• 前の記事
  • 次の記事
15.11.21

モンゴルラリー2015にアピオジムニーでソロ出場!:若林葉子

Text:若林葉子(Yoko Wakabayashi)

 このサイトを訪れる人なら、“モンゴルラリー”についてご存知の方も多いかもしれない。毎年8月にモンゴルのゴビ砂漠を舞台に、8日間で約3,500kmを走るクルマの耐久レース。いわゆるラリーレイドという競技だ。この競技の最高峰があの有名なダカール・ラリーだ、と言えば、イメージが掴みやすいだろうか。

 私は2009年に初めてこのモンゴルラリーに参加し、この夏で5回目を数えた。そのうちナビゲーターが3回、ドライバーが2回。こう書くと、昔からクルマの競技をやってるように思われるかも知れないが、まったくそんなことはない。20代で取得したのはオートマ限定免許で、OL時代はずーっとペーパードライバーだった。30代半ばでOLを辞めてフリーライターに転身し、その後出会ったCar&Motorcycle Magazine『ahead』で、おもいがけなくクルマとの縁ができたのだ。2005年に取材に出かけたモンゴルラリーで「こんな世界もあるのか」と衝撃を受けて、以降、モンゴルラリーに出ることが夢となった。今思うと、それだけの思い込みで本当に出場してしまうなんて、なんと単純で浅はかな人間なのだと呆れるが、ある意味「無知」ってすごい、とも思う。アピオ会長の尾上さんに「あのときはお笑いみたいだったよね」と言わしめるくらい、初挑戦の年は酷いものだった。

 しかし生来の負けず嫌いを発揮して、次の年も再挑戦。初挑戦はナビだったが、2010年は自分でハンドルを握り、他の人の3倍くらいの時間を走り続けて、完走。この年の相棒はジムニーシエラ(1300)のATだった。

 そのあとの2年はナビとして経験を積み、2年のブランクを経て、この夏、再びドライバーとして出場した。今回はジムニーシエラ(1300)のMT。2度ともシエラなのは、660ccに比べてトレッドが広い分、安定性がよく、転がりにくいからだ。しかも今回はナビゲーターを置かずに、一人でナビもドライバーも兼ねるという、ちょっと難しい選択をした。

 なぜ難しいのかと言うと、この競技はあらかじめゴールは知らされず、「コマ図」と呼ばれる方向指示書に沿って進路を決める。だからこのコマ図を正確に読まなければ簡単にルートを外し、道に迷ってしまうのだ。数キロ指示がないときもあれば、数十メーターの細かい指示が続くこともある。また指示のある場所が平坦で見通しが良いところばかりとは限らない。バイクはもともと一人で全てをやるわけだが、バイクはクルマより視界が広く、車幅が狭い。また転んでも(ライダーが無事であれば)自分でマシンを起こすことができる。クルマに必ずナビがいるのは、おそらくそういった理由だ。

 速く走ること。それを目標にするなら、当然ナビは置くべきだ。でも、私は速く走ることよりも、自分がどのくらい成長したのか。一人でどの程度できるのか、試してみたかったのだと思う

 私はいつも、「自分がこうしたい」と思うと、それが妥当なことなのかなんて考えずに突き進んでしまう。だから、このシングルハンドの挑戦は、知らない間にずいぶんと物議を醸したようで、多くの方に心配を掛けてしまったようだった。そりゃそうだ。左手でシフトチェンジをしながら、コマが一つ進むたびに、左手でコマ図をひとつ送って、その間に路面もちゃんと見てなくてはいけないわけだから、忙しい。私だって、本当にどのくらいちゃんとできるのか見当も付かなかった。ただ分かっているのは、これまでナビもドライバーもひととおり経験してきたし、ちゃんと完走してきたということだけ。

 ただ、おおまかなルートが発表されたとき、これはけっこう厳しいなと思った。なぜなら初日から650kmの長丁場。続く2日目は580kmもあるうえに、とてもテクニカルな山岳地帯の長い峠を延々と越えなければならない。1日に約280kmの競技区間が2本控えており、2つ目を決められた時間内にスタートしなければ失格となる。この2日を乗り切れるかどうかが勝負。

 とまあ、そんなこんなで始まったラリーだったが、結果はノーペナルティーで完走。甘くはなかったけれど、今回、ひとりで走ったことで、私は改めてこの競技の面白さを再発見できた気がしている。

 荒地を走り、川を渡り、山を越え、牧羊犬や馬や羊やヤギにヤク。遠くにぽっかりと浮かんだ雨雲から落ちる雨を見、蜃気楼に酔い、背丈ほども伸びた草に道を隠され、一面の花畑にため息をつき、ハーブを踏んだタイヤからふんわりと立ち上る香りに目を覚まし、大自然をこんなにも近くに感じられる幸せ。

 真っ暗闇で右も左も分からなくなったときに、トラックで道案内してくれたモンゴル人の夫婦。この先の穴ぼこが大雨で削られて危険だから迂回しろ、とクルマを停めて教えてくれた遊牧民。

 延々と続く山道を必死で登っていく私を山のてっぺんで待っていてくれて、登りきった私に「GOOD JOB!」と励ましてくれたオーストラリア人のライダー。

 何より、1日10時間以上ひとりきりで、話をするのは自分とジムニーだけ。難所に出会うと、「頼むよ」とジムニーに話しかけ、ブレーキが遅れて穴に突っ込んだら「あーごめんねーー」とジムニーに謝り、ゴールにたどり着くと毎日「ありがとう」とお礼を言った。クルマにはちゃんと気持ちが伝わるのだ。

 日が経つにつれ、疲れもどんどんたまっていくが、1日の中でも自分の能力が上がったり下がったりしているのがはっきり分かる。ここぞ、というときに集中するためには、ある程度、頑張りすぎない時間をつくるのも必要で、その方が致命的なミスを避けられたりもする。小さなミスをするときは、あー疲れてるなと自分で認識できればOKなのだ。泣きそうになったときや追い込まれたときこそ、焦らずに深呼吸をひとつ。そして疲れて不機嫌なときこそ、笑ってみる、歌ってみる。そうやってタフネスが鍛えられていくのが、モンゴルラリーの醍醐味だとつくづく思う


 来年はロールケージがなくても、ヘルメットがなくても参加できる新しいクラスが採用されると聞いている。そうなれば皆さんのジムニーでそのままモンゴルの大地を走れちゃうのだ(私のジムニーもアピオ製。ロールケージや燃料タンクの他には、アピオのショックで足回りを強化しているだけで、基本、ノーマルのまま。ジムニーって本当にすごい。丁寧に走れば完走できるのです)。

 このサイトを訪れた皆さんと、モンゴルの大地でお会いできたら、こんなにうれしいことはないなあ。興味がある人はぜひアピオに相談してみてください!

若林葉子プロフィール

1971年大阪生まれ。立教大学文学部卒。OL、フリーランスライターを経て、Car&Motorcycle Magazine『ahead』編集部に。2009年をかわ切りに今年で合計5回モンゴルラリーに出場し、いずれも完走。今年はナビゲーターを置かずにソロで出場した。2015年1月にはダカールラリーでHINO TEAM SUGAWARA 1号社のナビゲーターも務めている。

  • 前の記事
  • 次の記事