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日本再発見ジムニー探検隊
VOL.027
大人が楽しい栃木縦断ドライブ
大人が楽しい栃木縦断ドライブ

「栃木県は名所・名物がない」と世間では言われがち。
でもそんなちょっと地味イメージの栃木を、われらジム探は大発掘。
河野隊長の第二の故郷でもある同県には
大人のハートをゲットするスポットやソールフードがいっぱいだった!

画像をクリックすると拡大&情報が見られます(スマホ、タブレット一部機種を除く)。

両毛地区のソールフード「いもフライ」

おおつか商店のいもフライは、佐野市民にとっても二大巨頭なんだとか。

河野隊長はサラリーマン時代に栃木県に赴任していたことから、かなりこの県に思い入れがある。だが、都民の多くが東京タワーに行ったことがないのと同様、栃木県人時代に行きそびれた場所がかなりあると言う。後にご紹介するスポット「大谷資料館」をぜひに訪れたいということから、今回の探検企画はスタートした。

南北縦に長い栃木県は、関東と東北の境目にあたる場所だ。その栃木の玄関口と言えるのが、佐野市である。佐野厄払い大師やラーメンで有名なこの土地で、昨今名物とされているB級グルメがある。それは「いもフライ」。数年前から「佐野市だけの食べ物」として、声高に名乗りを挙げた。

これには他の地域の県民から異論が続出しているようで、群馬県人までブーイングをする始末。その真相は?…ということで、調べてみたところ、こんな説が一般的なようだ。佐野市はかつて繊維業が盛んな地域で、若い女工さんたちが多く働いていた。その女工さんたちのおやつとして、リヤカーで売り歩いたのがいもフライだったらしい。行田市の「ゼリーフライ」に由来が似ている気がしないでもない(Vol.1をご参照ください)。その後、リヤカーの行商は佐野市外にも広がり、両毛地区全域にいもフライは広がっていったというのである。

いもフライは一見すると、サイコロ切りにしたジャガイモを串に刺してパン粉を付けて揚げているように見える。たしかにパン粉を付けて揚げるものも存在するようだが、多くのいもフライはお好み焼きの生地のようなものを付けて揚げているんだとか。

市内には40軒以上のいもフライの店が存在するようで、「いもフライの会」なる組織に所属している店だけでも23軒。この中からよそ者の僕らが旨い店を探すのは大変なので、素直にいもフライの会に電話してみた。“佐野市民の誰もがおいしいと思っている店を教えてください”。電話に出たアンニュイな声のおばさんが「おおつか商店か、江原商店だね」と言うので、今回はおおつか商店をチョイスしてみた。

佐野ICからジムニーで10分くらいの所にある「おおつか商店」。いわゆる駄菓子屋さん。佐野市堀米町1126

おおつか商店は小学校の前のある駄菓子屋さん。遊びの途中で買い食いできる子どもの聖地なのだろう。中に入ると、商品点数が少なくてちょっと寂しい雰囲気。一般の駄菓子屋さんと違うのは、店内の一角に立派な厨房があること。壁を見ると、「いもフライ」「イカフライ」」「アメリカンドッグ」といった揚げ物メニューの札が貼られている。

早速、愛想のいいおばさんにいもフライを注文した。「何本ですか?」と言われて、今回のメンバーである隊長、山岡C、僕に各1本の3本でいい…と心の中で思ったのだが、フライヤーに火を入れるのに1本60円×3本では悪いと思い、つい5本頼んでしまう小心者な僕。

時間は午前11時半、しかも外気温はかるく35℃。探検のためとは言え、この状況でちょっと揚げ物を食べるのは気が進まない。例え、パンシロンを飲んでもだ。隊長と山岡Cは、口にこそ出して言わないが「なんで夏に揚げ物なんだよ〜」という思念波を送ってくる。

「みなさーん、いもフライですよー」と明るく振る舞いながら、2人に強引に串を握らせた。何度も言うが、佐野市内はすでに35℃。直射日光を浴びながらいもフライを口に入れる…。旨い! 衣がパン粉と違ってしっかりした食感があり、たっぷりと漬けてあるソースとジャガイモ、そして衣のハーモニーはなかなかのもの。これで60円は安い。

ソースは佐野市で製造される「ミツハソース」や「マドロスソース」を使うのが一般的らしいが、今回のいもフライに使われているのはどちらなのかは分からなかった。だが、酸味が爽やかで食欲が減退しがちな夏でも結構いける。時間があるなら、このいもフライマップを見ていもフライ巡りをしてみるのもおもしろい。

佐野を全国区にしたラーメンブランド

佐野ラーメンの超人気店のひとつ「万里」。佐野市高萩町437-7

佐野と言えば、やはり押しも押されぬラーメンの町だ。佐野ラーメンの特徴は青竹で打った平麺だが、最近では細麺や中太麺なども多くなっているようだ。スープもコクのある醤油が定義だったが、やはり最近では豚骨や塩などバリエーションが増えているんだとか。

僕はラーメンジャンキーというわけではないが、佐野まで来たのだからやはり素通りするわけにはいかないだろう。すでに、いもフライで満腹中枢に打撃を受けている探検隊面々。特に僕はいもフライを2本食べてしまった。しかも外気温はどんどん上昇している。よく、この記事の読者さんから「いつも楽しそうでいいですね!」と言っていただけるのだが、時として食べ物取材は過酷だ。

市内は多数のラーメン店があり、「さのラーメン会」に所属している店だけでも69店舗。いもフライ同様、この中から旨い1店舗選ぶのはtoto BIGを当てるくらいの確率だ。そこで知り合いのラーメンマニアに相談したところ、「評価が高いのは“利休”だけど、おもしろいのは“万里”かな」という答え。“おもしろい”というワードがアンテナに引っかかり、万里をチョイスしてみた。

ベーシックな「ラーメン」は600円。不思議な食感はクセになるはず。

上の写真を見ていただけると分かるが、店は県道沿いにあるごくごく普通のラーメン店。特にオーラが出ているような雰囲気もない。国道沿いや県道沿いにはラーメンハウスとカテゴライズされる飲食店がよくあり、中には「うえ〜、何だこのスープ」なんて店も多い。店構え=美味さではないものの、ちょっと不安にある。

3人で店に入ると、昼時ということもあり満員。でも、佐野でこれだけ満員になるのだから旨いのかもしれない。店の壁には、なぜか野球選手の色褪せた写真が多く飾られている。後で知ったのだが、万里は西武ライオンズや巨人で活躍した小関竜也氏の実家なんだとか。

メニューはいくつかあるが、一見なので素直に「ラーメン」を頼む。600円という値段は、都内の相場を考えるとリーズナブルと言える。10分待つと、澄んだスープのラーメンが運ばれてきた。麺は佐野ラーメンのプロトコル通りの平打ち縮れ麺。“うーん、ちょっとお腹いっぱい”と思いながら、スープを一口。江戸だしのようなあっさりとした味で旨い。太い麺を一口。「こ、これは!」と栗田ゆうこばりのリアクションを思わず取ってしまう隊長と僕。

平麺は一見すると腰が強そうなのだが、食感はワンタンに似ている。麺の端はフワフワと柔らかく、中央になるにしたがって腰が強くなっていく。何とも不思議な味わいで、“次々とすすりたくなる!”である。さっきまで「いもフライの10分後にラーメン???」とブーイング気味だった隊長と山岡Cにも好評のようだ。

チャーシューもトロッとしていて絶品。腰のないラーメンはダメという人には厳しいが、わざわざ行って体験に値する味だ。さのラーメンマップもリンクしておくので、参考にしていただきたい。

動物に餌やりたい放題のB級スポット

ライオンなどの猛獣以外は餌があげられる宇都宮動物園。隊長はちょっと腰が引け気味。

お腹もいっぱいになったところで、探検隊はジムニーをさらに北に走らせる。夏の栃木は気温が非常に高くなる上に、山からの寒気が入り込んで突然の大雨になることがしばしば。この日も、宇都宮市内に入った所で、突然のゲリラ豪雨。道は川のようになり、さながらラリーレイド状態だ。ジムニーは4WDなので安心と言えるのだが、半端じゃない雨なので安全のためにコンビニやファミレスなどでしばしの雨宿りをおすすめする。

さて次に向かったのが、僕が大プッシュしたい「宇都宮動物園」。名前を見ると市立のように思えるが、れっきとした私設動物園なのだ。怪しげなオブジェの前にジムニーを駐めて入口に向かうと、いかにもB級スポットというオーラが充満している。普通の感覚の人であれば、まずここで帰りたくなるはず。でも、動物好きなら迷わず入ることをオススメする。

この動物園は決して規模は大きくないのだが、旭山動物園の生態展示にも劣らぬ面白さがある。それはトラやライオンの猛獣類以外のほとんどの動物に、餌がやりたい放題なのである。これは全国の動物園の中でもちょっと珍しい特徴だ。園内には駅にあるパンの自動販売機のような機械が置かれていて、100円を入れると紙袋に入った餌が買える。

象だってロバだって、何でも“入れ食い状態”。動物好きにはたまらない。

紙袋の中にはニンジンやキャベツ、カボチャなどを切ったものが入っている。これを自由に動物たちに給餌できるのである。動物好きにはたまらない。平日ということもあり、動物園はほぼ「ジムニー探検隊ご一行様」貸し切り状態。お客がいない=動物は空腹なので、僕らが歩いていると動物たちがわらわらと通路寄りにやってくる。

「象に餌付け自由なんですよ!」と僕が興奮気味に隊長に伝えるのだが、どうも他のふたりはイマイチのテンション。隊長と山岡Cを尻目に、象にご飯をあげてご満悦の僕。「象の鼻息くっせー」と言いながら、テンションMAX。

キリンだって、もう入れ食い状態。大型動物に直接餌をあげる機会などそうそうないのだが、どうも隊長と山岡Cはクールだ。“一緒にあげましょうよ”と完全にアガリ気味なのは僕だけ。キリンが長い舌で手をなめた時には、もはや天国状態。「いやー、これまでの取材で一番の笑顔ですよね」と言う隊長と山岡Cの嫌みもものともせず、僕は次々に動物にご飯をあげて宇都宮動物園の王様気分だ。

全国には経営難の動物園が数多くあるようだが、こうして動物と自由にふれ合えるなら餌代くらい惜しくないというファンも多いはず。園内にはゆるーい雰囲気の遊園地も併設されており、こちらもファミリーには楽しいスポット。ワケのわからないお城などもあり、とにかくB級感炸裂の宇都宮動物園だが、僕個人としてはアブトレーニングの中澤選手ばりに推薦させていただきたい。

栃木は餃子も旨いが蕎麦も旨い!

宇都宮市民に愛されている「香蘭」の餃子(250円)。

動物との触れ合いを満喫し、探検隊は一路今夜わらじを脱ぐ、いやサイドブレーキを引く宇都宮市街へ。宇都宮と言えばまず思い浮かぶのが「餃子」だ。残念ながら王座を浜松市に奪われてしまったが、かつては餃子の消費量日本一の都市。何で宇都宮が餃子の町なのか諸説あるようだ。まず宇都宮に駐屯していた陸軍十四師団が満州に出兵し、本場の味を宇都宮に持ち帰ったという説。第二に宇都宮が小麦と白菜の産地だったことから、餃子の材料に事欠かなかったという説。

さて宇都宮で二大餃子人気店と言われているのが、「みんみん」「正嗣(まさし)」。「みんみん」は県外にもその名を轟かせている有名店だから、ご存じの人も多いだろう。具は非常にあっさりとした味で、何個でもいけそうな反面、ニンニクの味がほとんどしないのでパンチがないとも言える。パンチを求めるなら「正嗣」だろう。野菜が多く甘みがあるが、ニンニクの味もしっかりとしていて、白いご飯に実によく合う。地元でもみんみんより正嗣の人気が高いようだ。

そんな両店の陰にありながら、地元民に根強い人気を博しているのが「香蘭」だ。香蘭は半世紀近くの歴史がある、みんみんと並ぶ老舗だ。だが、2008年に後継者がないことから惜しまれながらも一度店を閉めている。香蘭の復活を願う市民と店を継ぎたいという現オーナーの出現により2011年に復活。市民の舌を喜ばせている。

僕も閉店前に一度訪れたことがあるのだが、みんみんの餃子をひと皿食べた後だったのに、とにかくその旨さに感激したことを覚えている。宿が香蘭のすぐ近くだったこともあって、隊長、山岡Cと連れ立って店に向かう。新しい店はピカピカだったが、餃子の味は昔のままだった。山岡Cは水餃子も頼んでいたが、やはりジューシーな焼き餃子が旨い。パリパリの皮で小ぶりな餃子は、ビールのつまみに最高。

今日はハンドルを握らないこともあり、隊長とふたりで生ビール&餃子フェスティバル。お酒を飲まない山岡Cには申し訳ないが、やはり餃子とビールはジムニーにトツゲキマフラーくらい切っても切り離せない名コンビだ。

さて、餃子をたらふく食べたので、普通の人ならここで宿にでも戻るかとなるところだが、底なしの胃袋を持っているのが探検隊員だ。あまり役に立たないトリビアだが、河野隊長は大の蕎麦好きだ。おそらく、1か月1日1食蕎麦でも大丈夫だと思う。林道旅の取材でも、必ずと言ってほど蕎麦を食べている。きっと隊長の前世は「そば清」だったに違いない。

そんな隊長が「栃木県ってそば処だって知ってます?」と言う。長野や上州がそば処というのは知っているが、栃木というのは聞いたことがない。ところがところが…である。なんと栃木は、全国のそば生産量ランキング(平成23年)で、なんと8位に入るくらいにそばを育てているのだ。ちなみにお米も8位(平成24年)、小麦にいたっては何と全国3位(平成20年)を誇る。実は栃木は全国でも有数の日本人の主食を供給してくれる農業王国だったのである。おそるべし栃木。

「蔵」のざるそば&田舎そばの盛り合わせ。田舎そばが絶品! 宇都宮市泉町7-13

そば清隊長は、どうしても蕎麦を食べないと気が済まないご様子なので、隊長が探し出した「蔵」という店へハシゴ。その名の通り、明治時代の蔵を改装した雰囲気満点のそば屋で、震災で一度は店が壊れたものの見事復活を果たした。開店ぴったりの午後6時30分にのれんをくぐる。

まずは酒とつまみでウォーミングアップ。いや、ウォーミングアップは餃子か。いもフライ、佐野ラーメン、餃子、そばって、どれだけカロリーを摂取しているのか恐ろしい。しかも、ボツになった野菜コロッケや後に紹介する栃木レモンも摂取していたりする…。

さて、いい感じで酔ったところでシメのそば。店のおすすめで、細打ちのざるそばと、太打ちの田舎そばをせいろに盛ってもらうことにした。ざるは十割とは言え、のどごしのいい上品なそば。隊長と僕がハートをゲットされたのは田舎そばの方。どちらも挽きぐるみなのだが、乱切りのほうがより蕎麦の香りが引き立ち、非常に香ばしい。そばつゆも薄めで、鰹だしの香りがわかりやすい。餃子よりもそば派という方は、訪れる価値ありの名店だ。

<その2に続く>