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森の光と黒蔵の旅 / 写真家・瀬尾拓慶
VOL.003
春を待つ黒蔵
春を待つ黒蔵

森は、春を迎える準備をしていた。
きっと今頃、熊もフキノトウを探しているのだろう。
溶け始めた森の雪が名残惜しいが、早く春の森を旅したい。

写真集出版記念写真展告知

皆様
いつもご覧いただきありがとうございます。
この度、瀬尾拓慶初のオリジナル音源 CD付き写真集「Dear Silence 静寂の森」を出版する運びとなりました。
それに伴い、出版記念写真展を開催いたします。
黒蔵(ジムニーシエラ)と共に森で過ごし撮影した、美しい光の写真をご覧頂けます。
下記が概要、詳細です。

深い森の中、光を追い求めて撮影したカラー作品約50点を展示。
写真・空間デザイン・文章・ピアノによる自作曲で構成された美しい森の写真展です。
写真展開催中、写真集出版記念として、サイン入り写真集の販売や、作家自身によるピアノの即興演奏も行います。



写真集出版記念写真展「静寂の森」
リコーイメージングスクエア新宿 ギャラリーI&II
〒163-0690 東京都新宿区西新宿1-25-1 新宿センタービルMB(中地下1階)MAP
℡03(3348)2941
・開催日時
2018年4月11日(水)-4月23日(月) 定休日(火)
10:30~18:30(最終日16:00終了)
・ギャラリートーク
4月14日(土)・4月15日(日)・4月21日(土)・4月22日(日)
各日とも13:00〜 / 16:00〜(参加無料 予約不要)
トーク開始10分前より、即興ピアノ演奏を行います。


・瀬尾拓慶ホームページ
takumichi-seo.com


・リコーイメージングスクエア新宿ホームページ
http://www.ricoh-imaging.co.jp/japan/community/squareshinjuku/2018/04/20180411.html


・3/20日発売のカメラ雑誌「フォトコン」にて、7ページの特集(p.156-p.162)と写真展情報(p.29)を掲載していただきました。
フォトコンホームページ
http://www.photo-con.com/

黒蔵がうっすら黄色くなっていた。

狐の足跡が残る、冬の終わりの森

ついにこの季節の到来。
暖かく、時に寒い。
そして花粉が漂う季節。
黒蔵にも、黄色く忌々しい粉がこびりついていた。
この時期はなかなか旅に出れず、森を思い出して感慨にふける。
冬の終わり前、森は新しい季節のために準備を始めていた。
まだ少し、春というには早い季節だ。
木に積もっていたはずの雪はいつの間にか消え、涼やかな風が木々の間を吹き抜けた。
林道にはまだ雪が残っており、ゆっくりと注意しながら進んでゆく。

たまたま遭遇した夏の狐、少し寂しそう

美しい光を眺めていると、遠目に狐の走り去る姿を見つけた。
その姿は、精悍さに溢れていた。
そういえば、まだ狐をしっかり撮ったことがない。
鳴き声やその生態すらも知らないが、ここ最近は狐の美しさに触れる機会が増えてきている。
山奥でくらすその姿を、美しい光とともに切り取りたいという欲が出てくる。
頭上を飛んでゆくムササビも、親とはぐれてさまよう子鹿も。
駆け抜けてゆく兎に、餌を探すのに夢中でこちらに気づかない穴熊も。
彼らをもっと撮ってみたい。
朝まずめの鳥の声、光を浴びて輝く木々。
荒れ果てている林道も愛おしい。
森へ行きたいという衝動が押し寄せてくる。

光が指す雪の森、木々のシルエットと影のコントラスト

しかし、そんな愛おしい森でも、決して嬉しくない出来事が過去にはあった。
森の中での恐怖体験の一つ。
とある暖かい日の夜。
私はいつものように、相棒の黒蔵(ジムニーシエラ)の中で睡眠をとっていた。
森の中で寝るときは周りを気にすることもなく、車体に目隠しもつけないで寝ている。
すると「コンコンコンッ」とふいに、窓を叩くような音がした。
睡眠から覚醒しかけ、ふと目を開けると窓の外に人影が。
夜の森の中で顔はよく見えないが、男性のようだ。
理解が追いつかず、恐怖がこみ上げてくる。
換気のために少しだけ隙間が開いている窓から問いかけられた。
「ねえ、何してるの?」
鈍く、ゆっくりとした声。
とっさに自分は写真家で、森の写真を撮っていることを伝える。
「そうなんだ。ドア開けて、話そうよ。」
ここは森の中、地元の人間でもこんな夜中にここにいるはずはない。
私はパニックになりながらも「さすがに怖いので」と拒否の意を示した。
しばらくの間を置いて、その人物は何かをつぶやいてガサガサと何処かへ行ってしまった。
時間を確認すると、夜中の三時過ぎ。
森のこんな深い場所で?
理解しきれない、疑問や恐怖を帯びた感情が行き交う。
ここから移動するべきなのか、しかし夜中の森を移動するわけにもいかない。
その日は眠ることができず、窓に目隠しを着けて明け方まで図鑑を読んでいた。
余談だが、朝起きると鹿が車の真横にいたこともあった。
至近距離で目が合い、お互いびっくり。
鹿は慌てて逃げて行った。

夜の林道と鹿

車中泊をしていると、様々なエピソードが生まれる。
楽しいことも、恐ろしいことも。
今となっては、それらすべてが笑い話になっている。
さあ、もうすぐ本格的な春の到来。
花粉症を乗り越えて、若葉が顔を出した美しい春の森へ!

※来月開催の写真展は様々な想いと共に撮影した、美しい写真の数々を展示いたします。
ぜひお越し下さい。
会場にて、お待ち致しております。

凍りついた水面。よく見るとここにも狐の足跡が、、、
落石と崩壊した林道
菜の花と光
水際の春