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日本再発見ジムニー探検隊
VOL.007
足尾銅山
足尾銅山

日本屈指の銅山と謳われ繁栄しながらも、その役割の終焉とともにフェードアウトした「足尾銅山」。
今回は足尾銅山周辺を探検し、前半は念願の坑道にも潜入した。
足尾銅山と言えば、もうひとつ忘れてはならないのが「わたらせ渓谷鐵道」だ。
後半は、鐵道ファンにも人気の高い鉄道をチェックすることにしよう。

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美しい渓谷を走るパワフルな鉄道

間藤駅で“わ89-310形”にガブリ寄りの河野隊長。栃木だけあって、ほとんどの車両が富士重工製だ。

桜の季節や紅葉のシーズンになると、必ずと言っていいほどテレビで紹介される「わたらせ渓谷鐵道」。栃木県の桐生駅から間藤駅までを結ぶ第三セクター鉄道で、その名の通り路線の多くが渡良瀬川の渓谷沿いになっている。

「わてつ」の愛称で親しまれるわたらせ渓谷鐵道は全17駅あり、その内12駅が無人。関東圏の単線鉄道の中でも、ひときわノンビリとした鉄道なのだ。いろいろな意見はあるとは思うが個人的には埼玉県の「秩父鉄道」、千葉県の「いすみ鉄道+小湊鐵道」、そして茨城県の「関東鉄道」と並んで、風光明媚な景色の中を走る素晴らしい鉄道だと思う。

今回の探検の目的は足尾銅山だが、この「わてつ」も旅の目的のひとつ。河野隊長は“乗り鉄”のようなので、わてつにもぜひ乗りたいと企んでいるようだ。わてつは全線非電化で、様々な気動車が走る。4タイプの通勤形のワンマン車両の他、わてつの花形である「トロッコわたらせ渓谷号」と「トロッコわっしー号」に使用されている気道牽引車と客車がある。と言うと、いかにもたくさんの車両を持っているように思われるかもしれないが、小さい鉄道なので全部でたった17両しかない。

人気の「トロッコわたらせ渓谷号」。運行されていない日もあるので事前に時刻表をチェックしておこう。

よく鉄道の話をすると「ドライブで行ってるんだから」という人がいるが、実は鉄道ファンの多くはクルマを移動手段に使っている。よりいいポイントで鉄道を観るにはクルマのほうが便利だからだ。わたらせ渓谷鐵道を“鑑賞”するのもそのセオリーに違わず、ジムニーの機動力が大いに役立った。わてつの線路の周辺は狭い道が多く、ビッグサイズの4WDでは持て余す場所も多い。

今回は時間の都合で隊長はわてつに乗ることができなかったのだが、時間に余裕があるなら乗車してみてはいかがだろうか。大抵の駅前には無料の駐車スペースがあるので、そこに愛車を置いて、しばし鉄道の旅を楽しむのもいい。ただしダイヤは1時間に1〜2本程度、往復の時刻を確認しないと帰ってこれなくなるのでご注意を。

乗る時間がないなら、駅のホームに入って行き交う列車を眺めるのも一興だ。多くの駅は改札がないので、出入りは自由。上り始発駅の間藤(まとう)駅や足尾駅、神戸(こうど)駅、水沼駅などはクルマが駐めやすい。

足尾駅は駅舎の趣も良く、懐かしい香りがプンプン漂っている。構内にはかつて貨物で使っていた留置線があり、現在は9両の気動車や貨物車が停まっている。JR東日本から購入した「キハ35系」などはドアが随時開いており、中で休憩することが可能だ。わてつは何かとフレンドリーな鉄道なのである。

構内に温泉?! ユニークで個性的なわてつの駅

水沼駅構内にある「水沼駅温泉センター」。食堂、喫茶店、宴会場まである。

わたらせ渓谷鐵道のような小さい鉄道は、やはり特徴を出さないとなかなか集客できないという悩みがある。ローカル線はそれぞれにユニークな営業を展開しているのだが、わてつには2つのポイントがある。そのひとつが、駅構内に大規模な温泉施設があるということだ。

駅の中に温泉…というのは、日本全国を見渡せばいくつかあるのだが、スーパー銭湯なみの設備を持つところはそうそう無い。水沼駅温泉センターは、“センター”という名前に偽りなし。内湯、露天風呂を筆頭に食堂、喫茶室、宴会場とまさか駅構内にあると思えない充実ぶりなのだ。電車を降りてひとっ風呂でもいいが、駅前にクルマを駐めてゆっくりと入浴を楽しむこともできる。

入浴セットを抱えて跨線橋を渡っていくシチュエーションはかなり斬新だ。それにも増して、ホームにある本来の駅舎よりも温泉施設のほうが大きくて立派だというのも笑えてくる。料金は大人600円で、3000円(平日)出せば貸し切りの休憩室を3時間も借りることができる。もちろん駅前の駐車スペースは無料なので、風呂に入ってゆっくりと昼寝を楽しんでみるのもいい。

群馬県内で育てられたやまと豚の肉を使った「やまと豚弁当」。駅弁のファンに人気の高い駅弁だ。

さて、わてつのもう一つ注目スポットは、駅構内に電車を設置しその中で食事ができるという「レストラン清流」。清流は神戸(こうど)駅構内のホーム脇にある。かつて東武鉄道日光線で使われていた1720系デラックスロマンスカー「けごん」の4両目と5両目を改造。昔を知る鉄道ファンには非常に懐かしい電車の中で、食事や喫茶が楽しめる人気の場所だ。

シチュエーションもさることながら、清流では駅弁ファンに人気の「やまと豚弁当(1000円)」が食べられる。群馬県内で育てられたやまと豚をタレで味付けしてご飯に乗せているというシンプルな弁当。TVで芸能人が絶賛したことからブレイクした。オリジナルの日本手ぬぐいがオマケで付いているので、これを食べてから水沼駅で温泉に入るというのも一興。

清流ではもう1種類駅弁が売られている。その名も「トロッコ弁当(900円)」。箱のフタが盛り上がっているので“こりゃ、すごいおかずが入っている!”と期待して開けたら、中はなんと舞茸の天ぷら。天ぷらなんて冷めたら柔らかくなっておいしくない…と落胆して食べたら、これがサクサクでおいしい。他の野菜の味付けも美味しく、まったく動物タンパク質系が入っていないにも関わらず、満足度が非常に高い弁当だ。

早めの時間だったら清流ですんなりと買うことができるが、数に限りがあるので予め予約しておくことをおすすめする(TEL:0277-97-3681)。清流では、この他にもメニューが用意されているので、駅弁はちょっとという人でも食事が可能だ。クルマで行っても電車旅の旅情が味わえる楽しいスポットだ。

さて、探検もいよいよ終わりに近づいてきた。陽が赤くなり始めると、わたらせ渓谷の周囲はさらに人はまばらになる。一時期は日本の産業を支える重要な拠点として、多くの人間が働き住み、そして訪れた足尾の町。だが、その栄華をいまは想像することは難しい。現代人の生活や産業構造の変化により、かつては活気に満ちていたのに今は見る影もないという「失われた都」は、実は関東各地にある。

こうした場所の衰退、そして地方の町の過疎化こそが、実は元気のない日本を作ってしまった根幹なのではないか。経済至上主義によって砂上の楼閣になってしまった日本。地方のこういった町を訪れる度に、日本再生の鍵はこうした地方にこそある気がしてならない。

と言うことで、次回も埋もれた日本の魅力を発掘したい。ジムニー探検隊の旅をお楽しみに。

<文:山崎友貴 写真:山岡和正、山崎友貴>

わたらせ渓谷鐵道 水沼駅

わたらせ渓谷鐵道の水沼駅周辺

ドイツ製のワーレン・トラス橋の「古河橋」。明治23年に架けられ、今は老朽化で通行することはできない。
本山精錬所の跡。廃墟萌えにはたまらない建造物がいくつか残る。
旧足尾鉱業所付属倉庫。明治43年に建てられたもの。今は使われることもなく佇んでいる。
裏から見た古河掛水倶楽部の建物。まるでドイツかスイスの山荘のようなモダンさだ。
通洞抗の脇にある鋳銭座では、江戸から近代までの造幣の様子が分かる資料が展示されている。
僕らが乗ったトロッコは観光用で、実際はこのようなトロッコで坑道内に入った。
大正元年築の足尾駅。まるで横溝正史の映画に出てきそうな佇まいだ。
普段は駅員もいない無人駅となっている。駅舎は文化財指定されている。
わたらせ渓谷鐵道名物のお弁当2種類。トロッコ弁当は予約して、大間々駅(車内)で受け取ることもできる。
レストラン清流の外観。「けごん」の車内には、かつて日本が元気だった頃の雰囲気が漂う。