JIMNY LIFE ジムニーをとことん楽しむ僕らのライフスタイルマガジン JIMNY LIFE ジムニーをとことん楽しむ僕らのライフスタイルマガジン

CATEGORY MENU

ダートトリップ@Let's go 4WD
VOL.006
幾多の蒼に溶け込む日
幾多の蒼に溶け込む日

伊豆はかつて「林道天国」と言われた場所である。
だが'80年代、'90年代のクロカン4WDブームの過熱によって
多くの林道が通行止めとなってしまった。
最終回は、伊豆でも希少となったダートを走る。

希少となった「走れるダート」

林道土肥中央線は、西伊豆の中でも最大級の林道。ただ舗装化が進み、現在ではダートは約2㎞。

「冬はどこの林道も雪で通行止めだし、伊豆でも行きますか」そんな僕の言葉から始まったラストトリップ。1年間に渡って各地の有名ダートを旅してきたが、JB23/43型ジムニーの生産終了に伴って、今回で1回幕を閉じる。


思えば、1年はあっと言う間。第1回の春の静岡県林道に始まり、ラストもまた静岡県。今回はかつて林道天国との誉れ高かった西伊豆へ向かう。すっかり自分の手脚となったアピオTS7のエンジン音も高らかに、東京から約3時間、沼津ICから伊豆中央縦貫道へ。修善寺温泉の手前から、国道136号に入って土肥方面に向かう。


国道の峠付近を越え、大きな鉄橋を越えてしばらく走ると、左折できる細い道がある。ここに入り、しばらくすると「林道土肥中央線」が始まる。西伊豆でも希少となってしまった、一般車走行可能な林道だ。

早春の林道は、樹木が冬枯れしていて明るい陽光に満ちている。夏よりもかえって明るい雰囲気だ。

林道土肥中央線は年々舗装化が進んでおり、残されたダート区間はわずか2㎞ほど。それでもオフローダーたちは、この貴重で美しい林道が走りたいがために遠方からやってくる。人工林に囲まれていることが多い林道だが、土肥中央線は沿道に落葉樹が続く。樹木に葉がないため、道に陽光が入り、実に開放的な気分で走ることができる。


路面状況はほぼフラット。2WDのままで、軽くテールスライドしながら走るのも楽しい。時折路上にこぶし大の石が転がっていることがあるので、シャシーへのヒットには気をつけたい。


途中、西方面に駿河湾が見える絶景スポットがある。ここで、買ってきた「いのしし最中」を頬張りながら、しばし春の海の光に酔いしれる。林道の神様こと山岡巨匠は、いのしし最中の佳味にご満悦の様子だ。やはり遠回りをしても、最中を買ってきたのは正解だった。

青空と海に囲まれて上機嫌ドライブ

開けた所は、杉を伐採してそのまま放置されている山。美しいが、落石などに注意したい。

土肥中央線のダート区間が終わって、一度舗装路に出るが、すぐに左手に支線である「林道上池線」に接続ポイントが表れる。この林道のダート区間は約6㎞と長く、今度は走り甲斐もありそうだ。


この道はかつては林業で盛んに使われていたようだが、山肌の杉はほぼ伐採してしまったようで、斜面に切り株がたくさん残っている。それがまたアートのようで、美しい景観を織りなしていた。

さらに途中で富士山や南アルプス、再び駿河湾が望めるポイントがあり、いやが応にもテンションが上がっていく。ここのところ低気圧が列島を覆い、すっきりしない天気が続いたが、今日の天気は最高だ。幾多の蒼が目まぐるしく車窓を過ぎて、やがてジムニーは溶け込んでいった。

林道上池線は落石が多い。難度は若干上がるが、常に注意して走行すれば問題ない。エアロパーツを装着しているSUVなどは注意したい。

この辺りはかつて海の底だったためか、地質が弱いようだ。斜面の岩盤は崩れて、道を塞ぐように岩が崩れている箇所がある。加えて、道は溶岩質の小さな石が転がり、ノーマルタイヤでは少々手強いかもしれない。


幸いにもTS7には、ジオランダーのM/Tが装着されているため、力強くそれを乗り越えていくことができる。林道を走るには、やはりクルマの装備も大切だということを実感する瞬間だ。TS7はマッドテレーンタイヤを装着しているだけでなく、約30㎝の車高アップ、ジオメトリーの適正化も行われている。そのため、こうしたダートはものともしない。


これまでも、もっとハードなオフロードを走破してきたが、本当にいいマシンだと再確認した。残念ながらJB23/43型は2月いっぱいで生産を終了するが、まだまだ中古車は豊富にあるので、これらをベースにTSシリーズと同じチューニングをするのは楽しそうだ。また、新型ジムニーへの期待も同時に高まる。フロントサスペンションが独立懸架になるかが注目どころだが、とりあえずラダーフレーム構造は踏襲したようなので、悪路走破性は落ちていないのだろう。

ジムニーのトリップは続く

林道の終盤は人工林へ。ここにも支線がいくつも走り、それを丹念に走破するのも楽しい。

上池線もいよいよ終盤に差しかかり、山腹のトラバースコースから人工林へと入る。この辺りの杉はそろそろ伐採の時機が近づいているようで、林の間には新しい林道も築かれていた。今宵の宿は、土肥温泉。時間は午後4時、そろそろ山を下りるにはいい時間だ。


さて1年間にわたってお送りしてきた「ダートトリップ@レッツゴー4WD」。雑誌「レッツゴー4WD」とのコラボレーションで、関東甲信越の林道レポートをお届けしてきたが、今回でとりあえずシーズン1は終了。


日本各地で徐々に姿を消しつつある「走れる林道」だが、まだまだお伝えしたい魅力的な林道はある。林道走行の魅力はなんと言っても、自然懐深く入ること。そして、日本の四季が体感できることだ。その一方で、危険も存在する。昨今の自然災害により道は時として崩れ、高度なオフロードテクニックや知識、道具がなければ走破できない場合もある。


それゆえ、多くの皆さんに林道走行を体験していただきたいが、危険があるということも理解していただきたい。前述したように、タイヤひとつにとっても、ノーマルタイヤでは心許ないことも少なくない。スタック脱出やパンク対策、緊急時の連絡手段など、いろいろなことを十分に準備して、林道走行に臨んでいただきたい。また、できれば単独で林道に入るのはリスクがあるので、複数台数でお互いをリカバリーできるようにして走っていただきたい。


いずれ近いうちにお会いできると思うが、その時までTSシリーズのキーをOFFにしておくことにしよう。1年間のご愛読に感謝です。

<文:山崎友貴、写真:山岡和正>

コラボ『レッツゴー4WD』も発売中!

国内唯一の4WD総合誌「レッツゴー4WD」の最新号は880円(税込)で発売中!

VOL.6コラボ連載中の3月号は「ヨンクカスタムinJAPAN」と題したカスタマイズ大特集。最新4WD・SUVトピックと共に、2018年最新のカスタム情報をお届け。ほかに話題のピックアップトラック「ハイラックスとタコマの比較」やRAYS発ホイールブランド「チームデイトナ」を完全ガイドした別冊付録も同梱。本誌取材の裏側やイベント告知など、「ヨンクの今」についてはレッツゴー4WD公式Facebook)でも発信中。