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ダートトリップ@Let's go 4WD
VOL.003
ダート トリップ Vol.3
ダート トリップ Vol.3

雑誌『レッツゴー4WD』とのコラボレーションで掲載中の「ダートトリップ」。
ジムニーで林道をドライブしながら観光スポット、グルメを探す旅の模様をご紹介。
今回、山崎&山岡のマウンテンペアが向かったのは、南会津。
今回も例のごとく珍道中が繰り広げられておりました。

かつては秘境だった南会津

南会津町にある茅葺きの「前沢集落」。小勝入道沢西という安土桃山時代の武士が、ここに移り住んだことから始まる。明治に集落ごと火事になってしまったが、江戸時代と同じ造りに戻したのだという。

この取材に出かける前には、大抵僕と撮影担当の山岡巨匠との間でひと悶着ある。林道をどこにするかでだ。動画と違い、雑誌の誌面はビジュアルのインパクトが大切だ。静止状態の写真だけに、やはり行ってみたくなるような景色をどう切り取れるかに、僕ら作り手もこだわっている。

ただ編集者目線とカメラマン目線が必ずしも同じとは限らない。

今回もいくつかのロケ場所がアイデアとして出たが、結果的に南会津方面と決まった。どういうわけか、山岡巨匠は南会津方面が大好きだ。まあ、いい林道があるのも確かだが、やたらあの地方に行きたがる。実は、巨匠は平家の落人の子孫なのではないかと思っている。

南会津地方は最近でこそ、かなり道路インフラが整備されて行きやすくなったが、かつては陸の孤島だった。源氏との戦いで逃れた平家の残党は、現在の鬼怒川温泉あたりに身を潜めた。ところが源氏の追討士に見つかり、さらに山深い地まで逃げ落ちたと言われている。

ある一族は湯西川温泉、ある一族は檜枝岐に逃げたと言われている。この地域には平家の子孫であることを伺わせる「平野」や「伴(漢字をばらすと“平人”となる)」といった姓の家が多い。

また檜枝岐に多い「星」姓は、藤原金晴が住み着いたのがはじまり、「橘」姓は織田信長に追われた楠助兵衛橘好正の子孫と言われる。つまり、南会津地域はそれほど昔は僻地だったということだ。

巨匠も愛媛・松山近くの出身だから、きっと屋島やら壇ノ浦あたりで敗れた平家の子孫なのではないかと思う。まるで野武士のような風貌だから、きっと先祖は坂東武者をバッタバッタと切り伏せていたのではないかと、勝手に僕は思っている。

都内からジムニーTS4で約4時間。僕らは日本の原風景が広がる南会津へと入った。

南会津は林道だけでなく蕎麦天国でもある

今回食したのは、前沢集落のすぐ近くにある「蕎麦処曲家」。細打ちの蕎麦はのど越しも心地いい。

最初のアタックルートである「広域基幹林道七ヶ岳線」に行く前に、まずは腹ごしらえをすることにした。南会津と言えば、やはり蕎麦だ。朝晩の寒暖の差が激しいことから、この地方では良質で美味な蕎麦の実が採れるという。

蕎麦が現在のような麺になったのは室町時代末期のことで、庶民に広まったのは安土桃山期だ。うどんはすでに1300年代には麺だったというから、蕎麦の方が後だったことになる。関西を中心に「砂場」という蕎麦屋があるが、これは大阪城築城の際の砂置き場で、職人達を相手に商売をした店だったと言われている。

本来、そば粉はそばがきにしたり、大福のような菓子にして食すのが一般的だった。共に手がかかるために、あまり日常的な食事ではなかったようだ。蕎麦が麺になってからは急速に庶民に広がり、とくに忙しい江戸の庶民に人気があった。よりのど越しのいい二八蕎麦なんてものができたのも、江戸でのことだ。

ちなみにだが、四国は讃岐うどんが有名だが、彼の地の人々はうどんを咬まずに丸呑みするから驚かされる。僕などはうどんも蕎麦もどうして咬んでしまうのだが、粋な蕎麦の食べ方というのはちょっと咬んで蕎麦の甘みを楽しみ、ズズッと飲み込んでのど越しと香りを楽しむらしい。

昔、神田あたりの老舗で、蕎麦にちょこっとワサビを載せて、そのままズズッと飲み込んだらむせて酷いことになった。それ以来、野暮でも僕は蕎麦を咬んで食べるようにしている。

南会津の蕎麦は、細打ちの田舎蕎麦で、コシは意外と控えめ。そのためか、殻を練り込んだ田舎蕎麦でも、すっと喉を通る。ツユも想像以上に辛めで、藪蕎麦のような感じだ。蕎麦もラーメンと並んで好みがあるので一概には言えないが、美味い部類だと言えるだろう。ただ、コシを求める人には何となく物足りない蕎麦かもしれない。

南会津は蕎麦の聖地だけあって、なんと13軒もの蕎麦屋が点在している。ツユは少しづつ味が異なるが、麺はどれも似ている。まあハズレはないと思うので、とりあえず見つけた暖簾をくぐってみてはどうだろうか。

台風の傷跡が未だ消えぬ南会津

広域基幹林道七ヶ岳線に入って早々に、大規模な土石流の跡に出会う。南会津の山や河川は、まだまだこうした被害を復旧できていない。

お腹を空かせて眠い山岡巨匠もだが、自然はつくづくアンコントローラブルだと思う。広域基幹林道七ヶ岳線にジムニーTS4が入った直後に、河川でひどい土石流の跡に出くわした。一昨年、関東・東北地方に豪雨をもたらした台風18号の被害だという。南会津では平野部の河川も氾濫したらしく、来る途中もやたら重機が河川敷に入っていた。

この被害のおかげで七ヶ岳を迂回するように走る七ヶ岳線は、林道富貴沢線の分岐までしか通行できなくなっていたのである。何とも嫌なスタートとなってしまった。まさか一昨年の台風被害で、まだ通行止めとは思わなかったのである。ちなみに、この旅と前後して行った別な林道取材でも、台風被害で通行できないというアクシデントに見舞われた。

昨今の日本を遅うスーパー台風のせいで、どうやら日本の林道はズタズタになっているようだ。お出かけの際は、管轄の役場か農林事務所に通行が可能か確認することをおすすめしたい。

さて、それでも七ヶ岳線はフラットで穏やかなダートで、まあ2WDでも走れるくらいであった。七ヶ岳の自然は実に豊かで、美しい広葉樹林が目に飛び込んで気持ちがいい。途中、何カットか撮影をしながら南会津を堪能していたら、あっと言う間に林道富貴沢線分岐に着いた。

林道富貴沢線入口はチェーンがかかっているので、一度これを外し、車両を入れて再度かけるという仕組みだ。この林道はさらに素晴らしく、今回の旅のハイライトスポットと言ってもいい。チェーンの所から数メートル走ると、いきなり牧場のような風景が広がり、鋏山を見ながらのドライブはオーストラリアかと錯覚するほどだ(冒頭の写真)。

本誌にも書いたが、ここは山菜を有料で採らせるワラビ園で、この日は営業していなかったが夏場は何かと人が多いようだ。通行時には、安全に留意していただきたい。

さて、気持ちのいいドライブを楽しんでいたマウンテンペアだが、この後にとんでもない悲劇が待ち構えていようとは知るよしもなかった。道は一度舗装路になり、T字交差点で左折すると引き続き久戸沢線に入ることになる。数㎞走ったところで、さらにダートが二手に分かれた。ここの判断が一生の不覚だった。

どう見ても右手の方が轍が深かったため、そちらが本道だと思って進んだところ、何だか藪がどんどん濃くなっていく。やがて藪とは言えない状態になってきた。巨匠が「ヤバくね?」と言ったものの、もはや後の祭り。路肩から伸びきった樹木が道を覆い、まるでジャングルクルーズだ。「もう道が見えない…」と思いジムニーを降りると、向こうからバイクの音が。セローに乗ったおじさんが来たので、この先の状況を聞いてみた。

「引き返した方がいいよ〜」と言うのでそうしたいのだが、もはや後退もままならぬ。こうした時の僕というのは、自分でも驚くほど身代わりが速い。「やっぱり、巨匠は林道慣れてるじゃ〜ん。だから〜、任せたっ!」と言って、ジムニーと巨匠をとっととおいて、元来た方向で誘導に徹することにしたのである。

そんなヘタレの誘導などいらんとでも言うように、巨匠は灌木など構わずガンガンバックしてくる。枝がイヤな音を立てて、ジムニーを容赦なく傷つける。うへ〜、これは河野社長に言い訳するのが大変だ。でも、ぜーんぶ巨匠のせいにしちゃおうっ〜と。

結局、そのまま巨匠の運転で久戸沢線まで戻り、無事一般国道へと戻った。

都会にはない宝物がいっぱいの南会津

玉川林道の冷湖の霊泉付近。ここの水が、すごく美味い。コーヒーを入れても最高だろう。

小さいけれど、料理も風呂も良かった温泉民宿(本誌参照)でゆっくりと休んだ僕らは、南会津エリアで残りの半分の林道をアタックしに出かけた。途中のコンビニで、巨匠がお約束のハイチューを購入する。今日は珍しく、1個くれるという。「ハイチューくれないって、ネットの記事でディスられるからな」と、野武士みたいな顔をして限定リンゴ味のハイチューをほおばる巨匠。

国道289号線を挟んで、南には七ヶ岳線、北には玉川林道と大窪林道がある。これが南会津の3大林道だ。この玉川林道と大窪林道を周遊するというのが本日のプランなのだが、行ってみると玉川林道は災害復旧工事で途中通行止め。大窪林道もその影響でゲートが閉まっていた。

近くの畑小屋林道からアプローチを試みるが、ここも無情にもゲート閉鎖。大芦の集落を過ぎて、北側から玉川林道にアプローチしたが、通行止めを知らせる看板が国道に立っていた。ちょうど、県庁の人らしい男性がいたので聞いてみたら、途中までは入れるという。せめて冷湖の霊泉という湧き水でも飲もうと思い、とりあえず入っていくことにした。

だが、行ける区間はわずか数㎞。冷たく美味い軟水をがぶ飲みしたところで、今回のダートトリップは終了した。

実は南会津にはまだまだ凄い林道がある。中には20㎞をゆうに越える林道もあり、これもまたおもしろい。最終的には檜枝岐まで行けるのだが、この林道はまた機会を改めてご紹介することにしたい。

この夏もぱっとしない天気が続いているが、それでも南会津は実に美しい土地だ。勤勉な人たちが造り上げた美しい里山と自然の光景、そして素朴な鄕土料理の数々。都会の人間がとっくに失ってしまった「宝」がいっぱいあるのだ。夏休みを利用して、ぜひ南会津に行ってみてほしい。貴方もきっと癒やされるはずこと間違いなしだ。

<文/山崎友貴、写真/山岡和正>

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