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森の光と黒蔵の旅 / 写真家・瀬尾拓慶
VOL.009
黒蔵と夕暮れの村
黒蔵と夕暮れの村

誰も知らない光を見つけたい。
だから、旅に出るのだろう。

林道入り口にある、動物侵入防止ゲート

いつまでたっても、この冒険心が消えることは無いだろう。
目の前にあるゲートをしげしげと眺めながら思う。
この鈍く光る閂(かんぬき)を外すと、『ギキイイイイ・・・ガシャ』と怪しい音が響くと共にゲートが開く。
さあ、どんな発見があるのか。
もしかしたら、連日の雨でどこかが崩れているかもしれない。
今まで見たことのない動物が姿を現すかもしれない。
様々な可能性をイメージしながら、心の高鳴りに従順に従う。
黒蔵(ジムニーシエラ)を四輪駆動に切り替えると、新しい冒険の扉へと乗り込んでいった。

林道の隅に飾られていた鹿の骨

すぐ近くには人里があるというのに、少し林道を進んだだけで全くの異世界となる。
薄暗い林道は、不思議なぞわぞわとした感覚を呼び起こす。
どんな発見があるかと期待していたが、その日は鳥の声も聞こえない程森は静かだった。
すれ違う車もなく、この森には自分一人だけがいるような錯覚を覚える。
目を凝らし動物を探すが、鹿の一鳴きすらも聞こえてこない。
エンジンを止めて、おもむろに外に出ては耳を澄ました。
なんとなく落ち着かない。
風もあまり吹いていないようで、自分の息の音がやけにはっきりと聞こえた。
しばらく走っていると、林道の傍に鹿の頭部らしき骨が飾られているのを見つける。
一瞬目を疑い外に出て確認をしたが、状況からするときっと誰かが見つけて置いたのだろう。
わざわざここに飾るのは趣味が良いとは言えないが、特別な何かを見つけたような、なんとも言えない気持ちになった。
持って帰ろうかとも思ったが、さすがにそれは気が引けた。

運転席から見た林道

運転席からみる林道の景色というのは、慣れてきてしまうと正直そこまで代わり映えがないように感じてしまう。
周りは木に覆われていて、遠くを眺めるビューポイントが頻繁にあるわけでもないので、気にせず流して運転をしてしまうとあまり面白くはない。
しかし実際には、先ほどの鹿の頭部のように多くの変化や発見が隠れている。
湿度が多い森独特の光の美しさもある。
そんな、代わり映えがあまりないけれど変化に富んだ森の林道を私は愛してやまない。

夕暮れの村

しばらく林道を走ると、集落や村に出る事がある。
通り過ぎることは簡単だが、そこであえて興味を向けて、迷惑になる行為は避けつつ写真を撮らせていただいていると、時々その土地の方から声をかけてもらえる事がある。
時には果物をいただいたり、その土地の秘密やら、情報を沢山教えてもらう。
この林道を何に使っているのかと聞くと、新しい道路ができたのであまり使われてないといったケースも多々あった。
森と人の関係の変化は実に興味深い。
森の中の事も、森を取り巻く環境も、自分は知らないことばかりだとよく実感させられる。
何も考えずにただアクセルを踏んで過ごすだけだと、何も、発見する事ができない。
それこそ、どれだけ遠くまで移動しようとも同じ風景に見えてきてしまう。
様々な細かい変化やその土地の特徴を見つけるように車を走らせると、湧き上がる冒険心に応えてあげる事ができる。
この狭い国は、どこよりも本質的な美しさに恵まれているように思える。
もう少ししたら、黒蔵と共に秋の訪れを感じさせてくれる森へ訪れてみようか。
物思いにふけっていると、やがて美しかった夕日が村へと優しく夜を呼んできた。
さあ、今日もどこか寝る場所を探しにいくとしよう。

※当ブログの写真は、様々な場所を混ぜております。
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霧と村
少しダサいスコップがかっこいい黒蔵
削り出しのトンネル
美しい夕日と木々
林道の横を流れる川