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15.03.25

【vol.34】日本再発見ジムニー探検隊>>房総秘湯エクスペリエンス

首都圏で「温泉」というと伊豆半島のイメージが強いが、房総半島にも実はたくさんの出で湯があるのだ。
房総は関東でもいち早く春が来る場所だが、緩んだ空気の中でゆったり湯につかるべく出かけたみた。
だが、ただ温泉に浸かるだけではつまらないので、温泉ファンの間で評価の高いマニアックな温泉を探すことにした。

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前途多難の秘湯探検スタート

営業日だったはずが、休みだった七里川温泉。地元の人の話だと、最近は度々休むようなので、電話してから行ったほうがいい。

房総半島と言えば、かつては都内からアプローチするには丸一日かかあり、まさに“陸の孤島”のような場所だった。だが、東京湾横断道路や館山道、圏央道の開通によって、片道2時間ほどで館山にも到達できるようなり、房総半島は身近な“非日常空間”になっている。

とは言え、房総半島で人気の観光スポットと言えば、館山や鴨川、勝浦など海沿いに集中しており、養老渓谷や亀山湖を除けば、なかなか内陸部に遊びに行く人は少ない。ジム探でもvol.5で千葉のディープスポットをご紹介したが、内陸部にも楽しい場所がたくさんある。

例えば、温泉。これも鴨川や安房小湊など海沿いの温泉地が有名だが、内陸部にも温泉ファンを唸られせる名湯が多く存在する。ちなみに、環境省の調べによると千葉県内の温泉は97箇所。その数は全国でも11位という、おんせん県なのである。

東京が気温20度を超えた翌日、春の陽気に誘われるがままに、ジムニー・シエラで房総に向かった。つい数日前に首都高山手トンネルが全通になり、23区から東京湾横断道路まですぐにアクセスできるようになった。東京湾を渡り、そのまま圏央道を直進。木更津東ICで下りて、国道417号を南下する。

途中、久留里という城下町がある。ここには久留里城があり、かつては上総武田氏、その後は里見氏、そして江戸に入って久留里藩が支配していた。ちょうど早咲きの桜が満開で、ゆったりと城跡見物といきたかったが、何せ今日だけで5箇所の温泉を巡る予定なのだ。後ろ髪引かれながらも、とりあえず先を急ぐことにした。

開いていればこのように風情のある露天風呂で、硫黄泉質を楽しむことができる。写真は七里川温泉のHPより。

途中、道は国道465線にスイッチし、いかにも千葉らしい田園と低山の中を走っていくと、やがて「七里川渓谷」の案内板が出てきた。この辺りは紅葉の名所らしいが、いまは冬枯れた川沿いの景色が広がるばかりである。最初のターゲットは、この近くにある。七里川温泉だ。

千葉県の温泉は塩化物泉や炭酸水素塩泉、単純泉がほとんどだが、ここの温泉は近くに火山もないのに硫黄泉なのである。千葉県で硫黄泉なのは三ケ所(ジム探調べ)で、ここと隣の白岩温泉、そしてvol.5でご紹介した鴨川の曽呂温泉だけのようだ。希少な硫黄泉ということもあり、県内の人々にも人気が高い。

都内から2時間ほどかけて、ようやく七里川温泉に到着。ジムニーを駐めて玄関に向かうと、何だか薄暗い。うーん? も、も、もしかして休業? HPでは特に休みがないようだったが、宿泊客がいないから休みなのか。

すぐに近所のおばちゃんが入浴に来たのだが、「休みみたいなんですが…」というのと、「そうなの? あんた、ちょっと電話してみなさいよ」と言う。“えっ、オレ?”と思いながらも、仕方がなく電話。だが、扉の向こうからベルの音が聞こえるだけで、一向に人が出てくる気配がない。

これは諦めるしかないのだが、ここの露天風呂は実に風情があるようだったので(写真参照)、実に悔しい。しかも1軒目からだ。

嘆いていても仕方がないので、近所で同じく硫黄泉の白岩温泉に行ってみることにした。そのまま国道465号線を数百メートルも進むと、そこにはさらに無慈悲な現実が。「崖崩れのための通行止め」。な、な、なんだと〜?! ちょうど、工事関係者が来たので聞いてみたが、わずか先で大規模な崖呉が起きて、白岩温泉に行くには一度安房小湊か鴨川の海沿いに出て、もう一度山間部へ行かないとダメらしい。

それだけで1時間以上のタイムロスだ。落胆していても始まらないので、次の温泉に向けて走ることにした。何とも今回の探検は多難な予感がする…。

化石のロマンに惹かれて探した鉱泉

滝見苑の改築中にウニの化石が出たことから掘ってみたら鉱泉が出たことから名付けれた「化石の湯」。湯触りが柔らかく、肌がすべっとなる。周囲は緑に囲まれており、昼間に入ったら気持ちいい。

国道465号線に戻り、県道178号を再び南下すると、3kmほどで「栗又の滝」という大瀑布がある。100mの幅に渡って、緩やかな斜面を流れる滝で、千葉県内でも屈指の観光スポットになっている。残念ながら春先は水量が少ないため、滝はトイレのフラッシュよりもしょぼい。

その近くに「滝見苑」といういい風情の旅館がある。次の目的はここにある風呂だ。旅館の説明によると、建物の改築のために地面を掘っていたら、そこから1億5000年前に生息していたコッパウニの化石が出てきた。旅館の主人は、「ぜひ化石層を通った水を飲んでみたい」と思い立ち、そこを掘り続けたら炭酸水素塩泉が出てきたのだという。

滝見苑では1200円(タオル付き)を出すと、日帰り入浴が可能だ。旅館は高級感のある造りで、これは風呂も期待できそう雰囲気。脱衣所はいかにも清潔が保たれ、オーセンティックな旅館らしい折り目の正しさを感じさせる。

服を脱いで風呂に飛び込むと、開放感に溢れた内風呂が目に飛び込んでくる。外の緑が眩しく、これはなかなかの風呂だ。身体を洗って、手を湯につけてみたら意外と温度が高め。ただし源泉は鉱泉なので、沸かし湯だ。いきなり熱いのはイヤなので、とりあえず外に出ることにした。

外には大小ふたつの露天風呂があった。ひとつは屋根がかかった「長寿の湯」で、大きなほうは「叶いの湯」。ちなみに本日は女風呂になっている方には「願いの湯」というのがひとつあるようだ。

滝の瀬音が聞こえてくるのは「叶いの湯」。眼前に桜の樹があるので、4月上旬に入れば、実に風流な入浴が楽しめそうだ。

まずは一番、滝の近くにある「叶いの湯」に浸かってみることにした。足を入れてみると、温度はちょうどいい。ちょうど昼頃とあって、春の陽差しがとても気持ち良い。湯の色は無色で、匂いはほとんどない。湯触りはやわらく、すこし粘りがあるような感じだ。

耳を澄ますと、下のほうから栗又の滝の瀬音が聞こえてくる。これでビールでも一杯やれれば、至福に違いない。叶いの湯の眼前には桜の樹が2本経っていて、おそらく1本はソメイヨシノだろう。4月上旬ともなれば満開のはずだから、桜を見ながらの入浴もまた至福に違いない。

浴槽の隣には、ここの先代が造ったという石造りの手があって、そこでほてった身体をクールダウンすることができる。岡本太郎の「手の椅子」に酷似しているが、石で出来ているのでヒンヤリして気持ちいい。

ちなみに叶いの湯のすぐ下にバス停があるので、繁忙期にフルチンで歩き回っていると、下の人に見られる恐れがあるのでご注意。

陽差しもちょっと熱かったので、屋根の付いた「長寿の湯」に移動してみる。ここは湯もぬるくて、実に心地良い。どういうわけか温度が低いほうが、湯の粘り気が出る気がする。いま入っている湯は、元々地下の化石層を通ってきたというが、一体どの時代の水なのだろうか。

長い時間をかけて磨かれた水を湧かした風呂に身体を横たえていると、あながち「長寿の湯」という名前も間違いでないのかもしれない。せいぜい浮き世の垢を流して、ジム探で宇宙旅行に行けるまで長生きしたいものだ。

長寿の湯から叶いの湯を眺めたところ。日帰り入浴は11時から14時30分までなので、時間を逃さぬよう。

風呂上がりに休憩室にある源泉を飲んでみた。もっと硬い水かと想像していたが、ほとんどクセがなく、コーヒーやお茶を入れるのにも適していそうだ。ちなみに温泉入浴は知らず知らずに脱水状態になりやすいらしいので、水分補給を十分にしていただきたい。

休憩室の外のテラスにはロッキングチェアが置いてあり、入浴で疲れた身体を休めるのには実にいい。温泉の理想的な入浴時間は15分以内、その後は30分程度休むのが身体にいいそうだ。僕も房総の春風に吹かれながら、ロッキングチェアをゆすってみた。

この温泉には脱衣所の外にも、庭を眺めながら休める休憩スペースがある。各部に利用者を配慮した心遣いが見られ、非常に好感度の高い温泉だった。

極上の旅館を思わせる日帰り温泉

ごりやくの湯の内湯。三方を大きな窓に囲まれた造りで、昼間なら外の緑が湯にも映って清々しい。

滝見苑から県道178号をさらに数分南に進むと、滝見苑の系列の「ごりやくの湯」がある。日帰り入浴だけの施設だが、風呂がいいと評判なので寄っていくことにした。

入湯料を払う時に気がついたのだが、実は滝見苑とのセット料金というのがあって、1900円を払うとどちらの温泉にも入ることができる。絶対にこちらのほうがトクなので、読者諸兄もお忘れなく。

施設は木造で統一されており、入口をくぐって料金を払った後、長い渡り廊下を歩いていく。ちょっと温泉旅館に泊まったようで、気分が昂揚してくる。脱衣所は狭く多少煩雑な感じになっているが、まあ清潔と言えるだろう。

脱衣所からはすぐに露天風呂が見えて、これがなかなかの造りだ。はやる心を抑えて、まずは内風呂へと向かった。内風呂は大きな東屋の中にあるような雰囲気になっており、そのデザイン性が素晴らしい。どこかの高級温泉旅館のようだ。とても日帰り温泉とは思えない。

身体を流して、内風呂にザブンと入る。泉質は先ほどと同じ炭酸水素塩泉だ。昔は重曹泉と呼んでいたもので、皮膚を滑らかにする美肌効果があると言われている。

露天風呂は石の色の影響か、お湯が青く見える。周囲の緑とのコントラストが素晴らしい。

飲用すれば通風や尿路結石、膀胱炎などにいいとされている。そうそうかかる病気ではないが、まあ飲んでおいても損はないはず。

風呂の建屋には濡れ縁も付いていて、各部の空間演出がいちいち心憎い。どんな温泉デザイナーが手がけたのか分からないが、本家の滝見苑よりも素晴らしい。せっかくの空間だから、できれば空いている平日の昼間に入って、ゆったりと楽しみたい。

露天風呂は青みがかった石と岩で造られており、お湯の色が青く見えるのが特徴だ。炭酸水素塩泉なので無色だが、こうした演出もぬかりない。周囲には山の緑が映えて、それが青のお湯とコントラストを織りなしている。ここのスタッフに聞いたところ、その日の女風呂のほうがさらに開放感があるのだという。どちらになるかは、当日のお楽しみだ。

湯に浸かっていると、遠くから田んぼのカエルたちの鳴き声が聞こえてきて、何とも風情がある。きっと夕方の入浴も楽しいに違いない。

ちなみに「ごりやくの湯」には食事処や炭火焼きの設備も用意されているので、ここだけで楽しむのもいいだろう。

トラブル続きの温泉探検隊?!

安房小湊のホテル三日月の前にある「魚村」の平日限定ランチ。魚が美味い!

ごりやくの湯を後にして、ジムニー・シエラは道の険しい県道178号、177号、そして82号を通って、ようやく安房小湊へと到着した。

ここで午後1時30分。道が寸断されているため、大幅に時間をロスしている。でも、お腹が空いたので、目に入った安房小湊の海鮮料理店に飛び込む。

ホテル三日月の真ん前にある「魚村」という店だが、入って見ると主人も奥さんも感じが良く、地方の小料理屋という雰囲気ではない。とりあえず刺身が食べたかったのでセットを頼んだのだが、この後に思わぬ悲劇が僕に襲いかかった。

ちょっと注意力が足りなかったのだが、料理が運ばれてくる様子をボーッと見ていたら、箸で味噌汁の椀を引っかけてしまい、中身がすべて僕の脚へ。ジーンズだったこともあり、熱くて大パニック。温泉に入りに来たが、味噌汁に浴びることになろうとは。

こんなことは年に一度あるかないかだから、もはやこの日は厄日としかいいようがない。3度のトラブルに見舞われたのだから、4度目はないことを祈りたい。

ビショビショになったジーンズのまま、ジムニー・シエラで海沿いの国道128号線を西に数km走る。県道81号とぶつかるので、そこを右折。また北の内陸部へと進む。本来だったら、七里川温泉から県道81号線を南下すれば、すんなり白岩温泉に行けるはずだったのだが。

白岩温泉の露天風呂。なんと千葉県内最古の露天風呂なんだとか。お湯が入っている状態をご想像ください。

最初は道幅が広かった県道81号線だったが、内陸部に入るにしたがって道が険しくなってくる。カーナビを見ると目的地は間もなくのようだが、果たしてこんな所に温泉があるのだろうか。

と思っていた矢先に、突如、白岩温泉が現れた。塀に大きく「露天風呂」と書かれている。遠回りはしたが、ついに千葉県で希少な硫黄泉に入ることができるわけだ。ジムニーを降りると、これまた希少な甲斐犬が出迎えてくれる。甲斐犬は滅多に他人になつかないのだが、やけに愛想がいい。

犬と遊んでいたら、旅館の中から奥さんが出てきた。「お風呂入りたいんですが、いいですか〜」と聞くと、にわかに奥さんの顔が曇った。「ごめんね〜、ボイラーが壊れてお風呂が入れないんだよ〜」 な、な、なにーーー! 思わず甲斐犬の首を絞めそうになり、慌てて手を離した。

「ボイラー、GWには直るから待ってて〜」そこまで待てないが、入れないのは仕方がない。お風呂だけ見せてくださいと頼んで、千葉県最古と言われる露天風呂を拝見する。岩で手作りした露天風呂で、中に小さな脱衣所と洗い場がある。お湯がないので何とも言えないが、きっといい風呂だったに違いない…。

外で再び甲斐犬と戯れていたら、しばらくしてご主人が戻ってきた。世間話をしてわかったのだが、県道の崖崩れは昨年の5月に発生して、かれこれ1年近く復旧しないのだという。こちらも風呂のボイラー同様に、GWまでには何とかなりそうだということだった。

どうして硫黄泉が出るのかはご主人も分からないそうだが、水道から温泉が出るから嗅いでいけと言う。水道から出る水は紛れもなく硫黄臭のする鉱泉で、無色透明なのがおもしろい。次回は絶対入るとリベンジを決め、次の目的地へと向かった。

ひなび過ぎているものの泉質は最高の不老山薬師温泉

不老山薬師温泉の露天風呂。何だか金魚がいる池みたいだが、泉質は非常にいい。

再びジムニー・シエラは海沿いに戻り、鴨川を抜けて、1時間ほどで館山へと入った。館山と言っても、野島崎に近い所に次の目的地である「不老山薬師温泉」がある。

施設内に入ると、スキーロッジ風の宿泊施設と緑が広がる園内が好印象を与えるが、よく周囲を見ると、朽ち果てた建物が散在しており、どうもバブル期に造ったのものの、その後は衰退しているといった匂いがしなくもない。

茅葺きの古民家風建屋でお金を払うと、日帰り入浴ができる。入湯料は700円だが、1500円出すと食事がセットになってお得となる。ただし食事は5時までのため、今回は時間がないため食べられなかった。

説明された入口に向かうと、いきなり洞窟が現れる。これをくぐって風呂に行くらしく、いきなりテンションが上がる。洞窟をしばらく歩くと、男女に分かれた風呂の入口があった。引き戸を開けて中に入ると、いかにも古い温泉の脱衣所だ。チェックもあまりしていないようで、あまり整頓されていない感じだ。

服を脱いで風呂場に入ると、ここまで通ってきた洞窟が何だったのかと思うほど、狭い洗い場と浴槽が目に飛び込んできた。外の露天風呂に至っては、小学校の金魚池みたいだ。これはショボい…。

だが温泉は泉質。ここの温泉の泉質は正確な名前がないようで、重曹泉に属するとなっている。色は薄い褐色で、東京などでも出るモール泉の一種なのかもしれない。入ってみると、設備はショボくても、肌はツルツルになる。少し粘りがあって、なかなか気持ちが良い。

露天風呂はコンクリを塗ったくった処理が甘くて、背中やら尻が痛くなるが、まあ温度もちょうど良くてなかなかのもの。人が4人も入るといっぱいになるような風呂で、周囲の景色もまったく見えないが、泉質がいいので我慢したい。

外に出ると、ちょうど東京湾の向こう側に陽が沈むところだった。もう一軒、君津にある秘湯を目指す予定だったが、日帰り入浴の時間帯が終了してしまった。時間切れということで、今回の千葉の秘湯探検はひとまず終了。アクシンデントに見舞われて、十分な秘湯探検ができなかったのは心残りだが、またの機会にご紹介するのでご容赦いただきたい。

調べてみると、まだまだ地元の人しか知らないような小さな温泉が千葉県内にはたくさんあるようなので、次回はさらにマニアックな温泉をご紹介したいと思う。

<文・写真/山崎友貴>

千葉秘湯探検ギャラリー

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