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16.12.25

アピオTSジムニーのトリセツ[vol.2]フラットダートから始めよう

前回はジムニーの4WDの特性などについてご紹介したが
今回はいよいよオフロードの走り方について。
オフロードと一口に言っても、その路面状況はいろいろだ。
今回は入門編とも言うべき「フラットダート」の走り方について解説していこう。

[内容を予告と変更してお送りします]

ドラポジをオフロード用に調整しよう

通常のドライビングポジションよりも、若干前にシートを調整。ステアリングホイールは手前に引くような感じになる。

ジムニーが激しい地形のオフロードを走る姿は圧巻だ。そういうシーンを見たことのない人は「こんな場所をクルマが走れるのか!」と感動するはずだ。だが、いくらジムニーの悪路走破性が優れていたとしても、いきなり知識や技術なしでは不可能だ。オフロードを走るには、段階を踏んでテクニックを習得していく必要がある。

オフロードで最も難易度が低く、入門ステージと言えるのが「フラットダート」だ。ダートとはいわゆる未舗装路のことで、完全なオフロードではない。一応道はあるが、舗装されていない道路をダートという。その中でも比較的凹凸が少ないのが、フラットダートと呼ばれる。こういう道は、昨今では林業用の道「林道」にしか残っていない。

平らなら面白くない…というなかれ。舗装されていない道が、舗装路とこんなに違うのかというほど、走れば違いに驚かされるはずだ。クルマはタイヤと路面の摩擦μ(ミュウ)によって前進するわけだが、未舗装路ではこの摩擦μが極端に落ちる。通常のオンロードタイヤだとグリップ力やトラクションを失い、タイヤが空転したり、横斜め方向に滑ったりする。そういう状況を踏まえた上で、ダートは走らなければならない。

さてダートに入る前に、まずオフロード用のドライビングポジションというものを覚えておこう。通常のドライビングポジションだと、足を伸ばした時にブレーキやクラッチが踏める位置にシートを動かし、軽く手を曲げるくらいにシートバックとステアリングホイールの位置を調整するだろう。

だが、オフロードでは違う。激しい路面からショックを受けて揺れるオフロードでは、このポジションでは手足が操作系から離れてしまい危険なのだ。

握りは親指をステアリングホイールの中にかけない。足はカカトを床に付けて、しっかりとペダル操作ができるようにする。

まずシートの前後調整だが、ブレーキやクラッチを踏み込んだ時に、膝が曲がっている状態にする。ステアリングホイールは肘を曲げて握る感じで、どちらかというと大きなボールを抱えるようなイメージだ。

親指はステアリングホイールの内側に絶対にかけてはいけない。これは路面から衝撃がステアリングに伝わる「キックバック」によって、ステアリングが思わぬ方向に勝手に回転することがあるからだ。親指をかけていると、骨折する危険性がある。

親指はステアリングの上に軽く載せ、ハンドル操作は回す方向の手で下に下げるように引く。操作は送りハンドルが基本で、腕は交差させない。交差させないのも、キックバックで手を負傷する恐れがあるからだ。

足はカカトを床に付けて、激しい揺れの中でもしっかりとペダル操作ができるようにする。フラットダートではそこまでの揺れはないが、地形が荒れてくると、身体が浮くほどの揺れもある。

ちなみにオフロードに行く場合は、車内の小物類をしっかりとグローブボックスなどに入れて、大きな荷物ではタイダウンベルトやネットで固定しておこう。こちらも衝撃で跳ねて、場合によっては自分に向かって跳んでくることになるから危険だ。

いつ4WDに入れればいいのか?

道が舗装路から未舗装路に変わったら、そこでトランスファーを「4WD-H」にシフトしよう。

ジムニーオーナーでも、意外と4WDのスイッチを押したことがない…という人が多いと聞く。だからこそダートに走りに行っていただきたいのだが、「いつ4WDにすればいいのか?」という疑問が湧く人もいるだろう。

答えは簡単。舗装路から未舗装路に変わる場所で、4WD-Hのスイッチを押せばいい。4WDにすることで、4輪の駆動トルクが25ずつに配分され、摩擦μの低い未舗装路でも、比較的安定した走りをすることができる。

4WD-Hの場合、時速100km/h以下の直進状態であれば、走りながらシフトすることが可能だ。例えば、高速道路や一般舗装路を走っていて、急にゲリラ豪雨に見舞われたり、路面に積雪があったりした場合などに便利だ。いちいち停まらなくても、4WDにすることができる。

もちろんダートでも同じことが言えるのだが、オフロード全般に言えることだが、あえて一度停車しよう。さらに、クルマを降りて少し歩いてみることをオススメする。

オフロードドライブというのは、経験の蓄積が大切だ。歩いて路面を確かめ、その路面でどういうクルマの挙動になるのかを知っておかなければならない。またオフロードの場合は、5m先の状況がまったく違うことも度々で、勢いよく走っていると大穴が開いていたなんてことも珍しくないのだ。
インスペクション、いわゆる下見をして、それから4WDにシフトしよう。

ちなみに、前回もお伝えしたが、パートタイム式4WDの場合は、乾燥した舗装路では4WDを使用しないこと。タイトコーナーブレーキング現象によって、コーナーで転倒する危険がある。ただし、雨や雪が降った場合は積極的に使っていきたい。

ダートで出会う凹凸をどういなすか

クルマの轍や雨水の流れによってできる溝。基本は溝を跨ぐように走る。

ダートでまず出会うであろう路面の凹凸は、「溝」だ。溝はクルマの轍だったり、雨水の流れでできたものだったりいろいろで、その太さや深さも異なる。
舗装路でも溝はあるが、大抵は溝の中にタイヤを入れて走ることが多いだろう。だが、オフロードでは「溝には基本的に入らない」という鉄則がある。

溝に入るとまるでレール(軌道)の上を走っているようになり、ハンドル操作のいかんに関わりなく車両の進行方向が決められてしまう。それが道に沿っていればいいが、時としてあらぬ方向に行ってしまう場合がある。

また溝の中は雨水が流れるため、凹の下には石や泥が溜まっている場合が多い。これによりタイヤのグリップ力やトラクションが落ちて、走破力が低下するというのも溝の中を走らない理由のひとつだ。

ダートを走る場合は凹の部分を跨いで、タイヤを凸の部分にのせて走るようにするのが基本だ(右写真参照)。これのほうがコントローラブルなだけでなく、乗り心地も格段にいい。林道は大抵道幅が狭く、クルマが1台通るのがやっとという幅だが、この平らな凸の部分をタイヤが通るように、コース取りをしていくのが基本となる。

これは中級者以上向きのテクニックとなるが、下の写真のように時として轍が非常に深く、轍の中に入らないと前進できない…というシチュエーションが時として出てくる。

非常に深い溝で、道幅が狭く除けられない場合も林道ではあること。

こうした溝は路面が柔らかい土の場合がほとんどだ。クルマの通行によってどんどん削られて、このような深い溝になってしまう場合が多い。さらに溝には雨水が溜まり、底の部分は磨いたようにツルツルになっている。

とりあえずタイヤを溝の中に入れて、ゆっくりと進もう。タイヤが途中空転しても、アクセルを踏み込むことなく、静かに進んでいこう。もしタイヤが空転したら、ハンドルを山側に軽く切って、タイヤの角(ショルダー)から横(サイドウォール)が溝の中の壁に当たるようにしてやると、トラクションが得られて前進できる。あまり切りすぎると、かえって抵抗になり前進できない。

もしそれでもタイヤが空転してしまい進めない(スタック)場合は、数メートル後ろにバックして、多少を勢いを付けて前進するとそこを乗り越えられることが多い。ただし、それもあまり勢いを付けすぎると、溝を乗り越えてクルマが大きく跳ねてしまう場合があるので注意しよう。

何か現れたら、とにかく減速&一時停止

林道には様々な「障害物」がある。大したことがないと思って通過すると、意外なダメージをこうむることになる。

林道を走っていると意外と出くわすのが、段差だ。特に多いのが、道を跨ぐように設置されている排水溝や雨水誘導板。こういった排水溝の前後は、雨水やクルマの通行によって削られていて段差になっていることが多い。

その段差を無造作に通行すると、クルマが跳ねてかなり大変なことになる。乗員もさることながら、積んでいる荷物も大きく跳ねることになる。排水溝のみならず、段差を見つけたら十分に減速して、ソロリソロリと通過するようにしよう。

排水溝同様に注意したいのが、水たまりだ。よくSUVのCMなどでは、勢いよく水たまりに入って派手な水しぶきを上げていることが多いが、これは百害あって一利なしの行為。

ブレーキはローターの部分が水に濡れてしまうと、一時的に制動力が落ちるという弱点がある。特にジムニーの場合はリヤブレーキがドラム式で、ドラム式は内部に水が入るとブレーキシューの摩擦力がほとんどなくなってしまう。

またしぶきをあげるとエンジンルームにそれが入り、泥水で汚れて後が大変になる上に、場合によっては電気系統のトラブルを招きかねない。

舗装路よりも制動力が欲しいオフロードで、ストッピングパワーの喪失は命取りだ。水たまりを見つけたら、こちらも手前で十分に減速し、ソロリソロリと通過しよう。

大きな段差は斜めに進入する

道の状況によっては、大きな段差を越えなければいけない状況も出てくる。こういう時は、まっすぐに進入せずに、斜めにアプローチするのが基本だ。

フラットダートとは言うものの、道に大きな段差があって、それを越えなければいけないシチュエーションも出てくる。こういう場合、クルマをまっすぐに進入しがちだ。だが、段差が小さければ問題なく乗り越えられるが、段差が大きいとクルマが前に進まなくなる場合がある。

これは前2輪が同時に段差の壁にぶつかり、前進する力がかえって打ち消されてしまうからだ。またまっすぐ進むと、クルマのアプローチアングルという対地進入可能角度を超えてしまい、段差が車両前部の下に当たってしまうこともある。

ラクに進めて、しかもアプローチアングルを越えないようにする走り方が、段差に対して斜めにゆっくりと進入するということだ。これなら1輪は登る一方で、もう1輪は下りる、もしくは平坦部を進むという状況になるため、前進しやすくなる。また段差を越える時のショックも小さく済む。

またアプローチアングルの点でも、斜めで進入することで対地角度が小さくなって、車両下部に当たりにくくなるというわけだ。ただし、斜めにアプローチする場合には気をつけないといけないことがある。

段差が大きいと、装着されているサスペンションの伸縮幅、とくに伸び側の長さを超えてしまうと、タイヤが浮いてしまう。初めて体験すると、実にヒヤッとするものだ。4輪のうち、1輪が浮いているなら問題はない。だが、対角線上の前後輪が同時に浮いてしまうと、ジムニーのようなトラクションコントロール機能を持たないパートタイム式4WDは、前進することができない。

これは前後に付いているディファレンシャルギヤの機能ゆえだ。ディファレンシャルギヤ、いわゆるデフは、クルマが曲がる時に内輪外輪の回転差を吸収する役割を持つということは前回ご紹介した。

外輪が多く回れば、内輪差を吸収してスムーズに曲がれるようにギアで調整している。ところが1輪が空転してしまうと、デフのギアが回転差を吸収しすぎて、もう1輪は完全に停止してしまうのである。

前後同じ側の片輪ずつが接地していれば、片輪走行状態で進むことができる。だが、前後の対角線上のタイヤが空転してしまうと、残りの2輪が接地していても完全停止で前に進めなくなるのである。これを「対角線スタック」と呼ぶ。センターデフやトラクションコントロールを持っていないパートタイム式4WDの弱点なのである。

この対角線スタックを防ぐには、「3輪接地」と言って、常に4輪の内の3輪を接地させながら進むというテクニックを使う。もし対角線のタイヤが浮いてしまったら、あわてずにゆっくりと後退するか、車両を揺らしてタイヤを接地させるようにすれば脱出できることが多い。

意外と恐い急な坂道

濡れた下りの坂道は、前輪に荷重が集中するために操舵が利かなくなる。

頻度は少ないが、林道でお目にかかるシチュエーションのひとつが、急な坂道だ。小石が浮いているような坂道ならまだマシだが、場合によっては氷のように磨かれた土の坂道、という場所もある。だが、たかが坂道と侮ることなかれ。実は坂道は恐い場所なのである。

平らな場所を4WDが走る場合は、4輪それぞれに駆動力が均等に伝わる。エンジンの力が100とすれば、1輪につき25ずつの駆動力が伝わることになる。これはタイヤが路面に均等に接地している、という条件においてだ。

ところが坂道だと上りは後輪に、下りでは前輪に荷重が移動する。つまり登りでは前輪の接地が希薄となり、下りでは後輪の接地が希薄になる。つまり、接地が希薄になったタイヤの駆動力は25以下になるため、せっかく100あるエンジンのパワーは生かし切れない状態になるのである。

だが本当に恐いのは、操舵輪への荷重過多だ。上りの場合は操舵輪である前輪への荷重が減るので、まっすぐ登っていかないという事象で済む。だが下りの場合は、前輪への荷重がかかり過ぎになるために、操舵が利かないだけでなく、前輪タイヤのトラクションが性能オーバーとなって停まらないという事象まで起きてしまうのだ。

4WDの場合は、とくに後ろから押そうとする力が働くため、ハンドルを左右に切ってもあらぬ方向に進んでしまう。場合によっては山側の壁にぶつかったり、谷側に落ちてしまうこともある。

こういう事象は雨に濡れたツルツルの土の坂道や、雪や氷に覆われた坂道の場合だが、砂利の急坂でも十分に注意しておきたい。

こういう場所を下る場合は、まずハンドルをまっすぐにする。そして坂道の上で停車をして、4WD-Lに入れよう。トランスミッションは1速か2速にして、エンジンブレーキを使いながらゆっくりと下っていく。恐いからといって、途中で急ブレーキをかけたり、急ハンドルを切ってはいけない。途端にクルマがあらぬ方を向き、場合によっては車両が後ろ向きに回転したり、最悪の場合は横転してしまう。

もしもスタックしたなら

スタックして前進もバックもできなくなった場合は、「揉み出し」というテクニックを使おう。

未舗装の林道はクルマが楽に走れるようには造られていないため、4WDでもスタックしてしまうことがある。昨今のSUVにはトラクションコントロールが付いているので脱出も容易だが、ジムニーは操作を楽しむクルマなので、自力で脱出しなければならない。

まずスタックしたら、アクセルをすぐに戻して、落ち着いて元来たラインに向かってバックしていこう。ハンドルを切って、違う方向に行くのは、基本的にNG。スタックしたポイントに何らかの要因が潜んでいるわけで、そこまでは進めたわけだから、後ろには戻れるという理屈だ。戻れたら、スタックした場所を避けて、再度前進を試みよう。

次に前に行っても、バックしてもタイヤが空転してしまう場合。ハンドルを少しだけ切って、アクセルを静かに開けて前後進できないかを試してみよう。ダメな場合は、ハンドルをまっすぐにして、前後にタイヤが数㎝でも動くなら脱出の見込みありだ。

まず動く所まで静かに前進をして、タイヤが空転したら、すかさずバックギヤに入れて後進。またタイヤが空転したら、すかさず1速に入れて前進。これを繰り返していると、振り子運動が大きくなって、スタックの要因となっているポイントを抜けることができるのだ。このテクニックを「揉み出し」という。

これは雪道などでも有効なテクニックなので、ぜひ習得してほしい。

ちなみに、前にも後ろにも1㎜も動かない…ということであれば、これは重度なスタックだ。スコップを使ってバック方向の段差を削ってやり、路面をできるだけ平らにしてあげよう。それでも脱出できない場合は、他車で牽引するしかない。1台の時は、それなりの経験と知識がないと脱出は難しい。

つまり1台で出かけるのは危険だということだ。林道はめったに他車が通らないことが多く、携帯電話も通じにくい。最悪の場合、何㎞も歩かなければ帰れないということになる。

ちなみに林道でスタックしやすい場所は、路肩だったりする。路肩は土が軟らかく、トラクションが得にくい。さらに落ち葉などで側溝が隠れていることもしばしばだ。ノーマルタイヤはオフロード性能がほとんどないため、こうした路面が柔らかい場所が苦手なのである。路肩にはできるだけ近づかないほうが無難だ。

無理をしないのがオフロード走行の鉄則

オフロードではライトを点灯させて、他車に自分を位置を知らせるようにするのがマナーだ。

今回は、ごくごく基本的なフラットダートの走り方をご紹介したが、まだドリフト走行など覚えておきたいテクニックはある。これは機会を改めて、ご紹介していきたい。

オフロード走行で覚えておいていただきたいことは、「舗装路よりも危険が高い」ということである。オフロード走破性を高めている、アピオTSジムニーと言えども、難度の高い場所では転倒もあり得る。すべては操る人間次第ということだ。

もし林道を走っていて「これはちょっと進めないのでは…」と不安に感じたら、無理をしないですぐに戻ろう。これは安全に楽しくオフロード走行を楽しむ奥義。

それと、林道は遊ぶための道ではないということも、十分に理解しておきたい。あくまでも林業用の道路であり、一般車は便宜的に通行させてもらっているに過ぎない。場所によっては林業関係者以外は通行禁止の道もある。

通る時はスピードを十分に落とし、道を傷めないように走行しよう。またヘッドライトを点灯させて、他車やハイカーに自分の位置を知らせるというのも、走行時のマナーのひとつだ。

<文/山崎友貴、写真/山岡和正、取材協力/笠倉出版社フィールダー編集部>

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