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15.05.01

【Vol.25】銀色の夢は無限大~Segs Cafe & Diner [千葉・成田]

ヴィンテージのキャンピングトレーラーばかり4台並べたこの店では、
目の前で起こることすべてが映画のワンシーンのように見えてくるから不思議だ――。

「サファリ」車内

本件はAPIOジムニーコンプリートカーTS7「ハンバーガー号」の隊長・GAO NISHIKAWA氏が、昨年9月より携わっていたプロジェクトである。


千葉県は成田の郊外で、アメリカのキャンピングトレーラーを並べて食堂を始めるという、聞くからに興味をそそるプランで、この春ついにオープンしたというので私も実物を見て来た。

エアストリーム

デッキの奥がキッチンカー「スパルタネット」。手前は70年製「サファリ」

成田と言っても富里(とみさと)との市境。だが、そう聞いて思い浮かぶ農村地帯ではなく、住宅地の中にその店「Segs Cafe & Diner(セグス・カフェ・アンド・ダイナー)」はある。


国道409号線に沿ってショッピングセンター・家電量販店・レストランチェーンなどが並ぶこの一帯は地域の生活の中心。特に、夢と感動を与えるグローバルホームセンター「ジョイフル本田」のある一画は、遮るもののない大空と相俟って、そこだけまるでアメリカの郊外の風景でも見ているかのようなスケールの大きさがある。


そんなアメリカンサイズの巨大商業施設群のすぐ裏手にセグス。地元住人にとっては生活圏だ。

この計画には多くの知人・関係者が関わっている。静岡「MAXI GARAGE WORKS」の田中啓介氏が店舗全体のプランニングと一部施工を担当。現場監督として活躍した茨城・土浦「インパクトアートワークス」鈴木潤一氏はオンザロード本社オフィスをリフォームし、都内バーガー店のデザインを複数手掛けた人物。敷地内にキャンピングカーを停め、長期の泊まり込みで作業に当たった。国内屈指のミールトイコレクター・高藪乾一氏は専門的立場から様々に助言。GAO隊長は広報的な動きをメインに様々にサポートした。


行くと砂利敷きの駐車場の奥にキャンピングトレーラーが4台。うち3台がエアストリーム。奥から全長30フィート・52年製「スパルタネット」、70年製「サファリ」、隣が76年製「オーバーランダー」。一番手前のみイエローストーン。64年製。いずれも成田の青空の下、あの魅惑のボディを銀色に輝かせている。

76年製「オーバーランダー」。現在リノベーション工事のまだ途中

玉砂利と枕木で造られた小径に誘われてデッキに上がると、客と店員が時を忘れてのんびり談笑している。それがまた銀色のボディを背に、実に絵になるのだ。そよぐ風さえサマになる――。しばらくここに身を置いていると、周囲に日本の家屋や看板がちらちら見えることなどまるで問題でなくなってくる。この場所の放つオーラの方がそれに勝ってはるかに強いのだ。これぞ新種の「パワースポット」。


奥のトレーラーを覗いみてると、内部がまた実にポップに気持ちよくリノベーションされており、踏み入る前から既に素晴らしい。この奥の「スパルタネット」が厨房車。ここのカウンターで注文をする。席は店内計24、デッキ10、「庭」にベンチ席12。中でも外でも楽しめるが、一番のお薦めはやはりエアストリームの「中」。これが堪らない。


デッキ伝いの一台「サファリ」の車内は設計・施工ともにマキシ田中氏。純正部分はごく一部で、ほぼ100%近くリノベーションされている。木目を多用した抑えた色遣いの落ち着きある室内に、窓から注ぐやわらかな初夏の光。入口には網戸がはまり、五月の風がそよと入り込んでくる。その心地好さ……誰もがきっと、いつか観た憧れのアメリカ映画のあのシーン・あの光景をそれぞれに思い出し――私の場合、ジョニー・デップの『ギルバート・グレイプ』――そして映画そのままの世界に入り込んだかのような体験をすることだろう。何とも贅沢な時と空間……これ以上ないエアストリーム体験ができる場所である。

人の集まる場所が作りたい

現在は事務所に使っている64年製イエローストーン。この車体は内部までほぼ純正。入口網戸の下半分にはパンチングメッシュがはまる

この壮大な計画を実現させた店主・岡さんは九州福岡の人。学生時代はオールディーズバンドに所属。同時期に博多で活動していたのがあのチェッカーズである。藤井フミヤとは同い年。


「人の集まる場所が作りたい」というのが学生時代の夢だった。だが「できっこない」と諦めてサラリーマンを30年。50手前になって「やっぱりやりたいな」と思いだしたら止まらなくなった。4年におよぶ開業計画を立て、2012年にエアストリーム購入。昨春、30年にわたるサラリーマン生活に別れを告げた。


会社員最後の3年を静岡で過した岡さん。そこでマキシ田中氏と知り合い、一気に計画は具体化。「ファミリーがオートキャンプ場へ来たような雰囲気の店」にしようと決まったのは去年8月。トレーラー3台をさらに買い足し、先に買った1台と合わせて計4台。こうなると借りる場所も問題。開業までの道のりは決して平坦では無かったが、「これまでの1年は大した期間ではない。これからの方が無限大」と岡さん。モットーは「とりあえず行動してみる」。

スパルタネットの車内。窓から射し込むこのやわらかな光にKOされる

メニューはバーガー3品、スパゲッティ3品、ごはんもの2品ほか。ドリンクは瓶コーラからレモネード、ホットチョコレートなど一式。夜はお酒も。樽生は今や稀少なバドワイザー。成田市内でタワーのあるのは空港のラウンジとココだけとの話。


スタッフでシェフの「ペチさん」と共に作り上げたバーガー。コンセプトは「ちゃんと噛んでおいしいと思えるもの」。大きく口を開けて一生懸命ガツガツ噛んで、一生懸命飲み込んで「ああ、おいしい」と思う、食感を大事にしたバーガーだ。


パティは豪州牛使用の100g。つなぎ無しも、中にガーリック少々。芳ばしいにおいを立てる。コリコリとしっかりした食べ口の粗挽き。バンズは印旛(いんば)郡・安食(あじき)の名店「ピッパラの樹」作。ここの「ブール」が気に入った岡さん。フランスパンをもとにしたムチムチとかなり弾きの強い生地である。

完成しない店

名代のセグスバーガー680円はマッシュポテトと明太子マヨネーズを乗せたやや変わり種。パティはグレイビーをかけて蒸し焼き。ソテーしてよい香りをはらんだマッシュポテトが「ぺとっ」とフィットして芳ばしい。下にワザと「しんなり」させたフリルレタス。味・食感ともに主張の非常に強いバーガー。その濃い味の集合の中でパティの噛み応えが伝わってきて、ハンバーガーとしての基本設計は確か。しかもこの安さ! この雰囲気! BGMはもちろんオールディーズ!


§§


天然芝への張り替えから、残る2台のトレーラーの内装、デッキに建設中の屋根と、オープン後もまだまだ工事多数で「ずっと完成しない店」と岡さん。だが未完であろうがバルセロナだろうが、いずこも同じ五月の風。これからの季節絶対にオススメ間違いなしの一店。帰路、ハンバーガー号から見る東関東自動車道が、心なしか、LAのフリーウェイを走っているかのようだった。

< 文と写真:松原好秀 写真:GAO NISHIKAWA >

Segs Cafe & Diner [千葉・成田]

― shop data ―
所在地: 千葉県成田市並木町217-1
アクセス: 東関東自動車道・富里ICより国道409号線2分
       京成本線 公津の杜駅歩25分
駐車場: 12台
TEL: 0476-36-4028
URL: http://segs-cafe-diner.com/
オープン: 2015年3月7日
* 営業時間 *
ランチ: 11:00~14:00
ディナー: 18:00~24:00(※5月1日より実施のサマータイム営業時間)
定休日: 月曜・第2火曜日(祝日営業。要確認)

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