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16.11.01

【Vol.43】 New Coke in Old Bottles~PENNY'S DINER [横浜・日本大通り]

10月にオープンしたばかりの新店をご紹介!
横浜海岸通りに現れたその店は
50'sスタイルのオールドなアメリカン!

物語はひとつの模型から始まった――。


看板には「PENNY'S DINER(ペニーズダイナー)」とある。某WEBサイトではミニチュアダイナーハウスとして九千いくらで売っている。作ったのはペニージャパンの創業者・湯浅充氏。


湯浅さんはかつて個人輸入で雑貨商を営んでいた。その中に、内部にネオン管が仕込まれたシセナ社のスケルトンの家電製品があり、その出合いが縁でネオンを扱うようになる。

ネオン&レトロ

飲食店でよく見るドリンクやアルコールのネオンサイン。当時はアメリカやメキシコ、ブラジルからの輸入品が大半だったが、高電圧ゆえ火を噴くなどの事故の危険が高く、「ならば日本で安全なものを作った方が」と、コカ・コーラのネオンサインを湯浅さんは自分で作り、逆にコカ・コーラに売り込んだ。その結果、1998年にライセンスグッズの使用許諾を得、ペニージャパンは日本で一番古いライセンシーとなった。

細部まで作り込まれたミニチュアダイナーハウス。高さ19.5cm×幅24.5cm×奥行き16cm。メニューの文字も判読可能

以後コカ・コーラの販促資材の製作・製造に始まり、ミラーやハイネケン、コロナ、ジーマ、キリン、アサヒ、サントリー等々、誰もがよく知る大手飲料メーカーの販促用看板などを相次ぎ手がけていった。


その一方でコカ・コーラのライセンス商品を一般向けに販売もしている。主な製品はダイナー家具。椅子やテーブル、ベンチシート、ネオンサイン、時計、パブミラー等々だ。販促品にしろ、商品にしろ、ペニージャパンの製品を何らか使っている飲食店は相当な数にのぼるものと思われる。


こうしてペニージャパンは飲料各社の販促物と、一般向けのライセンス商品と、その両方でダイナーグッズの点数を増やしていった。


ただし作ってきたのは一貫して「古いもの」である。アメリカンダイナーというひとつのカルチャーを、その歴史をもとに伝承する。復刻する。それがペニージャパンの主な仕事である。新製品を開発するに当たっては、古いボトルデザインの考証などもきちんとおこなう。ときには米国アトランタのコカ・コーラ本社にビンテージボトルを送り、これが現物だと逆に示したこともあった。

そしてついに実物のペニーズダイナーの前に到着した

先代の湯浅社長は2000年ごろ、自分でもダイナーを始める構想を打ち立てた。「ペニージャパンが扱う製品でお店が一軒できればいいね」という着想だ。


だが忙しくて出来ないので、代わりにミニチュアダイナーを作成して「PENNY'S DINER」と名付けた。2005年ごろのことである。二千体ほど製造されたという。


しかし湯浅社長は2年前に他界。その先代の見果てぬ夢を継いだのは次男の直人さんだった。

二代にわたる夢

スツール、チェア、テーブル、シュガーキャディーに至るまで、店内多くがペニージャパン製

直人さんが飲食店をやろうと思ったのは高校生ぐらいの頃。アメリカが大好きな父親の影響で「僕もハンバーガーが好きで」。3ヶ月かけて独りで全米一周旅行もした。


帰国後は「アシエンダ・デル・シエロ」「ビルズ」「スモークハウス」「テディーズビガーバーガー」など、6年間で6店ほど、それも忙しい店ばかり選んで渡り歩き、開業へ向けた準備を着々と進める。そして今年2016年の10月、湯浅家のホームタウンである横浜に念願の店をオープンさせたのである。


その親子二代にわたる夢のダイナーの前に、いまハンバーガー号とわれわれは立っている――。

人気のスターター、ハワイ名物「ガーリック枝豆」450円(上)と「フライドチキン」5p900円~(下)

店が入る「横浜貿易会館」は1929年、昭和4年にできた歴史的建造物である。お隣りは泣く子も黙る横浜の老舗「スカンディヤ」。その趣きある店構えの真横に、まぶしいくらいの真新しいダイナーが誕生した。


中も外もコッテコテでピッカピカの、濃ぃ~アメリカンである。店内の多くもの……椅子机、ナプキンなどのディスペンサー、サインプレートからトレーに至るまで……そのどれもがペニージャパンの製品。一部は販売もしている。そしてそれと同じくらい先代社長のコレクションが、つまりビンテージ品の"本物"が、店内随所に飾られている。


U字のカウンターを中心に35席。外のハイテーブルでも食事ができる。さすが観光地だけあって外国人客も多く、大さん橋に大型客船が停泊した際には、その乗客も食べに来る。ランチは7割が女性客。


メニューはハワイアンやメキシカンをベースにした前菜に、タコス、ホットドッグ、さらにアンガスビーフのステーキや、魚のグリルなどのメインディッシュもある。ハンバーガーは現在6品。中からメキシカンバーガーにチリビーンズをトッピングした「メキシカンチリバーガー」1,850円を頼んだ。

チョップ肉のパティと酒種バンズ

店主・湯浅直人さん。高校のころから店をやりたかったのは確かだが、ミニチュアダイナーの存在を知ったのは実は5年前という……エ?

パティはチョイスランクのUSビーフ100%。サイズ150g。毎朝ブロック肉からおろして包丁でチョップしている。牛脂は加えない、ほぼ赤身肉の塊だ。溶岩石を敷いたガス火のグリルで香ばしく焼き上げる。


バンズは新宿の名店「峰屋」の酒種天然酵母。そこへトマトサルサ、ワカモレ、アーリーレッド(赤タマネギ)のピクルス、ハラペーニョ。さらにトッピングのチリビーンズ60gが乗る。これらの織り成す甘味・辛味・酸味の応酬で口中は右往左往、寄せては返しの大騒ぎ。サルサもチリもわざと「ぼろぼろ」するよう粒を粗めに作ってある。


チョップドパティの肉の弾力。酒種バンズの確かな旨味。ベースを成す両者が頑強であるがゆえに、その上を派手に飾り付けた方がパティとバンズの実力がむしろいっそう映える――そんな力強さを持つバーガー。都内最先端の技と様式の影響を見ることが出来る。


§§

地元横浜のオールドなファンからも熱烈な歓迎を受けている――。


「オールド」というと語弊があるかも知れない。60年代、70年代、80年代、かつて横浜が「今よりもっと横浜らしかった」時代に大いに遊んだ若者たちだ。


かつて横浜には今以上にアメリカがあった。「横浜スタイルのアメリカン」が横浜の其処彼処にあった。それが時代とともに消えてゆき、今ではその名残りさえ探すのが難しい。そんなかつての「横浜スタイルのアメリカン」の復権を彼らは強く望んでいるのだ。


新しくも古い店――。ペニーズダイナーは「オールドスタイルな横浜のアメリカン」を今に伝える新しい風、横浜の"今"と"昔"をつなぐ時代の架け橋である。

< 文と写真:松原好秀 写真:GAO NISHIKAWA >

PENNY'S DINER [横浜・日本大通り]

所在地: 神奈川県横浜市中区海岸通1-1
アクセス: 首都高神奈川1号横羽線・横浜公園出口より3分
駐車場: 近隣にコインPあり
TEL: 045-228-7742
URL: https://www.facebook.com/Pennys-diner-294624230923803/
オープン: 2016年10月1日
営業時間: 11:30~22:00LO
定休日: 月曜日(要確認)

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