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12.07.31

ゼッケン:101 ドライバー:尾上 茂 / ナビゲーター:石原孝仁

ゼッケン:101
ドライバー:尾上 茂 (左)/ ナビゲーター:石原孝仁(右)

打倒 菅原号! 加速性と安定性を向上!!

まずは例年ガチンコ勝負を展開する尾上号 & 菅原号のマシンからご紹介しよう。この2台はボンネットのほか左右ドアやリアゲートをFRP化するなど、随所を徹底して軽量化した「勝負」マシン。エクステリアにアピオの新旧バンパーやガード類を装着していることもあり、一見色違いの兄弟車のように見えるが、双方の立場や思想の違いがあり、全く異なるクルマに仕上がっている。

尾上号はサスからホイール、そして6点式ロールバーなどの安全装備も含め、そのほとんどが自社開発製品。APIO製品の性能と耐久性を証明することをラリー参戦のひとつの目的としているため、ある意味ファンが真似しようと思えばかなりのレベルまで真似できるセッティング。基本は昨年のものを踏襲している。

ただし、今年は加速性能向上のため昨年までの185/85R16(外径721mm)から215/75R15(外径709mm)へサイズダウン。シエラ用ホイールを使った関係もあってトレッドが広がり、オーバーフェンダーを装着して白ナンバー乗用車として登録しているのが特徴だ。

ラリーモンゴリアは全開区間が多いとの評判だが、路面にはカーブもあれば障害物もある。その度に加減速するワケで、トルクの小さなジムニーにとってタイヤ小径化による加速性能の向上はタイムの向上に有効。トルクとの兼ね合いで最高速も伸びている可能性もある。

また近年1300ccシエラのダートでの扱いやすさが評価され、玄人の間で密かなブームになっているが、尾上号のトレッドの拡大はこれと同じ効果を生んでいる。求めたのは恐らく「限界領域でアクセルを抜かない」走り。つまり極力加減速しない走り方だ。

トレッドが狭く、重心の高いジムニーで凹凸あるダートを減速せずに高速で走らせる運転技量はある意味「特殊技能」とも言えるもの。ここに物理上、心理上の安定策を講じることで、菅原さんより1秒でも早くゴールに辿り着きたい考えだろう。

また吸排気系にもファインチューンを施し、昨冬発売された「インテークチャンバー&レゾネータ」を装着したほか、発表前の製品ながら「ヨシムラ」とコラボした新型チタンマフラーを奢っている。実はこれ、ヨシムラ初!? となる社外コラボ四輪用市販マフラー。シャーシダイナモのあるAPIOファクトリーで担当者と共に3か月かけて開発し、「静御前 舞」をしのぐトルク性能が与えられた。もちろん軽さは折り紙付き。そのブランドと見た目に違わぬ高性能ぶりを示すという。

このほかAPIOでは新たにツイントリップメーターもリリースした。これまでの多くの市販品よりラリー走行中の補正操作を容易にした。これはナビゲーターのサポートをかなり楽にできる機能で、「ナビが頭脳、ドライバーが手足」と呼ばれるラリーでは時間短縮に見逃せない効果が期待できる。この辺りにもラリーモンゴリア6年目を迎えるAPIOの豊富なラリー経験が活かされている。

女房役のナビゲーターには、昨年から引き続き石原孝仁さんを起用。石原さんは何を隠そうダカールラリーをニッポンのお茶の間に初めて紹介した伝説のTVディレクター。ラリー経験も豊富でドライバーとの息も合っている。マシントラブルさえなければこのカップリングが強力なパワーを生み出すのは間違いない。

今年、尾上さんは珍しくインタビューで「菅原さんに絶対に勝つ!」と明言していない。ダカール9度出場の実績を持つ尾上さんも「スピードでは勝てても、経験力に勝つのは容易ではない」と自ら心を引き締めているのが印象的。石原さんもこの辺りは心得ているようで、この調子なら今年はリベンジなるかも! と思わせるチーム"レッド"、101号車の出来であった。

<文:河村 大 写真:山岡 和正>

インタビュー

ゼッケン:101
ドライバー:尾上 茂
ナビゲーター:石原孝仁

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