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12.08.06

【番外編】ゼッケン:104 ドライバー:篠塚建次郎 / ナビゲーター:千葉栄二

ゼッケン:104
ドライバー:篠塚建次郎 / ナビゲーター:千葉栄二(写真)

※TEAM APIOではありませんが、番外編として同じジムニーでの参戦する篠塚健次郎・千葉栄二組をご紹介。

零戦とヘルキャットの戦い

鮮やかな “エンドレス・ブルー” に塗り上げられたジムニーシエラ。ともすれば僕にはこれがアメリカ軍のネイビーブルーに見えてくるのだが、その理由は後で触れるとして、ここではダカールの覇者が乗るマシンを簡単にご紹介しておこう。

“シノケン” こと篠塚建次郎さんは近年、ラリーモンゴリアではカミオンバレー(リタイア車回収車)を務めるなど、オフィシャルサイドの参加が目立っていた。が、楽しげに戦い続ける 尾上さん vs 菅原さんを見てガマンしきれなくなったのだろう。 ついに選手として参戦することになったのだ。

このマシンは出場ジムニーの中で唯一シエラをベースにしたものだ。エンジンはエスクードのG16Aエンジンに換装されており、排気量は1.3リッターから1.6リッターにアップしている。これはもともとアメリカで発売されていたサムライ用に流行ったパワーアップの手法だが、これをモンゴル用のJB23に導入してきたのだ。

それだけに、このマシンのパワーは突出している。制作者の千葉さんも「コンセプトは一番速いジムニー!」とのことで、なんと時速155キロで巡航可能。JB23はオンロードですら実測130キロがいいところだ。フラットダートであれば、尾上さんや菅原さんがコイツに追いつくのは至難の業になる。

いずれにせよこれだけのパワーと重量を受け止めるには各部の強度アップが必要! というわけでプロレーサー塙 郁夫さんの協力のもと、脚まわりの強度を徹底して向上させている。その成果はアクスルの写真を見れば一目瞭然。重さより耐久性や耐衝撃性を重視した作りだ。ダンパーはアメリカン・オフロードレースの定番、高級「キング」製。リザーバータンク付きの高圧単筒式ダンパーを奢っている。基本は “篠塚さんにアクセルを踏み続けさせる仕様” と言うことができるだろう。

エクステリアの造形はFRP制作を得意とする千葉さんの手によるもの。純正品をベースにシンプルに形作られたフロントバンパーやボンネット上の巨大なエアアウトレットなどにその特徴が見ることができる。

チーム名は「TEAM TAISAN SINOZUKA」。TEAM TAISANは自動車レース・SUPER GTなどの参戦実績を誇るレーシングチームで、オフロードレースは初の挑戦。残念ながら車検日当日に篠塚さんが出席されなかったのでインタビューの動画はないが、このクルマが台風の目になることは間違いない。

菅原さんのマシンとその手法を第二次大戦中のゼロ戦と例えるなら、篠塚さんのマシンはさしずめアメリカのF6Fヘルキャットといったところか。わからない人はグーグルで調べて欲しい。軽量化を徹底したがために旋回性能や燃費には優れるものの限界性能が低くパイロットの習熟を要求した零戦。これに対し重量が嵩んでも頑丈で無理が利き、パワーとスピードに優れたヘルキャット…。

同じジムニーでもここまで作りが違う者同士の対決は珍しい。これに、昨年まで “零戦” だったマシンの各部をリファイン、旋回性と安定性を増した尾上さんのがどう絡んで行くのか、興味は尽きない。

ダカールの達人達が繰り広げる3者3様の戦い。その結末をじっくり見届けようと思う。いやぁ、ジムニーって本っ当(ほんっとう)にいいもんですね!

<文:河村 大 写真:山岡 和正>

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