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ダートトリップ@Let's go 4WD
VOL.005
朽葉と煌めきの道を往く
朽葉と煌めきの道を往く

関東には総延長30kmを越える林道がいくつかあるが、
その多くは昨今の台風被害によって通行止めとなってしまった。
それ故に、今回の林道は非常に貴重な1本だ。
季節通行止めの直前、我々は群馬の山中へと入った。

息を飲むような赤倉渓谷沿いの道

赤倉栗生林道は、川場スキー場の下辺りから片品へと抜ける林道だ。全長で約20㎞ほど。

レッツゴー4WDの誌面でも書いたが、今回の目的は栗原川林道だった。観光名所の「吹き割の滝」あたりから、渡良瀬渓谷へと抜けるロングダートだ。ダートだけで約50㎞という長さは、僕の知る限りでは関東屈指と言っていいだろう。

かつては長いダートがいくらでもあったのだが、地元の利便性を考慮して次々と舗装化されていく。だからこそ、この長さのダートは非常に貴重なのである。

だが、せっかく群馬まで行くのだからもう1本走りたい。そこで山岡“巨匠”カメラマンのオススメで、赤倉栗生林道に寄ってみることにした。

川場側はゲートが閉じられているので、アプローチは片品側。基本的には全線走って折り返しになる。

事前の情報によると、赤倉渓谷に入る川場ゲートは閉鎖中とか。片品側は、動物よけのゲートがあるだけで入道できるということだった。だが沼田ICからだとやはり川場のアクセスがいいので、「もしかすると開いてないかなぁ」と淡い期待を抱きながら林道入口へと向かってみた。

季節は冬の入口。もう山の紅葉も終わり始めで、落葉の絨毯が道に敷かれていた。ガッチリとしたゲートが無情にもしまっていたが、反対側に抜けるのは大した時間がかからないので、舗装路で15分ほどの山越えをする。

片品側のゲートは、あっさりと手で開けることができた。しかし、こちらが入れるのに、なぜ風光明媚な赤倉渓谷側を閉じているのだろうか。その疑問は、後に分かることになるのだが。

見晴らしのいいスポットを越えると、道はガレ場に入っていく。この切通は落石の恐れがあるので、通行時は注意したい。

赤倉栗生林道は、とにかく美しい林道だ。巨匠が「画になる林道」というのもいうのも頷ける。朽葉が眼にも鮮やかで、香ばしい匂いが辺りに満ちていた。ジムニーが走り抜けると、「サクサクサク」という心地の良い音色が響き渡る。

入口から10分も走ると、辺りの山々を見渡せる見通しのいい場所に出た。そして、再び樹林帯へと道は入る。峠だけ道はザレており、そこからは赤倉渓谷沿いに下るように進んでいく。

峠付近で枝道があったので、そちらも探索してみることにした。枝道に入ってすぐに広い広場があり、土砂の小山にブルーシートがかけられていた。このブルーシートを見て、すぐにこれまでの謎が一瞬にして解けた。

看板を見ると予想通りで、この土砂は除染作業で出た汚染土なのである。自治体はこういった土を人が生活していない、山奥に仮置き場を作って保管する。それは大抵、林道の途中であることが多いのだ。そして、ここにこういった仮置き場があるから、川場側のゲートが閉じられているのだ。これも世相というものかもしれない。

赤倉渓谷は、岩盤の上をせせらぎが流れる美しい渓谷だ。この道が通れるのはGW近くだが、新緑の頃もきっといい風情だろう。

左に赤倉渓谷が見えてくると、これまでと景観は一変する。やはり水の景色というのは美しいものだ。取材時には川に落ち葉が流れ、その風情たるや日本に生まれたことを心から歓べるものだった。

水辺の道というのはえてして荒れているものだが、ここも例外ではない。所々、大きく路面が削られており、ライン取りを考えなければならない。それでもTS7は快調に走り、最初に訪れたゲートに到着した。

何とか出られないか、ふたりでウロウロしてみたものの、到底どうにもできない。諦めて、しばらく走っていたら、なんと向かいから対向車が2台やってきた。こんな平日に走っている人がいるのかと驚いていたら、林業事務所のクルマだった。

「ゲートから出るなら、一緒について行っていいですか〜?」と尋ねたら、OKだというのでちゃっかり同行することに。これで大分時間が稼げるというものだ。とは言うものの、こんな幸運が皆さんにもあるとは限らないので、皆さんは往復する覚悟で走っていただきたい。ちなみにこの林道、難易度は低く、ビギナーでも安心して走れる。

メリハリある関東最長林道

栗原川林道の群馬県側は、非常に深い谷を進んでいく道だ。場所によっては景観が開けて、ダイナミックな林道であることを実感できる。

観光スポット情報は本誌をご覧いただくとして、ここでは林道旅を続けたい。さて、いよいよ本命の栗原川林道だ。この林道は日本百名山のひとつである皇海山(すかいさん)の登山口にアプローチする道としても知られている。TS7にしてみたら、さほど難しい山でもないのだが、普通のクルマにはなかなか過酷とあって、この山を避ける登山者も少なくない。

その難度を上げているのが、この辺りの山の地質だ。ポロポロと崩れやすい堆積岩が崖を覆い、道にそれが落石となって降ってくる。道はこぶし大の岩が転がり、それが通行者を苦しめるのである。

僕は2年前の夏にここを走行したのだが、TS7でも激しく上下に揺れて同乗者には気の毒した。と言っても、オフロードでは序の口で、快適な部類と言っていい。ところが今回通った時には、幸か不幸か行政が道を整備したらしく、石やら岩がどけられてフラットダートになっていたのだ。

皇海山の登山口までは単調だが、そこを過ぎると景観が矢継ぎ早に変わって楽しさも倍増する。

この状態がいつまで続くかは不明だが、おそらく春には雪のせいでまた岩が崩れていることだろう。そんな状態の方が、実はこの道は走り甲斐があるかもしれない。

もっとも、フラットな状態でもあっても、皇海山登山口までは深山幽谷を行く、という感じでダイナミックだ。ただ、これが小一時間も続くと、どうにも飽きてきてしまう。ちなみにこの道ではパンクが多く発生しているようなので、出かける前にはスペアタイヤの空気圧チェックをお忘れなく。

皇海山の登山口は、この林道のほぼ半ばと言っていいだろう。ここにはトイレもあるので、女性でも安心だ。トイレ付近では、docomoに限って携帯電話も通じるようである。

皇海山から先の栗原川林道、そしてその支線の新地林道は、落葉樹林の森が広がる美しいコースだ。こちらの方が整備されており、より高速で移動することができる。場合によっては2WDで走ったほうが面白い。

皇海山登山口からしばらく群馬県を走り、そして栃木県へと越境する。僕もここのパートは初めて走るのだが、群馬県側と比べると森が美しい。冬は特に落葉してしまっているせいか、道も明るくて陽気な感じがする。ちなみに5月頭にはこの道も開通しているはずだが、その頃は道が緑の陽光に包まれているはずだ。

すでにここまで1時間以上走っているが、まだ渡瀬渓谷に着く気配はない。巨匠は「もうお腹いっぱい」と、いつものセリフを言い出した。巷では“林道の達人”として名を馳せているが、どうも1時間を過ぎると達人は飽きてしまうようだ。これでは、到底モンゴルラリーには取材には行けないと思うが…。

途中、支線の新地林道に入ってさらに30分ほど走ると、牧場の横で道はついに舗装路になる。その先は細い農道がかなり続き、国道に出るにはナビゲーションがないと到底無理だ。つまり、桐生側からこの林道にアプローチするのは、結構難しいはず。

今回は50kmちかくのダートを楽しんだが、林道に入る前には、必ず給油を済ませておこう。それと、くどいようだがパンク対策も忘れずに。携帯電話もほぼ届かず、人の通行も非常に少ない。トラブルがあった場合は、自分で何とかする他はなさそうだ。

ちなみに、この林道の道路情報は沼田市のHPに掲載されているのでチェックしてほしい。

<文/山崎友貴 写真/山岡和正>

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