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14.09.01

【Vol.17】都会的な、余りに都会的な~CaSTLe ROCK [東京・新宿三丁目]

USアンガスビーフ240gパティを引っ提げ、
米国帰りの店主夫妻が営む千葉の人気店が
この夏、新宿三丁目に堂々の移転オープン!

新宿御苑とハンバーガー号

早朝より都心近郊で活動していたAPIOジムニーコンプリートカーTS7、通称「ハンバーガー号」は、任務からの帰途、突如ルートを外れ、とあるパーキングメーターの前へその小さな車体を停めた。「『ひとバーガー』やって行きませんか?」とGAOさんを寄り道に誘ったのは、私である。

千葉の人気店

米国帰りの穂積夫妻の店「CaSTLe ROCK(キャッスルロック)」は、ついこの5月まで、千葉県市川市、東西線の南行徳(みなみぎょうとく)にあった。


道幅の広い、のんびりとした住宅街の一角で、家庭的なもてなしが魅力のレストランを開き、'08年のオープン以来5年半、地域に根差した地元の人気店として愛されたが、3年に1度の賃貸契約の更新に当たり、もっと人の多い場所へ出てみようと移転を決意。


それがよりにもよって都心ど真ん中、新宿三丁目に決まったと聞いた時は驚いた。ご夫妻の温厚でさわやかな人柄と、新宿三丁目という都会的な、ドロドロと猥雑な街の雰囲気とが、余りにかけ離れているように思えたからである。


5月に店を閉め、翌6月にはすぐ新宿で再開すると聞いていたが、工事が思うように進まぬらしく、結局オープンは8月12日にまでずれ込んだ。世間は盆休み。都心から最も人がいなくなる時期である。私とGAOさんが"寄り道"したのはその翌週のこと――。


ハンバーガー号を停めたのは「御苑(ぎょえん)大通り」という、距離の短い割りにミョウに幅が太いアノ道沿いである。渡った向こうはいわゆる"二丁目"。一杯300円前後で食べられる牛丼屋やラーメン屋、餃子屋のチェーンに混ざり、一斤500円の高級食パンで知られる人気ベーカリーが通りに面して軒を連ね、一歩入れば居酒屋、スナック、バル、バー、カラオケ、あらゆる飲み屋が狭い区画にごっちゃり雑然とひしめいて、かの「末廣亭」もこの一角にある。

新宿三丁目駅「C5」出口から2秒とかからぬビルの2階

目指す新店は地下鉄新宿三丁目駅「C5」出口の真向い、出口から2秒とかからぬビルの2階。1階は安いチェーン店などでなく、「AIN SOPH.JOURNEY(アインソフ ジャーニー)」という巷で話題のレストランで、ファサードの感じは幸い悪くないが、しかしハンバーガーとステーキの店の真下が「ベジタリアン・ビーガン(完全菜食)料理の専門店」とは、何という巡り合わせだろう。


3階はセクシー下着ショップ。4階はアートギャラリー。5階はもう10年続く有名なゲームカフェ。テナントの顔触れもいかにも新宿らしい。

コロラド州キャッスルロック

狭くて急な階段を前屈みになって上ると、先週オープンしたばかりの店内はまだガランとして、祝いの花のほかはほとんど装飾の無い状態だった。前はスナックだったという垢抜けない店内を目一杯明るく改装。窓の外に街路樹が覗いて、灰色の大都会に意外なさわやかさを見ることができる。


店主・穂積さんは高校時代に留学して以来6年、コロラド州はデンバー近郊の町"Castle Rock(キャッスルロック)"で過ごした。帰国後しばらく日本で暮らした後、今度は奥さんが転勤で再度渡米し4年半。場所はマンハッタンから車で5時間、ニューヨーク州第3の都市"Rochester(ロチェスター)"。


ボシュロムやイーストマン・コダックが本社を置き、ゼロックスの創業地でもある光学の街で、人口20万ほどの小都市ながら、富裕層や出張者向けの飲食店・宿泊施設が整っている。穂積さんはそうした"おしゃれ"なレストランでコックをしていた。

パティはUS産のアンガスビーフを使用。直火でじっくり焼き上げる

最初に勤めた店はバー併設の巨大で豪華なフュージョンレストラン。2軒目はもう少しカジュアルな、地元向けのワインレストラン。日本人コックは穂積さんただ一人。寿司も巻けば、朝出勤するなりピザ窯用の薪割りもした。


そんなロチェスターのコック時代に培い学んだ、「ベビーバックリブ」や「Tボーンステーキ」、「ルーベンホットサンドイッチ」、そして発祥の地・NY州"Buffalo(バッファロー)"の味を正しく再現する「バッファローウィング」など、本場仕込みの米国料理の数々と、何より現地で積んだその経験とが、穂積さんの一番の財産であり、そしてこのキャッスルロックの力強い"リアリティ"になっている。

ハーフパウンドのUSアンガスビーフ

御苑大通りの街路樹が、灰色の大都会に意外なさわやかさ

移転を機にキャッスルロックは、一層「肉」の店になった。それまでの125gからパティのサイズを「120g(1/4lb)」「180g(1/3lb)」「240g(1/2lb)」の3種類に増やしたのだ。しかも肉はUS産のアンガスビーフ。グレードはチョイス。店でブロック肉から自家挽きしている。


この日はベーコンチーズバーガーを240g(1/2lb)パティで。ハーフパウンドのUSアンガスビーフが新宿三丁目で1,998円はお値打ち!


直火でじっくりとグリル。アンガスらしい適度に脂の混ざった上品な赤身の味わいが、ズシリと確かに押し寄せる。巨塊ではあるが最後まで良質なおいしさ。だから飽きない。ベーコンも自家製。豚は吟味の末、北欧産を使用。カリッと硬く身の締まったベーコンで、やはりどこか米国的である。


バンズは日本の最高峰、東新宿「峰屋(みねや)」の酒種天然酵母。南行徳の頃は週に何度か、夜中の首都高を飛ばしてわざわざ新宿まで取りに通っていたのが、今度の移転で一気に配達圏内、しかも最寄りのエリアに落ち着いた。

オニオンはグリル。チェダーチーズはバーナーで炙ってメルト。店主夫妻の人柄がにじむ、真面目で正直で、そして気取りのない、真っ直ぐな味わいの逸品。とかく虚飾の多い大都会・東京で出合うことのできる、誠実で良質な、偽りの無いおいしさ。


§§


とそこへ、「直ちに帰還せよ」との本部からの指令が……何と無粋な。ハンバーガー号の動きは本部で全てお見通しなのだ。しかも食っているのが"道草"ならまだしも、都内屈指のプレミアムバーガーと来ては、黙っていられなかったのに違いない。


これは「直ちに"ハンバーガーを持って"帰還せよ」との命令であると解釈し、新たにテイクアウトの注文をすることに。さて誰に何バーガーにしよう。パティのサイズは……どうやらココが"今日一番"の私の腕の見せどころのようだ。

< 文と写真:松原好秀 写真:GAO NISHIKAWA >

CaSTLe ROCK [東京・新宿三丁目]

― shop data ―
所在地: 東京都新宿区新宿3-8-9 新宿Qビル2F
アクセス: 首都高4号新宿線・新宿出入口より国道20号線経由7分
      都営・東京メトロ 新宿三丁目駅 C5出口より歩0分
駐車場: 御苑大通り沿いにパーキングメーターあり
TEL: 03-3356-6078
URL: http://www.castlerock-burger.com/
オープン: 2008年11月9日(移転再オープン 2014年8月12日)
営業時間: 11:30~22:00LO(ランチ15:00LO)
定休日: 月曜日(祝日の場合営業。要確認)

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