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ON THE STREET BURGER
VOL.029
テールフィンの継承者~GUGGENHEIM MAFIA [神奈川・本厚木]
テールフィンの継承者~GUGGENHEIM MAFIA [神奈川・本厚木]

今度は来年2016年で30周年を迎える厚木の老舗の登場。
その巨大なハコの中には1950~60年代、
古き良きアメリカの光と影が今も輝き、そして眠っている......

今月はアピオ本社より緊急出動! APIOジムニーコンプリートカーTS7「ハンバーガー号」。向かうは北西5マイル、本厚木駅近くの店「GUGGENHEIM MAFIA(グッゲンハイムマフィア)」。神奈川の県央・厚木に29年続くその老舗がなんと、9月の末に「閉店する」というのだ。ナゼ? 一体何が起きた??

グッゲンハイム美術館

今月はアピオ本社より緊急出動! 真夏の綾瀬を行くAPIOジムニーコンプリートカーTS7「ハンバーガー号」

現オーナー・桑澤(くわざわ)さんは3代目のオーナー。1986年、グッゲンハイムマフィアがオープンした時、桑澤さんのお姉さんはそのオープニングスタッフだった。さらにその直前、印刷会社に勤めていたお父さんが持ち帰った超絶にカッコイイ一枚の"ちらし"は、奇しくも店のオープンを告げるものだった。そのあまりのデザインのカッコよさに『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の世界が突如近所に現れたかのような、そんな現実離れした感覚を当時中学3年だった桑澤さんは受けたという。


高校1年の夏、初めて桑澤さんは客として店を訪ねた。そして卒業後18~21歳までの間、のべ5年ほど店でアルバイト。30歳の時、店が「ヤバイ」と聞いて2代目オーナーからハコごと・人ごとグッゲンハイムマフィアを譲り受ける。その話に誰もが賛成しなかったが、しかし桑澤さんは初めて訪ねた時のそのカッコイイ店のままを残したかったのである。引き継いだ時にはすっかり"荒廃"し切っていた店を、桑澤さんは魅力ある本来の姿に磨き直した。


カウンター7席。テーブル88席。キャデラックが丸1台収まる45坪の大きなハコの中は、天井から壁から無数の照明が店内の薄闇を魅惑的な光で照らし出す、夢見るような空間だ。

奥の壁はガラス戸が付いた陳列棚になっている。収納されているのは1950~60年代当時の生活用品、テーブルウェア、照明器具、玩具等々。店の名はニューヨークにある「ソロモン・R・グッゲンハイム美術館」に因んで付けられた。20世紀中ごろ、"ミッドセンチュリー"と呼ばれる時代の、当時世界の最先端だったデザインを集めた、グッゲンハイムマフィアはつまり「美術館」である。


アメリカンな店と言われることが多いが、ランプやシェードの多くはヨーロッパ製。食器は9割が英国製。それがつまり当時の「モダン」であり、当時のモダンばかりを集めればこうなる――というのが、つまりこの店内である。


そのミッドセンチュリーモダンの最たる象徴が入り口のピンクキャデラック。最初緑色だったものが後に赤く塗られ、店に来た時には既にピンクになっていたという。

ミッドセンチュリーの象徴

中でもこの59年式キャデラックこそ、ミッドセンチュリーの象徴である

1959年式シリーズ62・コンバーチブル。デザインはデビッド・R・ホールズ。GMのデザイン部門を長らく率いたハリー・アールの「最後の作品」と言ってもよい。ジェット機やロケットを想起させるその華麗で宇宙的なテールフィンこそ50年代アメリカの黄金時代の象徴であり、中でもこの59年式キャデラックこそ、すなわちミッドセンチュリーそのものである。


そしてオーナー桑澤さんの20年来の愛車は1955年式ナッシュ・メトロポリタン・コンバーチブル。50年代フェラーリのデザインなどで知られるカロッツェリア、ピニンファリーナ社のデザイン。英国で生産。米国で販売。


2009年7月18日に信号無視の車に激突され大破。小田原「パンプキンサリー」に修理を依頼し、3年待ちの末、半年かけた修理が2012年12月に完成。同年の第21回「ヨコハマホットロッド・カスタムショー」に出品して表彰された。事故前1500ccだったエンジンは事故を機にジムニーシエラの1300ccエンジンに載せ換え。エアコンも取り付けてより快適な乗り心地の愛車としてみごとな復活を遂げている。


より大きくてパワフルなクルマが支持された50年代当時、ちょっとオシャレな人々はヨーロッパの優雅なスタイルを求めた。大きなアメリカ車が全盛の中、敢えて小さく造ったメトロポリタン。「このクルマは反逆児。でもすごくカワイイ!」と桑澤さん。

オーナー桑澤さんの愛車、1955年式ナッシュ・メトロポリタン・コンバーチブル

ハンバーガーは桑澤さんがLA近郊、オレンジ・カウンティのアンティークモールで見つけた1940年代のレシピを元に再現したもの。品数4品のみ。写真はダブルチーズバーガー1,380円。


運ばれて来た時のニオイが堪らない。肉のニオイ。そして渡米経験がある人ならきっと思い出すであろう実に魅惑的かつ何とも"下品"な「アメリカ」のシーズニングのニオイだ。


脂のほぼ無いカッチカチなパティは豪州産もも肉100%・113g。ダブルなので226g。その「肉!」を食べている実感。そこへ「なめっ」とマイルドなチーズとホットなスパイス、さらにガーリックフレーバーが利きまくる。何とも「ワルな」おいしさ。ケチャップ・マスタードをかけても美味。首都圏屈指の「ワルな」バーガーはココでしか食べられない孤高の味。

バトンを受け取る人

そんな厚木の孤高の店が今、閉店の危機を迎えている――。


直接の原因は人手不足。主要なスタッフが抜けた後が埋まらず、今は週末のみの営業を余儀なくされており、ついには桑澤さんも諦めて、再来月9月の末に閉店することを決めた。13年前、弱冠30歳で"ハコごと・人ごと"店を継いだ桑澤さんにとっては苦渋の決断だろう……。


但し「バトンを受け取る人」がいればその限りに非ず。強く良縁を願うとともに、新たな担い手による新たなグッゲンハイムマフィアの誕生を心待ちにしたく――期限の9月30日まであと61日!

§§


その後の出来事……グッゲンハイムマフィアは今も営業! 人手不足は無事解消し、桑澤さんの経営のもと変わりなく営業を続けている。

< 文と写真:松原好秀 写真:GAO NISHIKAWA >

GUGGENHEIM MAFIA [神奈川・本厚木]

― shop data ―
所在地: 神奈川県厚木市幸町6-4
アクセス: 東名高速・厚木ICから9分
駐車場: 4台
TEL: 046-229-3997
URL: http://www.guggenheim-m.com/
オープン: 1986年9月
* 営業時間 *
7月31日(金)~8月2日(日)営業: 18:00~24:00
以降はFacebookページで確認のこと
定休日: 月~木曜日(要確認)

キャデラックのテールフィン。50年代アメリカの黄金時代の象徴である
天井から壁から無数の照明が薄闇を魅惑的な光で照らし出す、夢見るような空間
陳列棚には1950~60年代の生活用品、テーブルウェア、照明器具、玩具など、当時世界の最先端だったデザインが集まる
ランプやシェードの多くは実はヨーロッパ製
オーナー桑澤さんの愛車、1955年式ナッシュ・メトロポリタン・コンバーチブル
大きなアメリカ車が全盛の中、敢えて小さく造ったメトロポリタン。「このクルマは反逆児。でもすごくカワイイ!」と桑澤さん
ジュークボックスは2台。これは1955年か56年製のウーリッツァー
食後にチョコサンデー¥734。ハーシーズのチョコレートがたっぷり
ハコごと・人ごと2代目オーナーから店を引き継いで13年、3代目オーナーの桑澤(くわざわ)さん
夜のグッゲンハイムマフィア。この華麗なライティング