雑誌『ジムニー・スーパースージー』に連載中の『林道パラダイス』との連動企画。
連日の猛暑に辟易していた2024年の8月、涼を求めて箱根山と富士山周辺の林道をナローシエラで巡ってきた。
旅の一部を動画にしたので併せてご覧いただければと思う。
Photo & Text : 赤ぞう
1968年神奈川県生まれ。成城大学卒。日本ジムニークラブ神奈川支部所属。ブログがきっかけとなり2011年からジムニー・スーパースージーに林道ツーリング記の掲載が始まる。著書は「ジムニー林道アドベンチャー」(SSC出版)。千葉県房総半島の林道沿いの家に暮らしながら、日本中の林道を旅することを楽しみとしている。愛車はナローシエラ。
<YouTube赤ぞうチャンネル>
早朝に自宅を出発。
相模湾を左手に眺めながら西湘バイパスを西へ進む。真鶴道路、国道135号と走り継ぎ、県道20号で熱海峠を越えて県道11号に入った。まずは林道箱根山線。本線はアスファルトで舗装されていたので下り方向へ続く脇道に入ってみる。コンクリートで舗装されていたが落ち葉や土砂が積もっていて土道のような感じだ。枝分かれする道は多かったがどれも行き止まりばかり。まるで迷路のような森を楽しませてもらう。簡易舗装に堆積した黒土はとても滑りやすく、ゆっくり走っていたのにカーブで滑走。危うくコースアウトしそうになった。本線に戻り北上して原生の森公園に立ち寄る。休憩がてら池の周りを散策。水面に映り込む木々が美しく紅葉の季節に訪れるのも良さそうだ。本線を進んだ先の林道中尾線の入口には「石畳の史跡保護のため国道1号線への通り抜け厳禁」との看板があった。通り抜けられなくても石畳を見たい衝動に駆られ入ってみる。
ところが1kmほど行くと関係者以外立入禁止となり石畳を見ることなく引き返すことになった。戻る途中で函南原生林の案内板が目に留まる。江戸時代から禁伐林として保護されてきた原生林とのこと。息を深く吸って森の空気を味わい一休みする。再び本線を進むと右に曲がる方向に砂利道を発見。この林道庚申松城山線はこのエリアで最初の非舗装路だ。やっぱり林道は舗装されてない方がいいなぁと嬉々として進んだのも束の間、1km弱でアスファルト舗装になってしまったが駿河湾を見渡す広々とした耕作地帯に出た。道路脇には純白のテッポウユリが咲き、舗装だろうが砂利道だろうがどっちでもいいという気持ちにさせてくれる。
昼飯に立ち寄ったのは三島スカイウォークだ。
日本一長い400mもの歩行者専用の吊橋だそうだがこの日は富士山が霧の中。有料なので吊橋は渡らずに三島コロッケカレーを食べる。外はサクっと中はクリーミーなコロッケで旨い。三島馬鈴薯を使っているそうだ。次の林道は国道1号線を左折して入った林道北箱根山線。こちらも舗装された林道で狙いは脇道だが通行禁止が多かった。それでも規制のない脇道もあり片っ端から入ってみる。
1本目は凸凹のある急勾配でタイヤが空転。登り切ることができずに断念する。2本目はコンクリート舗装された脇道で登り詰めたところで行き止まり。3本目はコンクリート舗装の狭い道を下って行くと舗装が途切れて赤土系の道となった。雨が降り出しそうな16時過ぎ。下ったところで通り抜けられる保証はない。抜けられない場合、戻ってくるには登り坂となるが、滑って登れそうもないので引き返すことにした。4本目は山の神の案内板に従って左折。少し下ったところにあった山の神を参拝して旅の安全を願った。その先は極狭のコンクリート舗装の下り坂。土砂が堆積して滑りやすい道を慎重に下っているうちに薄暗くなり雨が降り始める。地図上では麓まで通り抜けられるはずだが行く手を阻む倒木があった。手に負えそうもなく引き返すしかない。道幅が狭くてUターンできずに延々と後退。ようやく見つけた僅かなスペースで身を乗り出すように路肩を凝視して切り返しているとアブが顔面を襲ってきた。追い払うため首を振った瞬間に右前タイヤが脱輪。路肩から落ちてしまった。脱出しようと後退すると後輪も滑り落ちて車体は大きく右に傾く。降りしきる雨の中で状況を確認。幸いにも左前方にウインチアンカーとなる立木があった。電動ウインチのワイヤーを引き出してシングルラインでセッティング。ワイヤーを巻き上げていくと何とか脱出でき助かった。
アブに襲われたぐらいで動じてしまった自分に「まだまだ半人前」と苦笑しながら本線まで戻り、立派に舗装された林道和田線で下山。予約しておいた駒門の宿へ向かったのだった。
翌日は山中湖畔でJCJ神奈川支部の仲間と合流。
この日はジムニー4台(JB23、JB64×2台、JB74)でのツーリングとなる。
まず目指したのは大平山。かつては荒れており滑って登れないような悪路だったが、この日は砂利が敷き込まれていたので驚くほど呆気なく山頂まで到達できた。富士山も臨める場所なのだが霧で真っ白。まあ登頂できただけでも良しとしよう。次に向かったのは立ノ塚峠。ここでJB23にトラブル発生。フロントが駆動しなくなったのだ。このJB23にはリヤに機械式のLSDが入っているので何とかなるだろうと後輪駆動のままツーリングを敢行。ところが峠手前の急勾配で難儀して何度アタックしても登り切れない。前を走るJB64にクッションロープを繋いで牽引してみたが、坂の途中からは発進すらできずにJB23を引っ張り上げることができなかった。仕方なく2台とも坂の下まで後退。助走を付けて勢いを殺さず牽引することで峠まで駆け登ることができた。改めて四輪が駆動してくれるありがたさを実感する。峠から先は藪が茂っていて車両が通った形跡もなかったのでUターンして下山。JB23の下に潜り込んでトランスファーを確認すると枝にでも引っ掛けたのかコネクターが外れていた。コネクターを差し込んで四駆ボタンを押してみたが四駆には切り換わらない。内部の導線でも切れているのだろうか?引き続き二輪駆動で頑張ってもらうしかない。ちなみにナローシエラにはトランスファーガードを装着してあるので安心だ。
この日の昼飯は名物の「吉田のうどん」。立ノ塚峠の麓にある「渡辺うどん」で太くてコシのある「肉玉冷やしつけうどん」をいただく。食後のデザートには「八海とうふ」の豆乳ソフトクリームも食べてご当地グルメを味わった。
腹を満たしてから向かったのは林道滝沢線。
富士山の五合目まで通じている林道に県道701号からアプローチする。舗装されていて道幅も広いせいかクルマ通りが多く先行車に追従してゆっくり登って行くと下界に山中湖が見えてきた。標高が上がるにつれて窓から入る風がひんやりしてくる。ところが標高1800mに達した辺りでゲートは閉ざされていた。五合目までの直線距離は2kmぐらいだが通らせてもらえない。引き返し始めると雨が激しく降り始めた。立ち寄るつもりだった新奥山神社奥宮の参拝は諦めて下って行くと砂利道を見つけて左折。看板には林道侭下線とある。枝道も探索しながら西へ進むと馬返まで通じていた。続いて走った林道富士線は舗装路。雨は止んでくれたが富士山は雲に隠れて見えないままに西へ進む。ここでも脇道へ入ってみたが難所があると二輪駆動のJB23はスリップして登れなくなりクッションロープで牽引。同じ場所でナローシエラも二輪駆動を試してみると同じく登れない。でも四駆にシフトすれば簡単に登ってしまう。そんなことをしているうちに日が傾いてきた。林道富士線の延長は長くまだ続いているがもう時間切れだ。舗装された林道大和田線で下山して、この夜に行われるJCJ神奈川支部の総会へと向かうことにした。
今回参加のジムニーのうちトランスファーにガードを装着していたのは2台。その必要性を思い知った未装着のジムニーもこれを機にガードの装着を検討するようだ。なお後日分かったことだが、JB23が四駆に切り換わらなくなった原因はバキュームホースの劣化だったことを付け加えておこう。