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森の光と黒蔵の旅 / 写真家・瀬尾拓慶
VOL.010
林道の崩壊と黒蔵
林道の崩壊と黒蔵

台風の影響は山奥に出ていた。
看板たちが行く手を阻む。
この林道も、しばらくは通行不可能なのだろう。

アスファルトが削り取られた林道

相棒の黒蔵(ジムニーシエラ)のアクセルを踏みながら、いつものように美しい林道の姿を思い描いていた。
当たり前のように通ることができ、路肩には細くも繊細で多様な植物を育てている小川が流れているはずだ。
あの木にはまだリスはいるだろうか。
林道を抜けた先では。いつものように村が見渡せるはずだ。
そう思っていた。
さて、もうしばらく走れば林道への入口がある。
ドキドキと高鳴り始める心臓の強さを感じながら、いざ林道に突入すると。
崩壊していた。
表面のある程度整っていたアスファルトは破壊されるどころか、その下の土も30cm-100cmほど林道全体に渡りえぐられていた。
つい二週間前まではこんな状態ではなかった。
唖然として、車を降りて歩いてみる。
無理をすれば通れるだろうが、表層の下がなくなって橋のようになっている場所もある。
落とし穴だらけの林道になっていた。
明らかに水が流れた後だ、何があったのだろう。
つい数日前に日本にを襲った災害、台風の存在を思い出す。
近隣の住民の方々にも確認した結果、やはり台風による大量の水が流れ込んだらしい。
この辺り一帯がそうだったとのこと。
他の林道は?この他の線ももしかしたら、、、
そう思うと、いてもたってもいられずに確認のため車を走らせた。

今まで普通に通れていた橋(?)は無くなり、川が出来ていた。

同じ地域も、その他の地域のよく訪れる林道も何日かに分けて確認しに行った結果。
ほとんどの林道が崩壊したようだ。
「全面通行止め」「この先崩壊のため通行不可」様々な看板が目に入ってくる。
いつのまにか林道フリークと化していた私にとっては、あまりにも残念な光景だ。
林道は村と村をつなぐ存在でもあり、生活を支えている大切な存在でもある。
地域の方々にとっては、より甚大な被害なのだろう。
自然災害の圧倒的な脅威と恐ろしさを垣間見た気がした。
最も印象的だった光景は、川の形が変わっている、もしくは川のラインが増えていることだ。
大雨のあとは、それまで普通に通れていた場所が川になっていることがあったが、ここまでの変化を見た事がない。
人がどれだけ対処しようと、自然の力はその上をいく。
川と共に生活している方の話を聞いたが、この2〜3年の間で自然との付き合い方が変わってきたという。
特に今年は濁流になっては収まりかけ、また濁流になるを繰り返していたそうだ。
今後更にこれは酷くなってくるだろうが、それは仕方がない事として関係を変えて行くしかない、と。
これらの話を聞いて、私は主に自然を撮影している写真家として、これからの時代の流れを残していかなければならないと心の深い場所に刻みつけた。

美しい紅葉

散々自然は恐ろしいと痛感させられた後だが、自然は何も変わらず美しいと思えている。
いつもどのような時でも、その素晴らしさが衰えることはない。
少しずつ終わりに近づいている秋の紅葉を見ていてもそう思う。
季節は巡り、また冬が来る。
きっと雪崩も起きるだろう。
大量の雪が今年もどこかを襲うかもしれない。
そう。自然は常に変わり続けてはいるが、大きな流れで見ると何も変わらずに時の流れにその身を任せているだけなのだ。
これからも今までと同じように、何も変わることなく変化を続けて行くのだろう。

荒れ果てた林道に思いを馳せていると、「ピーーーッ」っという鹿笛が聞こえた。
きっと、彼らにとっては林道がどうのこうのなんて関係ないのだろう。
どんな場所にでも獣道を作って、自由気ままに自分たちの歩む道を築き上げている。
そんな姿を見ていると、林道云々で一喜一憂してしまう自分という存在の小ささが見えてきてしまう。
森へ行く事ができるのは、林道があるからというわけでもないのに、と。
色々なことを考えすぎてしまう今日この頃ではあるが、自然との関係を考え直す良いきっかけになった。
林道の撮影はこれから先も続けていこうと思っている。
林道を補修してくださっている方々には本当に感謝しています。
どっちにせよ、そろそろ冬になって林道が閉鎖されてしまう。
その前に、行けるだけ行っておこう。
ちなみに、崩壊した林道にトライしたいという気持ちは無きにしも非ず。
皆様もご無理はなさらないように、お身体を大事に林道生活を送ってください。


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