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ジム知る
VOL.003
ジム知る 第3回:なぜジムニーはいまだリジッドアクスル式サスペンションなのか
ジム知る 第3回:なぜジムニーはいまだリジッドアクスル式サスペンションなのか

オフロード4WDが独立懸架式サスペンションを使うようになって久しいですが、ジムニーと言えば頑なにリジッドアクスル式サスペンションを使い続けています。その理由と、タイプ別のサスペンションの特徴について触れたいと思います。

文・山崎友貴 
写真・山岡和正
画像協力・スズキ自動車,トヨタ自動車

サスペンション形式で異なるクルマの“味”

4輪独立懸架式サスペンションの車両イメージ

現代のクルマに求められる性能としては、「動力性能」「快適性」「環境性能」が挙げられると思います。オフロード4WDは80年代以降、その性能を乗用車に近づけるべく進化してきました。その結果、ひとつのカタチとして昇華したのがSUVです。

とくにサスペンションの性能向上は目覚ましく、SUVの中にはサーキット走行をラクラクこなすモデルも少なくありません。こうしたSUVは、そのほとんどが4輪独立懸架式サスペンションを採用しています。

いわゆる「独懸式」と呼ばれるもので、地形に合わせて4本のタイヤが個別の動きをするのが特徴です。つまり凹凸のある道でも、それに左右されにくく、理論上は車内が一定の位置にあるために乗員が快適に感じるというわけです。

また構造は複雑でも、1本のタイヤを支える機構の重量は軽くなります。そのためバネ下重量の軽量化ができ、タイヤの路面追従性が向上。結果、運動性能もアップして、スポーティな走りになるわけです。

四輪駆動車、オフロード4WDと言われるタイプのクルマは、Jeep MB/フォードGPW以来、リジッドアクスル式サスペンションを使ってきましたが、運動性能や快適性を向上させるために、常に進化してきました。

Jeep MB/フォードGPWの時代から久しく使われてきたのが、リーフスプリングのリジッドアクスル式です。リーフスプリングは鋼でできた板を重ねてバネにしたもので、いわゆる「板バネ」と呼ばれています。板バネは馬車の時代から使われてきた伝統的な衝撃吸収装置で、構造が単純で修理も容易です。

現在のサスペンションの多くは、タイヤが意図した通りに上下運動をするための位置決めをするため、リンクと呼ばれるパーツが使われています。「3リンク」「マルチリンク」という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。

しかし、リーフスプリングのリジッドアクスル式サスペンションにはリンクはありません。なぜなら、リーフスプリング自体がリンクの役割をしてくれるからです。構造物を大まかに見てみると、リーフスプリングのリジッドアクスル式にはアクスル(ホーシングとも)とリーフスプリングしかありません。そのため修理が比較的容易で、仮にリーフスプリングが1枚折れたところでも、簡単なリカバリーで走行を続けることができるのです。

さらに、車体(上)からかかる荷重、路面から入ってくる衝撃(下)を分散・吸収する役割がアクスルだけではなく、リーフスプリングにも分担させられます。往年のオフロード4WDユーザ−がリーフスプリングを賞賛するのは、路面から強い衝撃でもダメージを受けることがほとんどないからです。リンクなどの構造物が増えれば増えるほど、障害物にヒットする率が高まり、破損などをしてしまうと走行不能に陥ってしまうのです。

リーフスプリングに弱点があるとすれば、それは動きの悪さです。板状のバネなわけですから、細かい入力(ハーシュネス)を吸収するのが苦手で、反発力が強いため乗り心地が堅いと感じてしまいます。そこで考えられたのが、コイルスプリングへの変更です。

コイルスプリングはバネレートの設定が容易で、しかも初期入力への対応という点では優れたバネです。タイヤの位置決めをするのに、リンクの追加が必要ですが、より正確な脚の動きを設定することが可能になります。オーソドックスなコイルスプリングのリジッドアクスル式サスペンションの場合、コイルスプリングでアクスルを吊り下げ、位置決めに2本のアームと1本のラテラルロッドを使います。これが3リンク式で、まさにジムニーのサスペンションがこれです。

オフロード4WDのサスペンションはさらに進化し、フロントにはダブルウイッシュボーンの独立懸架式サスペンションを使うモデルが増えていきました。独立懸架式サスペンションは「ダブルウイッシュボーン」と「マクファーソンストラット」がメジャーですが、オフロード4WDでダブルウイッシュボーンを使うのはマクファーソンストラットよりも耐衝撃性に優れているからです。

操舵性を決める前輪に独立懸架式を使い、荷室に荷物を積んだ時の耐荷重性を考慮しなければならない後輪にはリジッドアクスル式を使う。そんな設計思想の車種が増加していきますが、その後4輪独立懸架式のSUVに押されて、こうのようなタイプのサスペンションを使っているのは、トヨタ・ランドクルーザーくらいになってしまいました。

ちなみに、荷台に重い荷物を積む可能性があるピックアップトラックは、フロントはダブルウイッシュボーン、リアはリーフスプリングのリジッドアクスル式を使っています。

ジムニーのサスペンションは本格オフローダーの証し

ジムニーのサスペンション

では、ジムニーはなぜ3リンクのコイルリジッドのサスペンションなのでしょうか。改めて、その利点について説明したいと思います。まずリジッドアクスル式は、左右のタイヤがホーシングという鋼のケースに入った車軸で繋がっています。ホーシングは非常に丈夫で、大きな岩などにぶつけても、滅多なことでは破損することがありません。

頑丈であることは、路面からの衝撃に強く、耐荷重性能という点でも優れていることを示しています。もちろん、リンクを破損する可能性はありますから、無敵ではありませんが、剛性が高いという点では間違いありません。

さらにリジッドアクスル式には、オフロード走行時に大きなメリットがあります。摩擦係数の低いオフロードでは、タイヤが路面を掴み、駆動力を路面に伝え前進する「トラクション」が重要になります。

リジッドアクスル式はアクスルという1本の軸で左右のタイヤが結ばれているため、1本のタイヤが凸路面で、持ち上げられると、シーソーのようにもう1本のタイヤは下に押し下げられます。このテコの原理により、すべてのタイヤに効率よくトラクションが生まれるため、悪路走破性が高いわけです。

また上がったタイヤ側のコイルスプリングの取り付け部を支点にしてアクスルが上下するため(スプリングの伸び量も加えて)、アームが短い独立懸架式サスペンションよりもサスペンションのトラベル量が大きくなります。つまり、より路面追従性が高くなり、大きな凹凸のある道での走破性につながるわけです。

バネ下重量が重くなり、高速域での路面追従性、快適性という点では劣るリジッドアクスル式ですが、いまだジムニーが使う理由はオフロード性能を重視しているからです。

さらにジムニーの性能をアップさせるAPIOのサスペンション

リジッドアクスル式サスペンションはバネ下が重く、ドタバタした脚の動きになる…というのが多くのユーザーの評判でしたが、昨今はジオメトリーの設定、コイルスプリングのバネレートセッティング、無駄な脚の動きを抑制するスタビライザーのセッティングによって、リジッドアクスルのオフロード4WDでも“普通”に乗れるようになりました。

しかし、ノーマルのサスペンションに不満を抱く人も少なくないと思います。まず、見た目にロードクリアランスが少なく、あまり迫力がありません。乗り心地も汎用性を考慮したため、オンでもオフでも中途半端な感じがします。オンロードではコーナーでのロールが大きく、オフロードでは脚の伸びが少ないのです。

そこで、アフターパーツの登場です。ジムニーのサスペンションチューンには、大きく2つのメニューがあります。まず、コイルスプリングとダンパーのみを交換するというメニュー。この場合、トレーリング&リーディングアーム、前後ラテラルロッド、ブレーキホースはノーマルを使うため、リフトアップ量に限りがあります。APIOでは20㎜アップの商品が用意されており、いわゆる“チョイ上げ”ができます。

アピオ製 H.Dアーム

もっと上げたい、オフロード性能をアップさせたいという人には、40㎜アップのサスペンションキットも用意されています。“上げるとオンロード性能が不安”という向きもあると思いますが、14段階の減衰力調整が可能なダンパーが付属している上に、スプリングのバネレートも十分に考慮されているため、マルチパーパスな使い方が可能です。

ちなみにオフロードを本格的に走りたいという人は、サスペンション交換だけでなく、アームの交換もオススメです。純正のアームは鋳物のため、剛性が低く、障害物にぶつけると曲がったり折れたりすることがあります。アームが破損してしまうと、その後の自走が難しくなるのです。

APIOのアームは剛性が非常に高い引き抜き炭素繊維を使ってできており、安心してオフロード性能ができます(純正ブッシュで装着が可能)。前後アームを交換することで、バランスの取れたサスペンションにすることができます。

またフロントのダンパーブラケットも純正では強度に不安が残るため、オフロード派なら交換がオススメです。こちらもAPIOで強化パーツが用意されているのでチェックしてみてください。

H.D フロントアーム(リーディングアーム)
H.D リアアーム(トレーリングアーム)
フロントショックブラケット補強プレート
リアショックH.Dスキッドガード