JIMNY LIFE ジムニーをとことん楽しむ僕らのライフスタイルマガジン JIMNY LIFE ジムニーをとことん楽しむ僕らのライフスタイルマガジン

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ビヨンド・ザ・フィールダー
VOL.002
ジムニーのある使い方
ジムニーのある使い方

上の写真を見て「何やってるんだ?」と思う方が多いと思う。
vol23のFielderの特集テーマは「野生食材図鑑」。そのテーマに則して、編集長からあるミッションが下された。
写真は、そのミッションを遂行しているところなのだが...。

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数十年ぶりの昆虫採集にGo!

今回秩父山中にある民宿のご厚意で、ロケ場所で借りたグラウンド。例年、夜になるとたくさんの昆虫が集まるという。

「ジムニーで虫を採ってきてください」というFielder編集長の言葉に、最初は「ジムニーでどこかに出かけて、昆虫採集をしてきてくれ」という意味だと思った。ふーん、夏休みだからファミリー企画か…と考えていたのだが、よくよくハナシを聞くとどうも意味が違うようだ。

「ジムニーを使って昆虫採集をせよ」という指令らしいのだ。ジムニーを使って??? ここでようやくあることが思い浮かんだ。昆虫マニアの世界では、『ライトトラップ』という方法を使って虫採りを行うのである。

ライトトラップというのは、フィールドに白い布などを壁のように張って、そこの強力な光を当てて昆虫を集めるという補虫方法のひとつだ。要は、編集長はこの光源としてジムニーを使えと言っていたのでる。

僕も「虫は明るい所に集まる習性がある」から、この方法で虫を集めると思っていたのだが、実は違っていた。夜行性の虫というのは夜間に飛ぶ時に、月や星の光を見ながら自分の姿勢を保って飛行しているのだという。うーん、まるで大航海時代の船のようである。

では、なんで光を当てた布に捕らわれてしまうのか。月や星は非常に遠い所にあるので、安定した角度で飛ぶことができる。ところが、人工の光は昆虫との距離が近すぎるため、ちょっとした角度変化で昆虫は光源が変わり混乱するのである。そして光の周りをグルグルと飛び、その内に近づき過ぎてしまうわけである。これが「飛んで火に入る夏の虫」のワケだ。

さて、問題は虫採りに行く場所だ。小学生以来、虫採りなんてしていないから、どこに“大物”がいるのかなんて見当がつかない。そこで頼るのは「マスメディア界のCIA局員」山岡巨匠である。山岡カメラマンは何だかとても顔が広く、「こんな人いないすかー」とか言うと、大抵は条件に合う人を知っている。歩くフェイスブックである。

昆虫採集のキーワードで、山岡ネットワークですぐにヒット。その人から秩父山中のある「民宿きりしま」をご紹介いただき、早速取材依頼。きりしまのご主人もとてもいい方で、無料でグラウンドを使っていいと言っていただいた。

ということで、僕らはある夏の夕方、ジムニーを走らせて秩父の山中へと向かったのである。

簡単にできるライトトラップ

上)布を付ける台を作り、それに白いシーツなどを取り付ける。下)下にも光を反射する布などを敷くと効果がアップ。

まだ空が明るい内に、秩父の山中に着くと、早速ライトトラップの準備をした。ライトトラップの仕組みは至ってシンプルで、まず枠組みを作り、それに白い布(シーツでOK)を張るだけだ。ただ、この枠組みを用意するのが以外と面倒なことに気がついた。

僕にはCIA局員・山岡巨匠がいるので、撮影に使うスタンドを流用することができたが、一般の家でこういったものはなかなかない。手軽に流用できるモノといったら、ハンガーラックだろうか。もしくは3脚が2個と1本の棒を使えば、同じようなものができるだろう。

ライトトラップを作る時、ただ壁のように布を垂直に張るだけでなく、地面にも白い布などを敷いたほうがいいようだ。その方が、より多くの虫が集まるようなのである。

さて大切なのは光源だが、ここでようやくジムニーの登場だ。ジムニーを布に対して垂直に駐めて、あとはハイビームで照らす。この時、布ができるだけ明るく広く輝くようにトラップとジムニーの距離を上手く調節しよう。

言うまでもないが、ライトトラップは虫が生息していそうな樹林の近くに設置する。今回は幸運にもクヌギなどの雑木林が脇にあるグラウンドをお借りできたが、そうそうラッキーは訪れない。で、好事家たちはどうしているのかというと、山奥の公共駐車場や林道などでやっているようだ。ジムニーなら夜間の林道ツーリングがてら虫採りなんていうのもオツ。

夜間の作業deはライトにこだわりたい

河野隊長や僕が愛用しているストリームライト社の「サイドワインダー・コンパクトⅡ」。多種な光を点灯することができる軍用ライト。

ヘッドライトを点けるとは言え、日が暮れてからの作業は何かと行動が制限される。そこで大切になるのがハンディライト、いわゆる懐中電灯だ。最近はLEDライトが安価になり100円ショップなどでも懐中電灯が売っているが、LEDライトはその価格によってかなり性能が異なる。

性能とは、まず明るさ。都会の光に慣れていると、アウトドアの闇は予想以上に暗く感じる。安全かつ快適に行動するには、やはり100ルーメン以上の明るさは欲しい。次にライトの強弱ができる機能も欲しい。手元を照らす時は暗めに、遠くを照らす時は明るくと、照度が調整できると快適に使える。

またハンディライトよりもヘッドランプのほうが作業性が高い。ピンスポットを照らす場合にはハンディライトのほうが便利だが、両手がフリーにならないので作業には向いていない。ベルトの付いたヘッドランプのほうがアクティブと言えるだろう。またヘッドランプなら自転車や登山、釣りなど使える用途も幅広い。

ちなみに今回の僕のリコメンドは2モデル。まずジムニー探検隊の標準装備品として、河野隊長と僕が愛用しているストリームライト社の「サイドワインダー・コンパクトⅡ」。アメリカ軍などに使われている軍用ライトで、防弾ベストやヘルメットなどに装着して使うようにできている。

ブラックダイヤモンドの「スポット」は、130ルーメンの明るさを発揮する登山用ヘッドランプ。ワンタッチで明るさを調整することができる。

このライトの特徴は白色ライトの他、暗闇でも周囲に目立ちにくい赤色、地図や時計、機器などを見る時に使う青色、そして暗視スコープで敵味方を識別できる赤外線の4つの光を発することができること。見た目も男心をくすぐるメカニカルなデザインで、ちょっとカッコいい。

頭に付けるベルトも付属しているので、様々な用途に使うことができる。ちなみに実勢価格は1万円前後で、軍用品ショップやネットショップなどで手に入れることができる。

もうひとつのオススメが、ブラックダイヤモンドの「スポット」。ブラックダイヤモンドはパタゴニアの創業者が作ったブランドで、良質で手頃な価格の登山用品を多くリリースしている。僕もピッケルやザックなど多くのアイテムを愛用しているが、まずハズレがない。

スポットは闇の中の登山に使うために購入した。白色(遠距離/近距離)の他、赤色のナイトビジョンモード、ストロボモードなど登山で使う機能が装備されている。こちらは実勢価格5000円前後なので、かなり手頃だ。

ヘッドランプはアウトドアライフだけでなく、クルマのメンテや修理などの作業にも役立つので、1個はグローブボックスに装備しておきたいアイテムだ。

暗くなってヘッドライトをオン。1分もしないうちに、たくさんの虫が飛んできたのだが…。

さて、いよいよ周囲も暗くなってきたので、ジムニーのヘッドライトをオンにすることにした。ヘッドライトを長時間点灯する場合は、バッテリーが上がらないようにエンジンをかけて充電されるように気をつけたい。特に夏場はエアコンを使ってバッテリーが弱るため、要注意だ。

ヘッドライトを点灯すると、1分もしないうちに大量の虫が集まってきた。と言うものの、集まってきたのは蚊やら蛾やら。やはり狙いはカブトムシやクワガタムシだ。それにしても、その虫の数たるやすごい。昆虫嫌いの人は、間違いなく失神ものである。

今回、ライトトラップはジムニーの南側に置いて、北側から照らすように設置した。月は南側の天体を移動するということを考えてだ。きっと月に間違えて、大物の昆虫が飛んでくるに違いない。ちなみに多摩のほうの友人の家で夏の晩に飲んでいたら、室内の電灯を目がけてよくカブトムシが飛んできたものである。

なので、秩父の山ならカブトムシがザクザク採れるだろうと踏んでいたのである。ところが30分経っても、来るのはカメムシやコガネムシくらい。大物は一向にやってこない。トラップの位置が悪いのだろうか。

だが民宿のご主人が宿の前に設置していたトラップも、やはり南東を向いていた。あながち間違っているとは思えない。結局、数時間経過したが状況は変わらず、大物は1匹も採れないという惨敗ぶり。

後で民宿のご主人に聞いたところ、「今年は雨が少なく暑かったため、昆虫がほとんどいないんだよね」ということだった。つまり、かなりのベテランでも難しい状況だったようだ。

だがコガネムシや蛾でも、よく見ると美しい。動きも実におもしろく、何だか子供の頃に戻った気分になった。この記事が出ることはちょっと難しいが、皆さんもぜひ来年の夏にでもライトトラップに挑戦していただきたい。キャンプの時などにやれば、結構盛り上がると思う。

<文/山崎友貴、写真/山岡和正、山崎友貴>

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