの「リンク」とは何でしょうか? 長い棒を用意して、その中心を持ってみてください。棒(アクスル)の左右にまず、コイルスプリングが付いていると想像してください。コイルスプリングがボディに固定されています。この状態だと棒は前後左右に自由に動いてしまうわけです。それでは、上のボディに乗っている人はたまったものではありません。おちらこちらに揺れて酔ってしまいます。

またサスペンションが自由に動いてしまうと、ブレーキをかける度にボディが前にずれていくことになります。さらに駆動力(エンジンからの回転力)がボディ下のいろんな所で働くようになってしまうため、クルマの挙動の制御も難しくなってしまいます。

そこでダンパーを付けてコイルの動きを抑えてみました。大分改善されましたが、これでも棒はまだ多少、前後左右に動いてしまいます。できれば、サスペンションの動きを必要な方向にだけ動くようにするのが理想的なわけです。それには違う棒を付けて、アクスルの動きを支えてあげればいいのではないでしょうか。

この違う棒が「リンク」なのです。リンクはサスペンションの動きをある程度規制して、理想的と思える動きにしてやるパーツです。最初のイラストを見ていだければ分かりますが、フロントには後ろに向かって伸びている棒、リアは前に向かっている棒がそれぞれ付いています。フロントの棒は「リーディングアーム」、リアの棒は「トレーリングアーム」と呼ばれています(ラジアスロッドとも言います)。これは前後それぞれ2本ずつ付いているのです。リーディングアーム、およびトレーリングアームは車軸の前後位置を定めるためのリンクです。

では今度は上の写真を見てください。赤く塗られた斜めに付いている棒、これはラテラルロッド(パナールロッド)です。コイルスプリングが伸びたり縮んだりする時に、車軸が左右に動かないようにしているリンクです。

前輪後輪片側につき、アームが2本とラテラルロッドが1本。これで3リンクというわけです。ジムニーはアクスルが比較的軽いので3リンクで済んでいますが、より重量のあるランドクルーザーのリアサスペンションは計5本のリンクを使った「5リンク式」を採用しています。当然ながら構造物は少ないほうがいいわけですから、ジムニーの3リンク式はクロスカントリー4WDのサスペンションとしては、極めて理想的なわけです。

<次回Vol.6に続く>

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